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【編集先記】驚異と癒しの圧倒的アンモナイト空間!三笠市立博物館編vol.2

こんにちは。編集長です。

某出版社から刊行予定の某化石案内本の取材のため、三笠市立博物館を訪れました。
驚異と癒しの圧倒的アンモナイト空間!三笠市立博物館編vol.1の続きからお届けします。

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アンモナイトの歴史

ここは日本一のアンモナイト博物館。大きいものだけでなく、小さいものも、形の変わったものも、北海道産を中心に約190種600点のアンモナイトが展示されています。
(ちなみにこのフロア全体の化石の展示数は約1000点。つまりアンモナイトだけで6割!)

化石展示室の様子

ところで、アンモナイトはいつ頃誕生し、どんな進化をたどって、いつ頃絶滅したのでしょうか
その歴史がひと目でわかるのがこちらのパネル。

イラストではなく実物化石が貼られているのがすごい

これを見ると、アンモナイトの歴史がとても長いことがわかりますね。
約4億1600万年前のデボン紀に始まり、約6600万年前の白亜紀の終わりまで続くおよそ3.5億年の歴史のなかで、まぁいろんな種類のアンモナイトが登場しては消えています。

面白いのが、中生代から一気に形やサイズのバリエーションが豊かになっていること。これ、どういうことです??

唐沢先生が興味深い仮説を話してくださいました。
「確かに古生代のアンモナイトは形もシンプルで、サイズも1メートルを超えるような大きなものは知られていないですが、その理由はわかっていません。ただ、古生代はオウムガイの多様性が豊かだったことが知られているので、もしかしたら競合相手になっていたのかもしれませんね。オウムガイが種数を減らす中生代にかけてアンモナイトのバリエーションが増えていますし、特に白亜紀には異常巻きアンモナイトがたくさん出ています

出ました、「異常巻きアンモナイト」。
聞いたことありますか?

アンモナイトと言えばまず思い浮かべるあのぐるぐる。きれいに巻かれたものを「正常」とするならば、その「巻き」が「異常」なアンモナイトをこう呼ぶのです。

どんなかと言うと、こんなです。

異常巻きアンモナイト

異常ーーー!
これは異常な巻きです。でもこの「異常」も気ままなものではなくちゃんと規則性があるそうで、不思議ーーー!!

アンモナイト、どんだけ進化の実験を繰り返してこうなったのでしょう。
白亜紀末のあの大量絶滅がなければ、もしかしたら今もユニークな姿で海中を泳いでいたかもしれませんね。

蝦夷層群から肉食恐竜発見!?

さてさて。
ここは日本一のアンモナイト博物館。なのですが、アンモナイトの他にも、この地を代表する見過ごせない化石が展示されています。

エゾミカサリュウの頭骨

これは1976年に蝦夷層群から発見された、エゾミカサリュウ
というか、え? ええ? あの肉食恐竜、ティラノサウルスに似て…ない……??

そうなんです。
実際、発見当初はティラノサウルス科の頭骨の一部ではないかとされていたそう。
ところがその後、鑑定が見直され、発見から32年後の2008年に海棲爬虫類モササウルス類の新種タニファサウルス・ミカサエンシスとして正式に論文が発表されました。

全身の姿が復元されています。

エゾミカサリュウの生体復元模型。個人から博物館に寄贈されたもの


超絶イケメン!! 

この復元模型は、タニファサウルス・ミカサエンシスの記載者である小西卓哉博士(米シンシナティ大学)が監修を務め、(株)海洋堂の古田悟郎氏が製作を手がけたとんでもないシロモノ。

どこから見ても抜かりなくすごい模型なんですけど、特に口の中ですよ!

特別にケースを開けて撮影させていただきました。ありがとうございました!

まるで生きているような生々しさ。。。
モササウルス類は喉の奥にかえし専用の歯を持っていたのですが、その歯まで再現されています。
実際にはケースの中に展示されているので、この距離感で観察するのは難しいかもしれませんが、訪れたらぜひ、いろんな角度から見てみてください。


隠し玉のカニ玉

アンモナイト一点推しかと思いきや、エゾミカサリュウなんていう超特大級の隠し玉を持っていた三笠市立博物館、なかなか侮れません…!

他にも何かないかと探してみたら、個人的超お気に入りを見つけてしまいました。

カニ玉

ノジュールに入った、カニ。
まんま、カニ。

ノジュールとは、地層が形成する過程で特定の物質が濃集して球状に固まった塊のこと。中に化石を含んでいる場合、見事な保存状態を保っていることがあります

玉に閉じ込められたカニの姿。。見事です。

そして何がいちばんのお気に入りかって、この化石を指して唐沢先生が発した「カニ玉」という表現。

カニ玉? 今カニ玉って言いました? 
と思わずはしゃいでしまったのですが、検索するとこの界隈で割と使われる表現らしく、なんだよそれ、全然知らなかったよ、超可愛いじゃん!!となったのでした。



アロサウルスもいるよ

三笠市立博物館は、この化石展示室以外にも、「炭鉱の街」三笠市の郷土資料を展示したフロアがあるほか、野生動物や林業に関する資料を展示した分館、地層や炭鉱遺跡などが見学できる野外のサイクリングロードなどなど、見どころが満載。

今回は別の取材も兼ねての訪問だったので、化石の展示だけでタイムオーバーとなってしまいましたが、次に訪れた時にはぜひ、いろいろまわりたいと思います!

唐沢先生、ありがとうございました!


***

そうそう。博物館を出て市街地を歩く際は、ぜひ足元にご注意を。
アンモナイト図鑑があったり、エゾミカサリュウ(発見当初の想像図)がアンモナイトに足をかけてカッコつけているマンホールがあったりします。
見つけたらちょっとテンション上がりますヨ…!

歩道のアンモナイト図鑑
エゾミカサリュウとアンモナイトの絵柄のマンホール
頭上にもご注意を


【お知らせ】
三笠市立博物館では、令和5年度特別展『復元―蘇る、北海道の古生物たち』が開催中。10月9日(月)まで。

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