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125 サイフの中身

スマホで決済すると

 ご多分に漏れず、マイナンバーを使ってeTAXで確定申告をずっとやっていて、さらにマイナバーカードを作って、そしてマイナポイントを得た結果、PayPayを使うようになった。すべての店で使えるわけではないが、そこそこ便利だ。
 ただし、あまりにも便利すぎるので、チャージはセブンイレブンのATMで行っている。このため、頻繁にセブンイレブンに行く。頻繁といっても週に1回ぐらいのものだが、このセブンイレブンのATMは、そもそも自分が使っている銀行口座にとっても便利なために従来から使ってきたのだけど、そこにチャージが加わった。
 もともとメインにしているのは大手の銀行だけれど、他に便利なネット銀国も使っているのである。
 すると、銀行口座から現金を引き出す、その現金のうちいくらかをPayPayにチャージする。さらにSuicaにチャージする。
 気がつけば、私はスマホで決済することが増えて、サイフを開くことが減っていた。
 とはいえ、ある程度の現金も持っていないと不便だと思ってしまう。スマホだけを持っていれば、電車に乗ってキヨスク(ニューデイズ)で買い物もできる。ただし、チャージした金額までの範囲でだ。
 果たしてこれが便利なのかどうかは、実はよくわからない。
「ポイントがつくじゃないか」と言われるけれど、ポイントがつけばいいというものでもないだろう、と思うことだってある。

アプリとカード

 たとえば、あるお店では、カードを発行していてそこにレジで現金をチャージしておくと、それで買い物ができる。もちろんポイントも貰える。さらにアトレカードであるとかDカードとかTポイントとかがあればそれもチャージできる。この段階で、何枚、カードがいるんだ、という気がしなくもなく、それをスマホアプリにしてしまう気はいまのところはないのだ。
 一方、スマホアプリ側も攻勢を強めていて、アプリから注文できたり、決済できたり、クーポンが届いたりもする。だから、専用アプリをスマホに入れて、なおかつそこに一定額をチャージして買い物で使うことが、最もお得だったりする。
 しかし、それは店によって違うのだ。セブンのアプリ、マクドナルドのアプリ、Hotto Mottoのアプリ……。
 そうなると、このスマホはいったいなんのための機械なのか、という気がしてくる。
 こうしたスマホ側の充実に加えて、サイフ側にもカードが増えていくことになる。昔から使っているクレカもあるし。そうそう、マイナカードもあるよね。
 合理的になっていくべき世界として、技術が発達していくのに、むしろ煩雑になっているんじゃないのか、とふと思う。
「昔は、サイフに現金や小銭を入れて持ち歩いていたんだよ」と言っても誰も信じない時代が来るのだろうか。
 そういえば、「幸運を呼ぶ」サイフなるものがある時期にやたら宣伝されていたものだけど、サイフに宿る幸運は、スマホには宿らないのだろうか。
「待ち受けを、御利益のある神社仏閣の出している壁紙にすればいいのです」とおっしゃる人もいるから、まあ、似たようなことはあるのかもしれない。

拝啓、鼠小僧様

 私はしばしば、両国の回向院へ行く。そこにこれまで一緒に暮らしていたペットの墓があるからだ。墓といっても共同の慰霊塔であるけれど、遺骨をそこで供養してもらっている。
 この回向院には、鼠小僧の墓というものがあって、多くの人がそこに置かれた「お前立ち」と呼ばれる白っぽい石を削って、その欠けらや粉をお守り袋(専用のものが用意されている)に入れて金運アップを願うのである。
 世の中にはこの手の浅ましいとも言えるような祈祷の仕組みがいっぱいあって、一時はパワースポットなるまるで充電してくれるところのような名称でもてはやされた。
 では、この鼠小僧様は、スマホの中にまで幸運をもたらしてくれるものだろうか? ここでお願いすれば、あなたのスマホ決済はポイント倍増とか、抽選で当たるやつがバンバン当たるとか、そういうことがあるのだろうか。
 そう。鼠小僧の生きていた時代にも、人は銭を持ち歩いていた。それを入れるものが懐だろうが布の袋だろうがブランドのサイフだろうが、人間の行動としてはそれほど変化なく、金銭を持ち歩いていた。
 それがスマホになったとしても、そこに金銭が入っていると言えるだろうか? たとえばPayPayのような仕組みは、金銭として使えるけれども、金銭ではない。だから、もはや鼠小僧様のあずかり知らぬ世界ではないだろうか。ましてポイントとか暗号通貨とかブロックチェーンまではとても面倒見きれないのではないだろうか。
 スマホに表示されたバーコードをセルフレジにかざしながら、そんなことを思ったりするのである。

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