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家の中で、アリとは共存できない。できないけれども。

自宅の子ども部屋に、大量のアリが発生した。

侵入経路も不明だったが、放置するわけにもいかないので、部屋中に殺虫剤を撒く。24時間経過し、新たなアリは見掛けないので、ひと安心である。

今朝は、ホームセンターに足を運び、長期的にアリ対策をするための虫ケア用品を買った。具体的な商品名は挙げないが、部屋に置いておくだけで、巣にいるアリまで効果を発揮するらしい。無論、「虫ケア用品」とは、虫をケアする日用品ではない。人間のケアのために、虫を殲滅させる日用品なのである。

「○○(商品名) かわいそう」と検索すると、僕のように複雑な感情を抱く人が悩みを吐露していた。「Yahoo!知恵袋」には、そういった不安に対して、「使わなきゃ困るだろう?」といった正論的な回答で溢れていた。そういうこっちゃないのだ。ただただアリに対して想像力を駆使し、その結果、なんとも複雑な思いになっているに過ぎない。

今年の春から、築50年の一軒家に移り住んでいる。

実家を出てから20年以上のひとり暮らしは、いずれもマンション生活だった。部屋数も増え、玄関を出れば庭がある。

はたから見たら羨む生活かもしれないが、もちろん不便なことも多い。

そのうちの多くの不便さは、「庭がある」ことに起因する。なんせ、築50年である。雨戸のレールは何だかガタガタしているし、庭には「いつから生えてるんだ?」と首を傾げるようなたくましい雑草で溢れている。ひとたび雑草を抜けば、無数の生命体が現れ、中には「家には入ってくれるなよ」といった黒光りするアイツもいたりする。

別に僕は善人ではないが、まだ住んで間もないこともあり、「人間である僕たち家族こそ、お邪魔している存在だ」という意識がけっこう強い。一軒家を建てたのは僕ではないから、そういった“借り暮らし”感があって。そんな“負い目”のような感覚を、ごていねいに虫さんたちにも抱くのはちょっと行き過ぎな気もするが、負い目を感じてしまっているのだから仕方がない。

そしてそれは、息子たちが虫好きというのも多分に影響しているだろう。引っ越してくる前は、春になると、路上や公園のアリの観察をせっせと行なっていた。彼らの集団行動はみればみるほど楽しくて、愉快だった。

なのに、ひとたび立場が違えば、こうして「殺虫」するということになる。なんという傲慢な態度だろうか。

家の中で、アリとは共存できない。

できないけれど……と複雑な感情を抱いている自分を、今のところ健全な感覚だと自負している。こういう感覚は忘れたくないよな……と思いながら、「虫ケア用品」を家中にめぐらせ、対策を講じる僕なのであった。

頼むから、家の中に入ってくれるなよ!

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