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秋乃茉莉『賢者の石 (12) 堕天使の城』

 秋乃茉莉先生の賢者の石シリーズ。

 1巻から16巻まで続くこの漫画の中でもわたしの一番のお気に入りは、12巻『堕天使の城』。

 ジャンヌ・ダルクとジル・ド・レに関する作品が好きな人にはたまりません。

 ※注意
 以下の文にはネタバレを含みます!





 ⭐️あらすじ


 物語の舞台となるのは、かつて、ジル・ド・レによって数え切れない少年たちが惨殺された城。

 その城で、悪い錬金術師のたくらみにより、ジルの魂がこの世に召還されます。

 悪い錬金術師はジルに叫びます、「今こそあなたの無念を晴らす時。フランスに復讐を! キリスト教徒に鉄槌を!!」と。

 その時、良い錬金術師が機転をきかせ、ジルの目の前で、ジャンヌ・ダルクの魂を召喚します。

 ジルはジャンヌとの再会の喜びに震えながらも、火炙りにされる前にジャンヌを救ってやれなかったことを嘆きます。

 「フランスがどうなろうと 男爵家がどうなろうと 君だけを救いたかった

 と。

 そんなジルにジャンヌは微笑みます。

 最期はすべてを許せる気持ちになれた。

 だからあなたももう自分を責めないで。

 …と。

 ジャンヌの気持ちを知ったジルは、「君が穏やかな気持ちで逝けたのなら 私も悔いはない」と微笑み、やがて消えていきます。

 まるで二人、手と手を取り合うようにして…。



 ⭐️感想

 ジャンヌ・ダルクとジル・ド・レ。

 この二人を描いた作品は世界中に数え切れないほどあります。

 散々な描かれ方をしているものも多い中、この作品での二人はおそらく最も幸せな結末を迎えたのではないでしょうか?

 ジルが少年たちを惨殺したことは、決して許されざることですが…。

 ジルはジャンヌを心の底から愛しているからこそ、彼女が魔女の汚名を着せられたうえ火炙りにされた時、全てを呪ったのでしょう。

 自分のことも。

 国のことも。

 神すらも。

 全てが許せなかった。

 逆に、彼女を心の底から愛しているからこそ、その彼女に「自分を責めないで」と言われれたことで、全てを許すことが出来たのでしょう。

 二人が消えていくラストがあまりに美しく、わたしはこの作品を読む度に心を打たれます。

 羨ましいです。

 そこまで愛せる人がいるなんて…。

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