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旅と野球

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全国津々浦々にあるもの、それは美しい空と自然、そして野球場。誰もを魅了するスターだって、彼らに憧れるスター候補だって、諦めちゃった趣味人だって、グラウンドに立てば皆同じプレーヤー… もっと読む
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#スポーツ観戦記

俺たちは備えてきたんだ、だからくよくよするなよ。(名古屋市千種区 千代田橋緑地野球場)|旅と野球(5)

「相手に失礼じゃないか。あんなプレーをしたら」  50代と思しき鬼コーチが強い口調で、少年たちを諌める。  ここは名古屋市内の北側を流れる矢田川の河原に設けられた野球場。穏やかな陽気のもと、少年野球の試合が行われている。  見たところ練習試合のようだった。トーナメント戦のような緊迫感はない。だがユニフォームのロゴから察すると、片方のチームはまあまあ遠くから来ているようだった。手間と時間をかけている分だけ、気持ちも入っているように見えた。  対する鬼コーチのチームは、わ

過去は懐かしむもんだ。ただ、心の中にとどめとけ。(名古屋市東区 バンテリンドーム ナゴヤ)|旅と野球(2)

「@*&%$#!!!!!!!!!!!」  中日ドラゴンズの打者、宇佐見真吾が放ったサヨナラヒットで、球場内は言葉にならない大歓声ではち切れんばかりになっていた。  僕も周りと一緒になって歓声を上げながら、一瞬、すべての動きが止まる静寂があったような錯覚に陥っていた。  そんなわけない。  9回の裏。1対1の同点。相手は宿敵の読売ジャイアンツ。ドラゴンズの打線が相手投手を攻め立てて一死満塁。お盆の最中で満員の観客。  あらゆる要素が、静寂を拒否していた。今宵最大のチャ