何も考えてないでしょ?
風薫る、新緑が目に眩しい季節
わたしは窓際に座って観葉植物の葉を拭く
埃まみれにならないよう葉を拭く
4月の誕生日、観葉植物と分厚い手紙をもらった
手紙は、果たし状かと思ったら本当に果たし状で
「将来、この観葉植物を墓石代わりにしてほしい」
送り主はレオ氏
彼らしい
手紙には、観葉植物を大きく育て
自分が死んだら木の下に
自分の遺骨とこれまで家族だったネコ達のお骨を埋葬し、わたしと奈々も一緒に埋葬してもらえるよう弟へ話をしてくれとあった
アニメにそんな話を観たような
ところで観葉植物はどこへ植樹するのだろう
「ねぇ、ガジュマルってどこに植えるん?」
早速レオ氏に電話した
「どこって、墓地」「どこの?」
「俺ン家か、ももン家」
「うちの墓は霊園で植える場所ないわ」
「じゃ、俺ン家の」
気軽に俺ン家と言われても、お墓は北海道にある
「そんな遠くまでお墓参りに行けないじゃん」
「ももは山、持ってないの?」
山?やま?
「うちは親戚の山が近くにあるけど」
「そこでいいよ」
「よくないっしょ?」「なんで?」
「うちの山じゃないじゃん」
「隅っこに植えさせてもらえばいいじゃん」
何も考えてないでしょ?
「うちの親戚に許可を得たとしましょう
植樹するの、わたし?」
「うん」
「なんで?」「なんで?」
「レオ氏が先に死ぬっていつ決まったのさ」
「普通、順番で言えばそうでしょ?」
「平均寿命だったらそうだけど」
ナチュラルに何も考えてない、レオ氏
「平均寿命と仮定してよ
レオ氏が80代で死ぬじゃん
わたしも80代じゃん」「うん」
「先に木を植樹してよ
婆さんがよ?
山へ、たくさんの遺骨を背負って登るの?」
「ダメ?」
「普通、婆さんは川へ洗濯に行くじゃん
婆さんが山へ埋葬行くっておかしくない?」
「なんの話をしとん?」
「埋葬の話。婆さんには負担が大きいのよ」
自然がいいなら、都内にある樹木葬の墓地を買って
それで済ませれば
都内へ行くのだって広島からは遠いのに
もう案ずるのは、健康と寿命のこと
若いうちは山登りのようにゆっくり過ぎた年月
中年になれば、30年40年先は滑落と同じ速さ
観葉植物は、わたしのことだよ
いつか枯らしてしまう