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酒が嫌いで、酒が好き

「お酒飲んでる時が一番幸せ」っていう人は多いと思う。
それで体壊しちゃったり、家庭壊しちゃった人も知ってるけど、お酒の場で幸せな空気が生まれた場面も、いくつも見てきた。

そういう意味では、お酒が好きだ。

ただお酒が直接幸せをくれたことはあまりない。
なによりお酒弱いし、味の面でも、出会ったお酒の中で美味しいと思えたものは、トータルで言えば半分を割ってる。(テイスティングを含めれば多分800~1000種類は出会っている)
たしかに仕事上がりのビールは美味しい。けど周りが言うほどの幸福感はない。ああスッキリ系って感じ。
寒い日に熱燗を飲んでも、その場では温かいけど、これで温まるっていうか、1時間後には酔いが引いてむしろ寒さが際立つ。
ワインは何も考えず飲んだら苦いか渋いか酸っぱいか。

お酒から直接幸せをもらうのは、ポートワインかアイスワインをちびちび飲みながらオレンジピールが入ったチョコレートを摘んでるとき。
あとはマリアージュがうまくいったとき。あとはテイスティングしてて美味しい時。
自分が飲む物全般のなかでは、好きと嫌いじゃ嫌いに振れてるかもしれない。紅茶、緑茶、マテ茶、コーヒーも大好きなもんで、ついついそっちにいっちゃう。

それでもお酒が、特にワインが好きだ。
ワインの話をした人には言うんだけど、私はワインを「農産加工品」あるいは「文化の形成物」として好んでいる。

食文化を形成する農産品ものとして、面白い。
気候によって栽培に適したぶどう品種や育成方法が異なるのは植物として当然。だがそれで作られるワインの味わいは、不思議と地場の作物や料理とマッチする。これを当然と言うのは後付けの理由で、これはそこに至るまでの食サイド、ワインサイド、そして文化サイドが絡み合って行き着いた一つの到達点だ。そこに思いをはせると面白い。

ワインはぶどうだけで作れるお酒で、非常に原始的。
一方で今なお上流階級だけが味わえるふざけた価格の逸品が多く、良くも悪くも文化を形成し、社交界を支えてきた。
また封建制度の時代には宗教中心の社会制度を支え、儀式上でも役割を担ってきた。つまり文明的な側面もとても色濃い。
原始的で文明的。この二面性がとても面白い。

ワインはぶどうのお酒。おいしい。
そこで終わってアルコール度数14%に飲まれて潰れるのも幸せ。
でも、「味わって美味しくて、ふわっとなって幸せ」は私はお酒ではなくてコーヒーや紅茶で味わう。私にとって味で幸せにする役割をワインには、当然求めるけど、多く求めていない。
背景を考えたり、この酸味は、深い赤紫はなんだろうと思いながら、最高のマリアージュを考えて、人に飲ませる。私のワインの楽しみ方はここにある。

だってグラス一杯で酔うし。

というわけで、今後もワインを楽しんでいきます。お茶やコーヒーを飲みながら。

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