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「人類を裏切った男~THE REAL ANTHONY FAUCI(下巻) 」② ポイント抜き出し 2/6~第9章 白人の責務ー黒人を薬物の実験台にしてきた黒歴史(後半)

 2021年11月9日に米国で発売された本書は、書店に置かれず、様々な妨害を受けながらもミリオンセラーとなり、この日本語版も販売妨害を避けるためか、当初はAmazonでは流通させず、経営科学出版からの直売のみになっているようだが、現在はAmazonで買うことができるようになっている。

 日本語版は1000ページを超えるために3巻に分けられた。

 本書はその下巻「ビル・ゲイツの正体と医療植民地プロジェクト」だ。

 極めて重要な情報が満載で、要旨を紹介して終わりでは余りにも勿体ないので、お伝えしたい内容を列記する。

今回は第9章「白人の責務ー黒人を薬物の実験台にしてきた黒歴史」。
  本文で、90ページに渡る長い章なので、前半と後半の2つに分けて投稿する。

第9章の要点は以下の通り。

・ファウチと仲間たちは効かないエイズワクチンを作り出した。
・ビル・ゲイツはファウチと強固なパートナーシップを結んだ。
・ゲイツは「貧しいアフリカを救ってやるのだ」との名目の下、ファウチと共に主にアフリカでHIVワクチンの試験を繰り返し、多くの犠牲を出す。
・ビル・ゲイツがアフリカへの支援をワクチンだけに集中したため、食料や基本的な医療設備、医薬品などの支援が行われなくなり、アフリカの健康状況は悪化した。
・ビル・ゲイツは自身への批判をかわすために、金と圧力でマスコミを支配した。


以下、抜き出し。

アフリカでのエイズワクチン

 2003年1月、ちょうどビル・ゲイツとファウチ博士がアフリカ全土で数十件のエイズワクチンの臨床試験を行っていたころ、長らくファウチ博士の聖人伝を書いてきたマイケル・スペクターの記事が『ザ・ニューヨーカー』 誌に掲載された。

 この記事は、成功すれば主に西洋諸国が利用する高価なワクチンや薬をなぜわざわざアフリカ大陸で試験しなければならないのかという、アフリカ人指導者たちの疑問の声を取り上げている。彼らは、アフリカ大陸に足を踏み入れた途端、当然のように臨床試験の安全基準を下げる製薬会社に不満を抱く。

 その年の終わりごろ、ファウチ博士のNIAIDは、最新のエイズワクチン治験が失敗に終わったと発表する。

 アンソニー・ファウチは2003年、HIVとエイズが彼の仮説どおりにはいかないことを遠回しに認めながら語った。「最善と思われたワクチン接種法がヒト免疫不全ウイルスには効果を発揮しないのです。 新しい方法を見つけなければなりません」

 2年後の2008年7月18日、ファウチ博士はそれまでで最も大規模な臨床試験の中止を公表した。それは、NIAIDがHIVワクチンの中で圧倒的に有力だとみなしていたワクチンの治験だった。

 『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「メルク製ワクチンが、感染を防止する、および感染者の血中HIV量を減少させるという2つの主要目的で満足のいく結果を出せず、本治験は延期された」と遠慮がちに報じている。

 この記事の最後のほうには、重要な事実が埋もれていた。研究者たちの説明によると、このワクチンは、効果がないだけでなく、安全監視委員会が研究を中止させるほど重大な安全上の問題があった。しかも、HIV感染を防止するどころか、実際には感染リスクを高めることを示唆するデータをメルク社とNIAIDの研究者が報告していたのだ!

 『ニューヨーク・タイムズ』紙のローレンス・K・アルトマンの記事によると、10年間も取り組んでおいて「科学者たちはHIVワクチンと免疫系がどう作用し合うのかを十分に解明できていないことに気づいた」とファウチ博士は認めた。

 これは驚くべき告白だ。HIVとエイズには関連があるという不正確な仮説に基づいたワクチンは必ず失敗すると予想したデューズバーグらの批判が正しかったと認めているようなものである。

 コーネル大学の科学者ケンドール・A・スミスは、あからさまに失敗を認めた。「1798年にエドワード・ジェンナー卿は天然痘ウイルスに効く最初のワクチンを世に出しました。それから二世紀以上がたっているにもかかわらず、我々は、うまくいったワクチンの何が功を奏したのか、実際のところよくわかっていなかったのです。結果的に、現在使用されているすべてのワクチンは経験則に基づいて開発されたものであり、ここ50年だけを見ても、免疫系がどう機能するのか、包括的に理解されていないのです」

