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「ひととき」の特集紹介

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旅の月刊誌「ひととき」の特集の一部をお読みいただけます。
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「奇想の絵師」の才能が開花した地へ|南紀と長沢芦雪(和歌山県串本町)

串本町 本州最南端へ 江戸時代後期の天明の世、ひとりの絵師が本拠地である京都をあとにして紀伊半島の南部へと旅に出た。その名を長沢芦雪。写生を重視した円山派の祖、円山応挙の門弟である。  旅の目的は届け物だった。本州最南端の地、串本町の無量寺は地震による大津波で流失する悲運に遭ったが、およそ80年後に当時の住職だった愚海和尚が再建した。愚海は応挙と長年の親交があった。ずっと再建に奮闘する愚海に応挙はつねづね言っていた。 「あなたの寺院が完成したときは、前途を祝い必ずわたしの

【富士山世界文化遺産登録10周年記念】令和、富士山景(写真・橋向 真)

日本人の富士への思い解説=神崎宣武(民俗学者) 国土の約7割を山地が占める日本には、どの土地にも“姿形のよい山”があります。古来、人々はそうした山容が優れた山に神が宿ると信じ、御山〈ミヤマ、オヤマ〉と呼び、敬ってきました。富士山は、そうした御山を象徴する存在といえるでしょう。  一方で、噴火を繰り返す富士山を畏れ、遠くから「遥拝〈ようはい〉」してきた。周辺に多くの神社を建てたのはそのためです。そして噴火活動が沈静化した平安時代[794年~1185年]後期以降は、修験者の道

日本三名山のひとつ、白山の麓で暮らす写真家の木村芳文さんが記録した「白山、手取川のひととせ」

春桜がほころぶ季節、白山の雪解け水は手取川へと注ぎこみます。川が運ぶのは水の恵みにとどまりません。水とともに運びこまれる大量の土砂こそが、扇状地をつくり、豊かな土壌を育みます。一般に扇状地は水に乏しいと考えられていますが、雪解け水で潤う手取川扇状地は豊かな水田地帯。水に浮かぶ小島のように見える集落は「島集落」と呼ばれています。手取川氾濫の被害を減らすため、わずかでも高い土地に家を建てる知恵です 夏清冽な水と飛び交うホタル──手取峡谷の環境の豊かさを象徴する光景です。ニッコウ

山野で見られる冬鳥(写真家・山田芳文さん)

低地や山地の林、農耕地や高原の草地、山地の河原(渓流)など、山野で見られる冬鳥は種類も特徴も多彩です。木々が葉を落とす冬は、他の季節よりも観察しやすくなります。写真家・山田芳文さんが撮影された野鳥のグラビアをお楽しみください。(ひととき2021年12月号特集「冬、野の鳥に会う」より一部抜粋してお届けします) マヒワ 【全長】約13センチ 【見られるエリア】全国 【特徴】オス(写真)の頭部と喉は黒く、全体的に黄色い(メスの色は少し淡い)。スズメよりも小さな冬鳥で、にぎやか