翻訳ジャーニー、英日翻訳者・翻訳講師、マーケティング、セキュリティ(物理&サイバー)など

実務翻訳者・翻訳エージェント・翻訳講師。産業字幕、広告、マーケ、IT、ファッション、人…

翻訳ジャーニー、英日翻訳者・翻訳講師、マーケティング、セキュリティ(物理&サイバー)など

実務翻訳者・翻訳エージェント・翻訳講師。産業字幕、広告、マーケ、IT、ファッション、人事などなどを20年ほどやっています。#Udemy(ユーデミー)で翻訳講座を開催中。ストアカでの講座は不定期。YouTubeで翻訳者の日常&仕事術を話しています。

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翻訳業務の発注サイドから見たAI翻訳とお金の話

どうも、翻訳ジャーニーです。今日は翻訳会社からの目線で、AI翻訳・機械翻訳とその人力修正(ポスト・エディティング)について話してみたいと思います。 遠回りになりますが、最初に翻訳会社のもうけについて考えてみます。 翻訳会社のもうけたとえば、翻訳会社Aがクライアントから翻訳業務を受注します。受注金額は仮に「100」とします。あえて単位は付けません。100万円かもしれませんし100,000ドルかもしれません。 受注金額から必要経費を支払ったものが利益になります。当然ですね。

    • AI翻訳の手直しを何か別のことに喩えてみる①(タクシードライバー編)

      こんにちは。翻訳ジャーニーです。 この記事では、AIによる翻訳結果を人間が手直しする Machine Translation Post-Editing(MTPE)を別の作業に言い換えてみます。 いつ事故るかわからない自動運転車たとえば、あなたがプロの運転手だとします。都会で働くベテランのタクシードライバーだとしましょう。そんなあなたのところに仕事が舞い込んできました。 平均すると10分に1回の頻度でハンドル、アクセル、ブレーキ、その他の操作を間違えるAI運転技術があると

      • 産業字幕翻訳における文字数の目安について

        「この字幕はこの単語を訳してないじゃん」現象ずいぶん基本的な話だけど、(産業/エンタメ)の字幕翻訳を見て「原文のここが入っていない、あれが入っていない」という意見はとても「あるある」である。そのことと産業字幕の文字数などについてちょっとだけ書いてみる。その前に、私はエンタメ字幕の専門家でないことを先に断っておく。 エンタメ字幕は1秒4文字が基本エンタメ字幕は一般に1秒4文字という目安がある。ドキュメンタリーは少しだけ増えても許容されることがある。1秒4文字に収めるためには情

        • 翻訳者じゃない人に向けて、翻訳発注の側面から、人力翻訳、AI翻訳のみ、AI翻訳+人力修正の違いについて話すよっ!

          こんにちは。なんか最近ずっとAI翻訳とかそういうテーマで書いています。翻訳者じゃない人とプロ翻訳者との間で認識の乖離がすごいので、ちょっと参考情報としてまとめてみたいと思います。ご意見ご感想はコメント欄にお願いします。 用語の定義:人力翻訳、AI翻訳のみ、AI翻訳+人力修正とは人力翻訳とは、プロの翻訳者がゼロから翻訳して通常は別の翻訳者が内容をチェックするという作業工程です(細かい話は省きます)。以降は「HT」と書きます。Human translationの略です。 AI

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        • 翻訳にまつわる小技
          9本
        • タイポ撲滅委員会
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          3本
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          翻訳者じゃない人にAI翻訳の修正がいかに苦痛か説明するよっ!

          関連記事: 漫画のAI翻訳に29億円について 翻訳者じゃない人に向けて、翻訳発注の側面から、人力翻訳、AI翻訳のみ、AI翻訳+人力修正の違いについて話すよっ! こんにちは。翻訳ジャーニーです。猫も杓子も口を開けば「エーアイ、エーアイ」と言うようになった感のある昨今ですが、翻訳業界でもそのトレンドは変わりません。 ここでは、AI翻訳(ニューラル機械翻訳)の結果を人間が修正するポスト・エディティング(PE)についてお話しします。とりわけ、多くの翻訳者がPE作業を苦痛に感じる理

          漫画のAI翻訳に29億円について

          関連記事: 翻訳者じゃない人にAI翻訳の修正がいかに苦痛か説明するよっ! 翻訳者じゃない人に向けて、翻訳発注の側面から、人力翻訳、AI翻訳のみ、AI翻訳+人力修正の違いについて話すよっ! こんにちは。翻訳ジャーニーです。プロの翻訳者とそうでない方の間に、翻訳やらAIやらに対する認識がものっそい乖離しているので、ちょっとメモがてら書こうと思います。 次のツイートをしたところ、ほんの少しだけ話題にしてもらえました。1日でだいたい6万ビュー、500リポスト、1.5万いいね、くら

          アヤシイ講師や講座の見分け方 〜 ヤバそうな奴らはだいたい○○ 〜

          こんにちは&こんばんは。翻訳ジャーニーです。 ネット上をぐるぐる見ていると、アヤシイ講座&講座というものが少なからず見つかります。その講座が本当にヤバイ講座なのかどうかは受けてみないと分かりませんが、受ける前からある程度は判断ができます。 今回は、アヤシイ講座に捕まってお金を落としてしまう前に、そうした講師や講座を嗅ぎ分ける方法を紹介します。翻訳講座を念頭に書きますが、どんな講座にも使えるテクニックです。追記すべき事がありましたらコメントやツイッターにてお願いします。 ア

