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松田奈緒子『花吐き乙女』

 突然ですが、あなたは花を吐いたことがありますか?

 この漫画に登場するのは「花吐き病」。

 それは、心の底から誰かを好きになって、でもそれが片想いだという場合に、口から様々な花を吐いてしまう…という、何とも不思議な病のことです。
 ※架空の病気です。

 水仙、薔薇、蓮、雛げし、チューリップ、ガーベラ、パンジーなどなど…。

 花吐き病の患者は、想いが募って苦しくなると、いつでもどこでも花を吐いてしまいます。

 しかも、誰かがその花に素手で触れてしまったら、即感染してしまいます。

 恐ろしい病気。

 なのに、吐き出される花はどれもこれも綺麗。

 まるで、片想いに涙する人の心を優しく慰めてくれるかのように…。

 この花吐き病を治す方法は、たった一つだけ。

 それは、片想いの相手と相思相愛になること。

 そうすれば花吐き病が完治するだけでなく、若返りの効果があるとも不老不死の効果があるとも噂される「白銀の百合」を吐くことが出来ます。

 …と、ここまで読んでくださった方に、わたしは聞きたいことがあります。

 あなたは「自分も花吐き病になりたい」と思いますか?

 それとも、「自分は花吐き病にはなりたく無い」と思いますか?

 わたしは…ひとさまに質問しておいて何なのですが、まだ答えを出せていません。

 好きな人に好きになって貰えない辛さを痛いほど知っていますから。

 花を吐くのはしんどそう。

 時と場所を選ばずに花を吐いてしまうのですから。

 社会生活にも大きな影響を与えそう。

 それに…、もしわたしが花吐き病に感染していたなら…、きっと先月、何度も花を吐いてしまっていたと思います。

 そうなったら片想いの相手に迷惑をかけてしまったかもしれません…。

 だから、わたしは花吐き病でなくて良かった。

 片想いの相手に直接気持ちを確かめたわけではありません。

 告白する勇気すら無いから。

 けれど、もしわたしが花を吐いたら、それは片想いだという証拠。

 わたしは花を吐けば吐くほど、相手の気持ちはわたしには向けられていないという現実を見せつけられて辛くて悲しくて寂しくて、それでも花を吐くのが止まらなかったことでしょう。

 …この記事を書いている今だって、片想いの相手への気持ちを振り切ろうと努力している最中ですから、きっとわたしは花を吐きながらこの記事を書いていたはず…。

 けれど、花を吐くということが「自分は花を吐くほど誰かを好きになれた」という証になるなら、わたしは花吐き病になりたいとも思います。

 きっと世の中には、誰かを心から好きになるという経験をしないまま亡くなっていく人だって多いはず。

 たとえ片想いだとしても、好きな人と出逢えたなら、それだけでも物凄い奇跡だと思います。

 それに…、もし誰かと恋人や配偶者になって、どんなにお互い「好き」と言葉で伝え合っても、本心かどうか確かめようが無いからもどかしくて堪らないですよね?

 花吐き病なら、「白銀の百合」という、目に見える形で両想いを確かめることが出来ます。

 わたしもいつか誰かと相思相愛になって「白銀の百合」を吐けたら…、どんなに幸せだろうかと思います。

 もしそうなったら、「白銀の百合」そのものは誰かに差し上げたいです。

 それを必要としている人に。

 わたしは、たとえ一生に一度でも好きな人と心が通い合ったという事実さえあれば、不老不死なんて要らないや。

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