 「もしHIVとエイズには関連があるとするファウチ博士の仮説が真実なら、ワクチン開発はすでに成功しているはずです」と製薬バイオテクノロジー業界で30年間働いた生化学者デイビット・ラズニック博士は言う。
「ファウチ博士の言うことは根本的につじつまが合いません。彼はHIV抗体が存在すればエイズと診断せよと周知徹底しています。他の病気はすべて、抗体の存在は、患者がその疾患を克服したことを意味します。ところがエイズに関しては、ファウチもギャロも、そして今ではゲイツも、抗体は死が迫っていることを示すサインだと主張するのですから。考えてもみてください。エイズワクチンの目的が抗体生産を促すことだとしたら、接種者全員がエイズと診断されればワクチンは成功ということになるのです。」

 2015年10月8日、メリーランド大学医学部のIHV(ギャロが設立したヒトウイルス研究所)は、最新のHIVワクチン候補のフェーズIを開始すると発表した。

 2020年2月3日、 ロイター通信社の エリー・スティーンヒュイセンは、NIAIDがこれまでで最も有望視していたHIVワクチンの臨床試験を突如中止したと報じた。

 1984年以来37年間にわたって繰り返された約束反故、治験の失敗、無駄になった数十億ドル、無数の人々の虐殺に少しもひるむことなく、ファウチ博士と彼の昔なじみのロバート・ギャロは、エイズワクチンといううまい話に乗って金儲けを続けている。

現代の歩兵軍団 「ウイルス学」

 かつて、スルタンやハン、ツァーやモナークやエンペラーがそうだったように、ファウチ博士の権力も、資金を提供し、武器を与え、賃金を支払い、軍団を維持し、効果的に大規模な常備軍を配置する能力によって手に入れたものだ。

 NIHだけで年間420億ドルの予算を管理し、それらを5万件超の補助金交付案件に分配し、世界中の医学研究分野で30万人以上の職を維持している。そこには、職場やキャリア、給料をファウチ博士やビル・ゲイツ、ウェルカム・トラスト(イギリス版ゲイツ財団)からのエイズマネーに頼る数千人の医師、病院経営者、保健当局職員、ウイルス研究者らが在籍し、あらゆるワクチンやファウチ博士のHIVとエイズの賛歌を擁護する傭兵軍の士官や兵士として働いている。

 ウイルス学の全領域がファウチの歩兵軍団だ。

 2020年、アフリカでのビル・ゲイツとファウチのHIVワクチン治験の多くが、突如としてコロナウイルスワクチン治験に変身した。

 パンデミックの初期、ファウチは信頼するローレンス・コーリー博士を代理人に指名し、COVID-19 Prevention Network (CoVPN、新型コロナウイルス感染症予防ネットワーク)を立ち上げた。ファウチ博士が推すワクチンが迅速承認を得られるように、最も信頼する治験責任医師を配置した。

 ファウチはこの非常に難しいミッションを、進行中のHIV治験を実質一晩でコロナウイルスワクチンのフェーズⅢに変容させることで実現した。彼の治験責任医師軍団は、隊列を乱すことなく方向転換し、新たな治験と格闘するべく足並みをそろえて進撃していった。その見事に統制の取れた隊列には、「独立した専門家」、医師、「医学倫理学者」が含まれていた。

「独立した専門家」の役どころは、FDAやCDCの委員会構成員としてぞんざいに試験された新型コロナウイルスワクチンを承認することだった。医師や「医学倫理学者」はテレビに出演し、政府が義務付ける各種新型コロナ対策(マスク、ロックダウン、ソーシャルディスタンス、ワクチン接種)を実施しやすくなるように働いた。医師らは、子どもや妊婦のワクチン接種を推奨する役割も担っていた (理性的な社会では、新型コロナウイルスの感染リスクの低さとこれらの層でのワクチン接種はリスクが高いことを考慮すれば、未試験で効果の低いワクチンを接種するのは医療過誤であり児童虐待であるとみなされる)。

