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おあとがよろしいようで

東京の大学ならどこでもいい。
早く実家から出たかった主人公と私は似ている。
しかし違っていたのは…。

タイトル:おあとがよろしいようで
著者:喜多川泰

時代の違いもあるけれど
私は大学の寮生活
一部屋4人
起床時に点呼がある(笑)

門限が7時くらいだった
基礎課程の最終の授業が終わって帰ると
門限に間に合わない。

遅れる理由や
休日の外出届
携帯電話すらなく
寮入り口の公衆電話に並び
順番に電話をかけた。

ルールが厳しくても
親元を離れたかった私には
すべてが楽しかった。

こんな私の思い出話は横に置いて。


物語は、主人公「暖平」の大学入学式から始まる。
桜の花びらが舞う最高の日だ。

なのに、
暖平は楽しむ余裕はない。
初めての一人暮らし十日が過ぎても
誰ても口をきかず知り合いがいない。
自分の暗くネガティブな部分ばかり感じてしまう。

サークルのお誘いから逃げるように離れた先で
出会ってしまうのだ。

「落語」に。

でも、そこで落研に入らないのよ~!
誘われるのがこわくて
逃げるようにアパートに帰ってしまう。

その日のうちに「秋葉原」に出かけて
のちに芸名となる
「こたつ」
が登場する。

この「こたつ」のおかげで
落研に入るのだ。

落研メンバーの芸名もなかなか面白い。
ヤンキー語の
「夜露死苦(よろしく)」
のように当て字。

物語のラストで芸名が変わるときも
こりゃ一本取られたって感じになる。

言葉あそび
テンポ
ストーリーの緩急
がいい。

落語と同じ
まくら~第一席~~~第十一席~サゲ
で構成されている。

それぞれに落語のテーマが重なっていて
知っていればなお面白い。

主人公の暖平は落語が好きなわけでも
話がうまいわけでも
友だちが多いわけでもない。
入学式に人を避けるような感じだ。

その暖平が落語と仲間を通して変わっていく。

暖平は人付き合いが苦手で、初対面では自分から話しかけるようなこともなかったし、仲のいい友だちを作るのも苦手だった。
ところが大学生活が始まってまだ三ヶ月しかたっていないのに、同じ学科の同級生とは、誰とでも話ができるようになっている。どうしてそうなったのかなんて考えたことがなかったが、言われてみると、そういった生活面での変化が生まれたのは『落語の世界』との出会いが大きいのかもしれない。

「おあとがよろしいようで」第五席 金明竹より


喜多川氏の本は
キーワードが多すぎて全部書きたくなる!!!
落研の部長が話す「個性」のところを引用します。

俺が古典落語が好きなのはね、こうやってみんな同じ噺をするのに、そこに一人一人の個性が色濃く爆発するからなんだよ。
徹底的に同じことをやってみないと、個性なんて発露しない。
だって、どこまでも同じことをやってるのに、一緒にならない部分のことを『個性』っていうんだろ?

「おあとがよろしいようで」第七席 抜け雀 部長のセリフより

そうなのよ。
落語って同じ話でも
噺家さんによって違う感じに聞こえるの。

私たちも、
同じことをやっても大丈夫。
ちゃんと「あなたらしさという個性」がでます。

そして私のビジネスの
これからを考えさせられた一文。
主人公の高校生時代の先生の言葉。

出る杭は打たれるって言うだろ。人間はさ、落ちていくときとかダメになろうとするときは誰かを誘おうとするくせに、上がっていくときとかよくなろうとするときはコソコソ自分一人で行こうとするんだよな

「おあとがよろしいようで」第六席 猫の皿より

学生時代テスト前
「勉強してないよ」
と言って成績上位とか

マラソン大会で
「ゆっくり走ろうね」
と言って本気出すとか(笑)
素直だった私は何もしない人だった。


人生には成績は関係ない。

自分が目指す方へ上がるとき
みんなで上がればいい。

「しょうがないよね~」って
傷をなめあうなんて
私はすごく嫌なのだ。

あ~~~、まだまだ書きたくなる。
私の好きな要素
「喜多川氏×落語×物語のチカラ」
が重なり合って

読後感が良く
心がおちついて
にっこりする本でした。

〈こんな方に〉

  • コミュニケーションが苦手な人

  • 人生に面白いことなんてないと思っている人

  • 落語が好きな人

  • 生き方を考えたい人

  • 心が落ち着く本を読みたい人

  • 大学生へのプレゼントにしたい人

  • 新しい会社や部署でちょっとモヤッとしている人に

お勧めです。




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