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たくさんの「ガーン」が豊かな人生。

みんなの図書館「本と一筆」に登録してくださっている本棚オーナーさんの棚から一冊取り上げてみるコーナー。みんなの図書館「本と一筆」の運営メンバーが本の感想や感じたことを書いていきます。

今回の本は、「めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン」。

文・絵 多屋光孫

この本は、静岡県浜松市の京丸園という芽ねぎ農園での実話をもとに描かれた絵本で、京丸園の鈴木緑さんが本棚オーナーになってくださっています。

芽ねぎ農家の鈴木さんが障がいのある二人と関わることで、考えが大きく変わっていき、農園もどんどん成長していったというストーリー。

例えば、「これちゃんと洗っといて」とトレー洗いを指示したら1時間に一個しか洗えなかった人に、「トレーの上側を3回、その反対側も3回スポンジでこすって、ホースで水を流して」と指示すると、瞬く間にせっせと洗ってくれるようになったというエピソードがあったりします。

これは障害のある人に対してかどうかは関係なく、私たちも日常的にやってしまっているよなあと思います。
自分にとっての当たり前が、相手が障がい者であれ誰であれその人にとっての当たり前なはずがない。

例えば「洗濯物お願いね。」と言われた時に、洗うだけでなく干すまでするかどうかは人によって認識が別れるのではないでしょうか。
だからこそ、相手の立場を想像したり、丁寧に言葉を伝えることって本当に大切だなと思うと同時に難しいとも思います。

関係性の深さによっては、相手に前提として求めることが変わるけれど、「そのくらいわかってよ。」と相手に無言で強いるのはなかなか傲慢だよなと。


そしてもう一つこの絵本が教えてくれていることは、自分の無意識な当たり前や思い込みがあることで、たくさんの可能性を狭めてしまっていること。

芽ねぎ農園にきた2人の障がい者さんたちは、丁寧にわかりやすく伝えたり環境を整えてあげると、とっても素晴らしい仕事をしていました。
この人にこんなことはできないだろうという思い込みが、人や会社の可能性を狭めていたのだと思います。

障がい者でも、自分でも誰でも、たとえ本心から可能性を信じられていない自分がいたとしても、それは全然ダメなことじゃないはず。そのことに気づけたところからもう前に進んでいるのだと思います。
先が見えないけど、可能性を信じる自分でありたいと思う意思こそ大切にしてほしい。

あとはコミュニケーションをとってみながら、偏見感知センサーを持っておいて関わっていたら、ガーンと思い込みが外される時がくるかもしれません。

絵本の中の鈴木さんは、たくさんガーンとなりながらも、障害のある方々が仕事をしやすいように環境を整えて、今では100人以上の障がい者さんたちが芽ねぎ農園で働いているそうです。

私も障がいのある方々と一緒に活動させてもらって、ガーンとなりつづけているからこそ生きやすくなりました。多分、彼らと触れ合ってなければずっと「善い人」を演じていて、生きづらさを抱えて生きていたのかもしれません。

思い込みは変化しないこと。
前はこう言ってたのに、今は違うこと言ってやがるとSNSで炎上したりしているのをみると、何とも悲しい気持ちになります。

人が変わっていくのは当たり前。
ガーンの数が自分の世界を広げてくれて、豊かに感じるという人が増えたらいいなという願いも込めて。

絵本なのでお子さんといっしょにぜひ読んでみて欲しいです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

*お知らせ*
京丸園さんの新著、「ユニバーサル農業:京丸園の農業/福祉/経営」も発売され、「本と一筆」にも置かせていただいております。
ご興味ある方はぜひ手に取ってみてください。


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