からだとこころを冷やさないように。中医学と中国人に学ぶ、「常温でビール」という文化
中医学なんていい加減なことを言うんだろう、と思っていた時期がある。
エビデンスに満ちていて、直感的な医療をする西洋医学でないと解決できない問題がある。東洋医学はいい加減で、信用に足らない。
そんなとき、漢方寄りのお医者さんから「補中益気湯」を処方されて、それから漢方っていいなと思うようになった。
漢方では、からだを冷やさないようにということを大事にする。このサイトでは、現在の日本社会はやたらとからだを冷やすことが多い、と書いている。
「冷え症は東洋医学ならではの病気としましたが、現代社会ではむしろ冷えは増加していると思われます。運動不足に加えて現代社会は冷やす社会ともいえ、夏場のクーラー、冷蔵庫の冷たい食品、本来は夏だけに食べていた食品を冬場にも食べるようになった(トマトなど)などが、原因に挙げられます(図3)。」
暑いから、からだを冷やそう。眠いから、冷やして目を覚まそう。ぼーっとするから、冷やして気分を変えよう。そうこうしていると、次第に胃腸の動きが悪くなって、吐き気がしてくる。これが最近になって気づいたことだ。
中医学って素敵だなと思ったのが、「中国人は冷えたビールを飲まない」という話を聞いた時だ。
からだを冷やしてはよくないからと、中国のビールはいつも生温いらしい。
日本人からしたら物足りないと思うこともあるだろうが、中医学からしたら正しいことなのだ。
「中国の人たちは体を冷やすのは健康に良くないと思っているので、お湯を飲みたがります。中国のお店では夏でもお湯が出てくることもあります。そういった意味では味より健康を取るという実用的な考え方なのかもしれません。」
たしかに、紹興酒や日本酒や焼酎には熱燗という文化がある。あれのほうが、すんなりとからだに入ってくる。
熱燗だと、すんなりと抵抗なくアルコールがからだに吸い込まれる感覚がある。私は冷房の効いた部屋で、レストランでしか飲めない熱燗を頼むのが好きなのだが、それも良くないと言われてしまいそうだ。
とにかく、ビールは私はあまり好きではないが、お酒はなるべく常温で飲むようにしている。そうすると、変な酔い方をする頻度が下がっている気がする。
なお、私はなぜか、日本酒よりもビールのほうが酔うし、梅酒よりもレモンサワーのほうが酔う。
炭酸が苦手なんだと思う。
話がそれた。
問題はほかにもあって、こころを冷やしてはいけないということだ。
テレビを見ると、どこかの国にミサイルが落ちたとか、どこかの国で銃乱射事件が起きたとか、そんな話ばかりだ。日本の貧困が、政治家が、ホストクラブが、若者が、高齢者が、といつも暗い面ばかりだ。
それを話すな、見るなと言いたいわけではない。もちろん、メンタルヘルスに影響を及ぼすなら辞めたほうが良いが。
問題は、それがたとえば小説やゲームの中の話だというように、一枚の厚い壁をつくって、その向こうで起きていると考えてしまうことだ。他人事にしていることは、人殺しやこの憂鬱な社会にほんのすこし加担していることになる。
デモをしなさいと言っているわけではない。
ただ、殺されたり苦境に立たされたりしている世界中の誰かが、自分だったかもしれないという意識を、自分のメンタルヘルスに影響を及ぼさない範囲で持っていてほしいということだ。
私達は進んで日本(あるいはほかの国)に生まれたわけではなく、いくつもの偶然が重なって私達はここにいる。
両親が日本に住んでいる日本人である、などの理由で。
それは単なる偶然で、そしていくらかのひとはたまたまその国に残り、あるいは自分から選んで残り、あるいは進んで、あるいはいやいや出ていった、ということだ。
そして、からだの冷えとこころの冷えは連動している。からだがあったかいと、こころもだんだんあったかくなってくる。
だから、より簡単なからだをあっためて、それからこころもあっためていこう。
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