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「ひととき」の特集紹介

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旅の月刊誌「ひととき」の特集の一部をお読みいただけます。
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#京都

社会学者・中井治郎さんが見つめる観光都市「京都」の今昔|「そうだ 京都、行こう。」の30年

【ポスター ’96 冬】 【ポスター ’05 春】 【ポスター ’12 夏】  京都の歴史を、観光都市の側面から振り返ると、この街が初めて「伝統」を意識したのは、「都」を江戸に譲った時だったのではないかと思います。政の中心を江戸、商の中心を大坂が担う中、京都が拠り所にしたのは天皇を擁していること、すなわち「伝統」でした。よそから訪れる人に向け、いかにこの伝統をプレゼンしていくかを考える過程で、京都の観光文化は洗練されていったのでしょう。  明治の時代になり、天皇も京都

常盤貴子さんと桜色の京歩き|「そうだ 京都、行こう。」の30年

 京都を舞台とする数々の作品出演はじめ、昨今は京都府文化観光大使としても、古都の魅力発信に貢献する俳優の常盤貴子さん。京都好きは10代の頃からで、デビュー以来、わずかな時間を見つけては新幹線に飛び乗っていた、という筋金入り。 「冬の京都の、キーンと冴えた空気感も好きですが、ふらっと来たくなるのは、やっぱり春かな。あのCMの名コピーに何度、誘われて来たことか(笑)。ね? お誘いいただいているのならば……って、気分になるでしょ?」 【ポスター’10 春】  そんな常盤さんと

【京都】狂言師・茂山逸平さんらと“口福の涼味”

 和菓子はもとより、祇園文化も牽引する老舗「鍵善良房」の今西善也さん、旧山陰街道筋、人気の餅菓子に加え、夏場はかき氷も行列必至、「中村軒」の中村亮太さん、そして茂山逸平さんの3人が、これまた、予約の取れない鮨割烹「なか一」須原健太さんのお店へ集合。日ごろから「よく集まっては、ほぼ役に立たないことばかり喋る」という京男4人、逸平さん以外は、全員が美味しいものを拵え供する食のプロたち。この時季のスペシャリテから、名品誕生の裏話、京都人気質まで、とっておきの、夏の旨いもん話をお楽し

【京都】狂言師・茂山逸平さんに訊く「夏しごと、土用干し」

 7月末から8月前半にかけて、暑さもピークを迎える夏の土用に衣類や書物を陰干しして湿気を飛ばし、カビなどを防ぐメンテナンスは、以前は普通の家でもよく見かけた夏の風物詩的作業であった。  空調も整い「土用干し」と言えば梅干しくらいしか思い浮かばない昨今。しかし狂言の茂山家では、この時期、若手役者が集まって、のべ10日間ほど、「麻装束の糊づけ」と「面の虫干し」を行うのが恒例。その作業風景を逸平さんの案内で覗かせていただいた。  能、狂言の家では、面はもとより、装束や小道具類も

【東天王 岡﨑神社】おみくじも提灯も卯づくし「狛うさぎ」|京都 動物アートをめぐる旅

「京都は歴史があるだけでなく、同時に新しいものを受け入れる自由な気風がある。そこがこの街の底力だと思います」  伝統と現代を掛け合わせる竹笹堂*のセンスに心酔した様子の金子さんと訪れたのは、平安神宮近くの岡﨑神社。平安遷都に際して王城鎮護のため、都の東(卯の方位)に建立されたことから東天王とも称されている。また、かつてこの地域一帯にノウサギが多くいたため、兎は氏神の使いと伝えられている。その境内には、昭和時代の提げ灯籠などとともに、平成と令和に建立された狛犬ならぬ「狛うさぎ

