雑学
小学校の同級生に、みんなから「雑学王」と呼ばれている友人がいた。
今の感覚だとダサい感じがするが、少なくとも当時の私は、彼を羨望の眼差しで見ていた。
「雑学」が意味していたのは何だろう。学校の教科書に載っていないこと、という説明が一番しっくりくるかもしれない。教科書の内容を頭に入れることさえ億劫だった人間にとって、教科書外のことを豊富に知っているというのは、それだけで尊敬に値した。
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ある時、雑学王の住んでいるマンションに遊びに行ったことがある。
彼の部屋に案内されて、まず驚いたのは、壁を覆う本棚とそこに並ぶ本の数。本に全く関心がない人間でも、「すげえ」と感動したほどだ。
「雑学王」の称号に相応しい部屋だと一人納得して、「ここにある本、全部読んでるの?」と質問する。雑学王は「全部は読めないよー」と答えながら、棚から本を数冊引き抜いて、私に見せてくれた。
引用した雑学は、実際に教室で披露されていたものだったので、「これがネタ元かー」と深く記憶に刻まれた。それもあって、雑学王が見せてくれた数冊の本のうち、今でもタイトルを覚えているのは、『アシモフの雑学コレクション』のみとなっている。
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「面白いから、読んでみて!」と強く勧められたものの、結局実際に手に取ったのは、大学生になってからだった。遅い、遅すぎる。
引いたのは、アシモフ雑学本に収録された、星新一の「驚く楽しみ」という文章の一節。
ここで書かれていることを、まさに雑学王は実践していたと言える。彼と同じように、「実はね……」と雑学を披露できる友人になれなかったことが、悔やまれてならない。
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