          アヤシイ講師や講座の見分け方 〜 ヤバそうな奴らはだいたい○○ 〜

          その時給は妥当?1時間あたりのレビュー量と実際の作業負荷&品質について

          グッモーニン!翻訳ジャーニーです。 大前提この記事は、ITやマーケなどの分野でレビュー&LQAをしてきた私の経験に基づいています。クライアント、翻訳会社、分野が違えば大きく変わってくるのは当然です。そのあたりをご理解いただける方はこれ以降をお読みください。 ※なお、以下のスループットに差分の作成やフィードバックの時間は入っていません。ファイルのダウンロード&アップロード、納品の連絡、ポータルでの操作など、logisticalな作業負荷は入っています。 レビュー/LQAの

          その時給は妥当?1時間あたりのレビュー量と実際の作業負荷&品質について

          翻訳とチェックとミスの種類とワイシャツと私。

          最近、ツイッターランドで翻訳とチェックの話が盛り上がっていたので、思い付くことを書きたいと思います。 前提: 私とチェックのお仕事について私の仕事はほとんどが翻訳のチェックです。金額ベースで一番多いのがLQAだと思います。1人目が翻訳者 -> 2人目がチェッカー(レビュアーなど名前はいろいろ) を経て、3人目のLQA担当者(私)にたどり着くという工程です。LQAの仕事の多くがアンカーです。つまり、私の手を離れた訳文がそのまま公開されることになります。重要度が高い内容だと、私

          交渉力とは何か(ネタバレ -> 記事本文中に答えはありません)

          こんばんは。翻訳ジャーニーです。 私は自分のことを「交渉に強い」とは認識していません。まぁ、特に弱いとも思っていませんけど。しかし周囲の人からは交渉力を褒められることがあります。 過去に途上国を中心に40~50か国くらいを旅して現地でのんびり過ごしていた経験や、20年ほど自営業で生きてきた経験もあるので、なんか思い付くままに書いてみます。 (念のため書いておきますが、日本以外のほとんどの国では何に付けても交渉交渉です。特に途上国ではその傾向が強いのです。) 納得できない

          担当アカウントにMTが導入されたときのこと

          こんにちは/こんばんは ふと思い立ったので書きます。けっこう前のことですが、チームリードとレビューを担当しているアカウントで、一部がMT(PE)になるという連絡を受けました。 そのアカウントでは、マーケティング翻訳、字幕、システムUI、プレスリリース、操作手順など、さまざまな仕事があります。そのなかで、ヘルプ記事だけをMTに置き替えることになりました。人間的な翻訳力が求められない dry なコンテンツだからというのが理由だそうです。 蓋を開けてみると、大変でした。 手

          いとしさと、正しさと、多数決と、心強さと。

          こんにちは あるいは こんばんは。 翻訳ジャーニーです。(※画像が上手く処理できず、投稿を再アップしました。いいね!してくださった方すみません) 突然ですが、ある言い回しが「正しい」かどうかって、難しいですよね。今日はそんなお話を書きたいと思います。 「おかげ」で悪いことが起きるか問題産業字幕翻訳をレビューしていたときのことです。 上記のような訳文に遭遇しました。[1]と[2]は、それぞれ別のハコです。ハコというのは、画面に一度に表示されるテキストのかたまりのことです。

          レターパックで「干しイモ送れ」はすべて詐欺

          2023年の4月1日、レターパックが届いた。 差出人は実母。中身についてはこう書かれている、「干しイモ」と。 母からは時々ではあるが郵便物が届く。たいていは、何かしらのイベントごとがある場合だけだ。母から見て孫の誕生日であるとか、何かの記念日的な日であれば郵便物が届いても不思議ではない。 しかし今回は、取り立ててそのようなイベントはない。少しふくらんだレターパックを裏返しにして、封を開けようとすると目に入ってくる文字がある。 その日は特にイベントごともない、ただの4月1

          原文テキスト 先に読むか、訳しながら 読むか問題

          こんにちは、あるいはこんばんは。ここ数日、Twitter界隈で翻訳者たちが面白い議論を交わしています。その議論とは、原文を(たとえざっとでも)最後まで読んでから翻訳し始めるか、原文を通読していない状態で翻訳を始めるか、というものです。 結論から言えば、正解や王道というものなどなく、個人の好みや分野の違いなどが大きいようです。しかしここには、後半の「翻訳者は何者にもなる」で解説している通り、面白い事実が隠れていたのです。 順を追って話します私の知る限り、きっかけは越前さんの

          ネイティブであるといふこと その2(半ケツの定義)

          あらかじめお断りしておくが、お下品な話ではない。 子どもは産まれた瞬間(あるいは胎児の頃から)周囲からの言葉を浴びて育つ。それは単に無機質な音としての言葉ではなく、意味と意図のあるコミュニケーションとしての言葉だ。ネイティブというのは、その言葉のシャワーをふんだんに浴びて、言葉がたんと張られたバスタブに飛び込んで、長い時間をかけてバタバタ泳いでネイティブに育つのだと思う。 今日はシリーズ2回目として、半ケツのエピソードを紹介したい。 何歳の頃かは忘れたが、それは我が家の

          MTPE力の進化は翻訳力の退化か ~CATツールの導入とMTPEの台頭を振り返って~

          こんにちは!翻訳ジャーニーです。 私はほとんどMTPEについて書かないんですが、ふと思ったことがあるので筆を執る(キーボードをたたく)ことにしました。思いつくまま書いていますので、まとまりに欠けることを先にお詫びします。 #1 CATツールの登場と弊害超ベテランの方の中には特に、CATツールを使わないという方がいらっしゃいます。TMによる値下げがいやだという理由だったり、文脈が読めないので翻訳しにくいという理由だったり、あるいはそれ以外にもあるかもしれませんけれども。

          MTPE力の進化は翻訳力の退化か ~CATツールの導入とMTPEの台頭を振り返って~