風船みたいなぷっくり象(養源院・俵屋宗達『白象図』)|京都 動物アートをめぐる旅

「涅槃図には動物たちがたくさん描かれているでしょ。お釈迦様の死を動物たちが泣いて悲しんでいる絵。とくに象は、大きな体をよじるようにして、おいおい泣いている。あれを見るとすごくきゅんとしてしまうんです」  京都に向かう新幹線の中でそんな話をしてくれた金子信久さん。動物を探しながらの京都美術散歩のトップバッターは、洛東にある養源院だった。1594(文禄3)年、豊臣秀吉の側室・淀殿が父・浅井長政の追善のために建立した寺である。 「ここには、俵屋宗達が描いた素晴らしい白象がいるん

京都――タイルと建築100年の物語【紀行2:さらさ西陣・築地・1928ビル】

和製マジョリカタイル貼りの 銭湯をリノベーション「さらさ西陣」「朝風呂気分ですね」(中村さん)  木の扉を開けてお邪魔したのは、北区紫野にある「さらさ西陣」。木造2階建て、築80年の銭湯・旧藤森温泉をリノベーションし、2000(平成12)年にオープンしたカフェである。建物は国の登録有形文化財になっている。天井の湯気抜きから差し込む日差しの下で、中村さんが大きく伸びをした。 時代を越えて愛される空間  曲線を描いた唐破風を頂いた外観とは一変。格天井の元脱衣場の向こうに現れ

教えて!京都のタイルと建築の話(中村裕太さん×倉方俊輔さん)

[Q1]京都が近代建築の宝庫なのはどうして?倉方 平安京が築かれた794(延暦13)年から、東京に遷都される1869(明治2)年まで、京都は日本の政治・文化の中心地でした。ところが天皇が東京に居を移すと、京都の人口は激減。経済も低迷期を迎えます。しかし、1880年代からの窯業や繊維業をはじめとした近代産業の振興によって、京都は近代都市として再生への道をたどっていくのです。  1890(明治23)年には琵琶湖疏水*が完成し、その5年後には日本初の路面電車が街を走るようになりま

京都が生んだ、伝説の「泰山タイル」を受け継ぐ人(池田泰佑さん)

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デヴィッド・ボウイが涙した正伝寺|旅人=松重豊さん(俳優)

凛とした空間、清々しい空気——。白砂の上に配された石組や苔だけの禅の庭は、どこまでも簡素でありながら、わたしたちの心の裡に静けさをもたらす不思議な力があるようです。でも、それはいったいなぜなのでしょう? そのひみつに近づくため、新しき年の初め、俳優の松重豊さんと、京都・禅の庭を巡る旅に出かけました。(ひととき2022年1月号特集「松重豊さんと旅する 京都・禅の庭」より一部を抜粋してお届けします) 松重 豊(まつしげ・ゆたか) 俳優。1963年、福岡県出身。大学卒業と同時に蜷

千宗室さんと歩く「僕の寺町」

裏千家家元の千宗室さんにとって「寺町」は子どもの頃から馴染み深いエリアで、お忍びで通うお気に入りの店がたくさん。千さんの案内で、魅力ある京の名店を訪ねます。(ひととき2021年1月号特集「上ル下ル、京さんぽ」より一部を抜粋してお届けします)  10年来、本誌の巻頭エッセイを執筆中の千宗室さんは、京都の路地を気の向くままに歩くことが習いとなっている。〝長歩き〟と呼んで、折々に出会うものや人に興味津々。小路の魅力や京都の本質を綴ってきた。なかでも子どもの頃から通い慣れて愛着が深

【庭の京都】紅葉の余韻 綿矢りさ(作家)

ひととき11月号の特集「古都もみじ 仏像の奈良、庭の京都」より、作家の綿矢りささんにお寄せいただいた京都の紅葉にまつわるエッセイを転載します。本誌では、思わず息をのむような臨場感ある美しい紅葉のグラビアが満載です。ぜひ、この機会にお求めください。  毎年、秋になると京都のタクシー運転手さんと、ある会話をよく交わす。 「今年は、いつぐらいから紅葉しますかね」 「11月26日くらいが見ごろのピークちゃいますか。○○なんかはもう紅葉始まっとったから、月末まで保(も)たんかもし