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「冷蔵庫は時を止める箱じゃない」 ※閲覧注意!!

 今回は、本格的な夏となる前にお手伝い出来た方についてご紹介します。

 わたしはこの方から多くのことを学ばせていただいました。

 主に以下の3つを。

 ①冷蔵庫は時を止める箱じゃない
 ②ギャンブルはほどほどにしよう
 ③いつ誰に見られても恥ずかしくない程度には常に部屋を片付けておくべき

 今回のQさんの概要は以下の通りです。

 ※なお、毎度のことですが、個人情報保護のため事実とは少しずつ変えていることを念のため申し添えます。

 ⭐️Qさんの情報
    性別:女性
    年齢:80代前半
  家族構成:一人暮らし
      :身寄りなし
    住居:アパート
    趣味:パチンコ。全財産をスッた
  困りごと:緊急入院した
      :電気が止まった
      :ゴミ屋敷
  相談ごと:「生ゴミを片付けて欲しい」

 …この概要を見ただけでも嫌な予感がいたしますね。


 ※注意
 以下の記事には、汚い系の物が苦手な方には閲覧注意な内容を含みます。



 事の起こりは地域住民からの苦情でした。

 「とあるアパートの一室が物凄く臭い。一人暮らしのおばあさんが住んでいるはずだが、最近姿を見ない。もしかしたら中で孤独死しているのではないか?」

 と。

 まず地域住民がアパートの大家さんに相談し、警察官と大家さんが部屋の中に入りました。

 幸い、孤独死の事案ではありませんでした。

 その部屋の住人が実は緊急入院中だったことが後に判明したのです。

 しかし大きな問題が一つ。

 それは、

 土足でないと誰も部屋の中に踏み入れないカオス

 だったこと!!

 玄関はゴミに埋もれており、まるでバリケードのようになっていたので、窓から出入りしないといけませんでした。

 部屋の中には使用済みのオムツやら、あんなものからこんなものまで産卵。

 「産卵」は誤字じゃありません。

 虫が産卵してるからッ!!

 ゴミ屋敷を片付けるのは警察の仕事ではありませんし、大家さんも住人に無断で財産(他人から見たらゴミでも本人にとっては宝物かもしれない…)を処分するわけにはいきません。

 そこで、病院や行政を含む様々な機関の職員たちを巻き込みつつ(ある意味ロード・オブ・ザ・リングで言うところの「旅の仲間」というか「道連れ」というか「巻き添え」というかそんな感じ!)、まずご本人にコンタクトを取ることになりました。

 入院中のご本人とコロナ禍のためガラス越しに面会し、「特に生ゴミを片付けて良いですか?」と了承を得たところ、なんと本人から衝撃の事実を知らされました。

 「パチンコで年金を使い果たしちゃって、電気が止まったままなんです。良かったら冷蔵庫の中身も捨てておいてもらえますか? ごめんなさいね、まさか自分が急に入院するとは思っていなかったものだから…」

 と。

 かくして、各関係機関の旅の仲間たち(道連れとも呼ぶ)と共にわたしは絶望の部屋へと足を踏み入れました。

 ごく一般的な日本人向けのアパートの一室ですが、全員土足です。

 靴も汚れてしまうので、靴にはカバーも装着。

 服も汚れてしまうので、防護服も装備。

 「ひのきのぼう」と「なべのふた」はありませんが、軍手の上にビニール手袋をオン!

 そしてフェイスシールドも着けて準備はバッチリです。

 …もしも「日本人の部屋なのに土足なんて有り得ない」と頑なに靴を脱いであの部屋に上がろうとする方がいたならば、わたしは泣きながらこう止めたでしょう。

 「早まるな!! 靴下を…靴下を捨てる他無くなるし、足の裏で虫が蠢くことになるぞ…!」

 と。

 …かくして…、…ってこの記事を書いているわたしの気分が悪くなってきたのですが、まだこの記事を読んでくださっている方はいるのでしょうか…?

 いるかもしれないので続きを書きます。

 まずは皆で、床が見えるようにするための片付けをしたのですが、この辺りは記憶から消去したい内容なので敢えて省略します。

 この惨劇が初夏でまだマシでした…。

 真夏だったらきっと我々のうちの誰かが倒れていた…。

 さて、今回のQさんご本人が最も希望された「冷蔵庫の片付け」に関してはきちんと?この記事の中で書きます。

 冷蔵庫の扉を開けるとそこは雪国…



 じゃありませんでした。

 開けてびっくり玉手箱!!

 その中はもはや冷蔵庫ではありませんでした。

 腐海でした。

 「何これナウシカどこ?」と頭の中がフリーズしたわたしは、冷蔵庫の扉をそっ閉じ。

 しかし閉じたままでいるわけにはいかない…。

 これはいつか誰かが封印を解かねばならない箱…!

 観念して他の人たちと一緒に「せーの」で開けてみると、そこには「かつて食べ物だったものたち」の液状化またはフワフワした姿(敢えて可愛い表現でぼかしたいと思います!)が…!

