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人間の「孤独」を考え続ける(ロボット研究者・吉藤オリィ)|わたしの20代|ひととき創刊20周年特別企画

旅の月刊誌「ひととき」の創刊20周年を記念した本企画わたしの20代。各界の第一線で活躍されている方に今日に至る人生の礎をかたち作った「20代」のことを伺いました。(ひととき2022年4月号より)

 10代前半は不登校で、苦しい日々でしたし、体が弱く30歳まで生きられないと思っていました。その中で、17歳のときに自分は「どうやったら、孤独を解消できるか」に残りの命を使おうと決めました。目が悪ければメガネで視力の補完ができますが、コミュ力がない場合の福祉スキルや機器は、存在しない。一度はAIを研究しようと高専に入りましたが、1年で目指すことと違うとわかり、大学に入って、改めて研究しようと思いました。

 早稲田大学の1年目は、コミュ障の私にはとても辛かった。雑談の価値や友情を理解しようとサークルに片っ端から顔を出して、毎日、新入生歓迎会。社交ダンス部に入ったこともあります。でも、うまくいかなかった。学業のほうでも、僕がやりたい「外出できない人が社会に参加するために動かすロボット」の価値は理解されませんでした。入りたい研究室もなく、ならば、自分で「オリィ研究室」を立ち上げようと、大学のごみ捨て場からモーターを拾ってきて、自宅でロボットを作り始めました。奨学金も全部開発費につぎ込んでいたので、お金がなくて、20歳の誕生日はひとり作業をしながら、好きなツナマヨおにぎりを食べていた記憶があります(笑)。

 そうして生まれたのが、外出困難者がパイロットとして操作することで、その人の分身となり「離れていても学校に通える」など、社会参加できるロボット「OriHimeオリヒメ」です。でも、使ってくれる人がいないと始まらない。結果的に早稲田のものづくりコンテストで優勝し、先生に医療機関を紹介してもらい、使ってくれる患者さんを探しました。少しずつ全国に協力者が増えました。次に考えたのは、働ける方法です。遠隔操作されるOriHimeたちが接客をする「分身ロボットカフェ」が出来上がりました。

 私はいま34歳です。繰り返しになりますが、17歳で残りの人生を孤独の解消に捧げると決めたあと、「OriHime」や車椅子ユーザーのための車椅子アプリ「WheeLogウィーログ!」を開発してきました。これからも、誰かの希望に火を灯したい、そう考えています。

談話構成=ペリー荻野

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自身の悩みは他人を救う鍵でもある。孤独を考え抜いた20代

吉藤よしふじオリィ
ロボット研究者、オリィ研究所代表取締役。1987年、奈良県生まれ。小・中学校で不登校を経験、高校で電動車椅子の新機構の開発を行い、文部科学大臣賞や科学大会Intel ISEFにてGrand Award 3rdを受賞。自身の体験から「孤独を解消する」ことを目的に、分身ロボット「OriHime」を開発し、フォーブス誌「30Under 30 2016 ASIA」に選ばれる。

出典:ひととき2022年4月号

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