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僕ももうすぐ、「シックス・センス」のブルース・ウィリスになるから。

Amazon Prime Videoで配信されたのをきっかけに、名作「シックス・センス」を久しぶりに鑑賞。

結末は知っていたけれどラストシーンに至るまでのマルコムの言動や、コールとの距離感など、ちゃんと伏線として表現されているのが面白く、新鮮に楽しむことができた。

言うまでもなく、M・ナイト・シャマラン監督の代表作だ。日本でも大ヒットを記録し、今でも五感を超える感覚としての「第六感」を、本作に紐付ける人が後を絶たない。

ラストシーンもあまりにも有名で、元祖「ネタバレ禁止」な作品である。

「シックス・センス」
(監督:M・ナイト・シャマラン、1999年)

本作の特徴としてよく語られるのは、当時子役として「シックス・センス」を持つコールを演じたハーレイ・ジョエル・オスメントさんだ。

「天才」と注目され、なるほどマルコムとの出会いからラストシーンに至るまで、含みのある演技は成熟の域に達している。

しかし僕が今回目が離せなかったのが、ブルース・ウィリスさんだ。先日惜しまれながら俳優引退が発表されたが、製作当時の彼の年齢は40代前半で。僕が今39歳だから、かなり近い年代で、彼の置かれた境遇に対して共感できるところが多かったのだ。

ある出来事をきっかけにパートナーとの関係にヒビが入ってしまったこと、心理療法の専門家として技術を有するもスランプに陥って自信をなくしてしまうこと、自分の仕事が本質的に「誰の役にも立っていないのでは?」と落ち込んでしまうこと……。

20〜30代なら若さで突破できるけれど、40代になっていくとそれなりの能力や人格が伴っていなければ仕事にはならない。そういった意味でマルコムは順風満帆だったはずなのに、ひとたびドツボにハマってしまったことによって人生が狂ってしまう。勝者的な価値観からの転落、それは誰にでも起こり得ることなわけで、人生のメタファーとしても胸を突くような恐ろしさを感じたのだ。

「若さ」ということで許されてきた30代も、残り10ヶ月ほどで終わってしまう。

決して勝者的な価値観は抱いていないと思いつつも、それなりの自負を抱えながら仕事に臨んできたという意識はある。いずれ僕も、マルコムのような時期を迎えるだろう。そのときに正気を保っていられるように、本質に向き合った仕事を続けていきたい。(そうでなきゃ、いや、そうあり続けても転落することはあり得るのだから)

──

ウィリスさんの演技も秀逸だ。

シックス・センスを持つコールという人物の特異性はありつつも、本作は実のところ、俯瞰でみると「ただの日常」を切り取っただけの映画に過ぎない。

ひとりの人物の挫折や絶望の折に、わずかに苦悩が滲む表情から、マルコムの感情がぐっと伝わってくる。そんなことができる俳優は、一握りだけだろう。

翌年、ウィリスさんはシャマラン監督による「アンブレイカブル」にも主演として起用される。

役柄も状況も特殊能力も「シックス・センス」とは全然違う。考えてみれば、シャマラン監督作品以外でも、どの作品もウィリスさんは、ウィリスさんとしての佇まいを保ち続けている。意地の悪い言い方をすれば、「どれも同じじゃん」となるのだけど、出演作のジャンルはバラエティに富んでいて。挑戦を続けた俳優人生だったというのが理解できよう。

いやあ、しかし。

2000年以前に、こんな素晴らしい作品がつくれていたなんて。奇跡のような配合に、ただただ感服するしかないなと改めて感じた。

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