 わたしを含むあの場にいた全員が卒倒しそうになりました。

 例えば、ビンの中に入ったラッキョウ(だったもの)が、『風の谷のナウシカ』で確かナウシカがビーカーだったか試験管だったかそういう感じの物の中で培養していた菌みたいになっていました。

 冷蔵庫の中には地層が出来上がっていました。

 例えば上から、

 エアコンのリモコン。

 コンビニのレシート。

 栄養ドリンク。

 入れ歯。
 (下だけ。失くしたと思って何個か新たに作り直したそうです)

 卵の殻。

 大量の梅干しの種。
 (のちにQさんご本人に聞いたところ、「梅干しを食べた後、種をゴミ箱に捨てるのが面倒臭くて冷蔵庫の中へ入れた。とりあえず冷蔵庫に入れておけば虫が来ないから大丈夫だと思った」そうです)

 元はキュウリだったらしきものが変色して蛇みたいにヌルヌルしていて一部乾いている物。

 かびるんるんの帝国と化したパン?が縮んだ?らしきもの。

 元々が何だったのかもはやよく分からないミイラ化した謎の塊。
 (たぶんお肉だった?)

 野菜?から滲み出た汁のせいなのか、はたまた氷が溶けたせいなのか? 何かで濡れている平成15年の新聞紙。

 などなど…。

 そうした物たちの隙間を様々な大きさの保冷剤が埋めていました。

 これがもしテトリスだったら隙間を埋めれば消えるのに…。

 全然消えてない!

 絶望したッ!!

 Qさんの腐海…じゃなくて冷蔵庫の中身を片付けながら、わたしの頭の中ではなぜか『バイオハザード』の『アンブレラ社』のマークがずっと点灯していました。

 なんかもう自分が何かのウイルスにやられてゾンビ犬みたいになるイメージが浮かんでしまいました。

 どうせ変身させられるなら『サイレントヒル』のナースみたいにスタイル抜群のセクシーなゾンビにしてッ!!

 我々は各々頭の中で現実逃避をしながら、必死で冷蔵庫の中身を捨てつつ、後々「必要なものまで捨てられた!」と訴訟を起こされないように、「かつて食べ物だったものたち」を一つ一つデジカメで写真に収めて記録していきました。

 気分は考古学者!

 中にはなんと賞味期限が昭和で切れているものまで見つかり、我々は大いにどよめきました。

 「凄い!! 学会で発表しよう!!」

 と。

 一体何の学会だッ!?

 ちなみに賞味期限が昭和で切れていたのは瓶に入った飲み物でした。

 我々の中で最も若い男性職員が「僕がやります!」と名乗りを上げ、エイヤッと開封して流しに捨ててくれました…が…、彼、めちゃくちゃ咳き込んでました。

 なんと哀れな、そして勇敢な若者よ…!

 いつか彼の功績を讃える銅像を建てたいです。
 ※彼は生きています

 そういえば、Qさんがおっしゃっていた通り、確かに電気は料金滞納のせいで止まっていたのですが、冷蔵庫も相当古かったです。

 遅かれ早かれ腐海化する運命だったのかも…?

 ちなみに炊飯器の中も腐海になっていましたよ…。

 本当に突然入院したんだなということがよく分かりました。

 なお、Qさんは身寄りがなく、友達もおらず、かといってデイサービスやヘルパーを利用していたわけでもなかったので(そもそも介護保険料をずっと滞納していたので介護サービスを利用出来なかった)、部屋を片付ける気力が全く湧かなかったそうです。

 パチンコ屋にしか居場所がなかった、とQさんは話していました。

 そう考えると気の毒な方でもあります…。

 これはQさん個人だけではなく社会全体の問題ですよね…。

 …また、こんなレベルのゴミ屋敷は、本来ならそれ専門の業者に清掃を依頼したいところ。

 しかし、今回のQさんは金欠だったのが悲劇でした…。

 業者に頼むお金がない…!

 けれどまだQさんご本人は入院中。

 このまま放置はしておけない…!

 誰かが掃除しないといけない…!

 でも「じゃあ誰がやるんだ? 誰の仕事だ?」となった時に、明確に「誰」と決まっているわけではない…。

 今回のケースは相当なジレンマをもたらしました。

 結局色んな機関の人たちを巻き添えに…じゃなくて連携していくことにより、皆で痛み分けしましたが…。

 こんなことが続いてしまうと我々も倒れかねません。

 …お部屋の片付けが苦手で汚部屋に住んでいる…という方がもしこの記事を読んでくださったら、即刻お片付けを始めてください。

 ジャストナウ!!

 ライトナウ!!

 人間、いつ入院するか分かりませんし、いつ死ぬかも分かりませんので。

 いつ誰に部屋の中を、そして冷蔵庫の中を見られても問題ないように、どうかお片付けをお願いします!

 惨劇を繰り返さぬように…!!



 …とはいえ、今回のQさんより酷いゴミ屋敷もこの世には沢山存在しますけどね。

 今回はまだ綺麗な方。

 今回は犬や猫といった動物の死骸や人間の遺体がなかったので、随分マシでした。

 せいぜい全身痒くなったり蕁麻疹が出来るくらいで済みましたから。

 特に人間の遺体の第一発見者になってしまう
と、警察の事情聴取もありますし、何やかんやと大変です。

 わたしもこれまでに何度警察官に事情聴取されたことか…。

 今回のQさんは孤独死せずにちゃんと入院してくれていて良かったです。

 どうかお大事に!

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