 彼らは新聞の論説や科学雑誌の論文で当局の正当性を宣伝し、反対者を一様に、変人、奇人、偽医者「陰謀論者」とこき下ろした。

 新型コロナウイルスは遺伝子操作の産物であるらしいという新事実が彼の帝国の信用を失墜させそうになると、トニー・ファウチは選りすぐりのウイルス学エリート部隊に2020年2月と3月の『ネイチャー』誌および「ランセット』誌に論文を投稿させ、研究所からのウイルス流出説は「狂気じみた」 陰謀だと世界に向けて断言させた。ウイルス学カーストの一枚岩の統制と「沈黙の掟」の順守によって、新型コロナウイルスの起源論争を1年間黙らせることに見事に成功した。

 ファウチ派のウイルス学者で、NIAIDの助成を受け続けてキャリアを積んだ治験責任医師クリスチャン・アンダーセンの武勇伝は、ファウチの利益分配システムの純然たる例だ。アンダーセンは2020年1月31日午後10時30分の電子メールで、新型コロナウイルスが研究所で作製されたものであること、そしてウイルスを作り出した試験にはNIAIDの関与を示す有力な証拠が残っていることをトニー・ファウチに最初に通報した被助成者だ。

 アンダーセンは4日後、書簡を提出した。これをファウチがひそかに手直しして、流行中のコロナウイルスは研究所由来だとする疑惑を一蹴する内容としたものに、5人の著名なウイルス学者― 全員がNIAIDとウェルカム・トラストの治験責任医師ーが署名した。

HIVワクチンの影が薄くなる

 2020年3月、ビル・ゲイツは「自分の時間の大半をパンデミックに費やしているのが現状だ」と説明し、マイクロソフトの取締役を退任した。

 ゲイツはそれぞれ別の新型コロナワクチンを製造する6カ所の工場の建設に金が流れるようにし、イノビオ・ファーマシューティカルズ、アストラゼネカ、モデルナといった新型コロナワクチン開発競争の先頭集団企業の治験に資金を提供することで、自らの退陣の花道を飾った。

 ゲイツ財団も、ゲイツがウェルカム・トラストのディレクター、ジェレミー・ファーラーと共に設立した感染症流行対策イノベーション連合 (CEPI)を通じ、4億8000万ドルを「広範なワクチン候補とプラットフォーム技術」に投資した。 
 一方、トニー・ファウチは、ホワイトハウス・コロナウイルス・タスクフォースのトップの座を引き継ぐ。

 2人はタッグを組んで夕方のニュースや日曜日のトークショーに出演し、レムデシビルを宣伝した。こびへつらう番組ホストやアメリカ国民に向け、世界が人質に取られたこの危機的状況に終止符を打つには自分たちの新しいワクチンを70億人がきちんと接種するしかないと発信した。

HIVへの思い

 だが、新型コロナウイルスに熱を上げつつも、この2人はどちらも初恋相手であるエイズを忘れてはいなかった。

 オペレーション・ワープ・スピード(訳注・新型コロナウイルス感染症のワクチン、治療法、診断法 [医療対策] の開発、生産、流通の加速を目的とするアメリカ合衆国連邦政府による国家プログラム)によって開発されたワクチンの市場投入が目前に迫る2021年2月9日、トニー・ファウチは自分へのご褒美に、心躍る発表をして張り詰めた緊張を解いた。

 軽薄な従者であるメディアに、ファウチは、NIHがゲイツ財団との共同イニシアチブに合意し、新しいmRNA技術を利用したNIAIDの次世代エイズワクチン開発に2億ドルを資金提供すると語った。

 そのころ、ファウチとビル・ゲイツが保有する新型コロナワクチンにより、パートナーの製薬会社は過去最高の医療費を稼いだ。 ファイザーだけで960億ドルの新型コロナワクチンの売上を見込んでいた。

 モデルナは、ファウチ博士がジカ熱、エボラ出血熱、インフルエンザ、がん、HIVなどに応用できる新しいmRNAワクチンに言及したプレスリリースに追随した。

 2021年7月25日、ファウチはこの胸の高鳴る声明をさらに発展させ、新たに数十億ドル規模の公的資金を投入し、これまでとはまったく違うワクチンを政府主導で準備すると発表した。 NIAIDが特許権を持つmRNA技術を利用して、今後パンデミックを起こす可能性のある20のウイルスをターゲットとする計画だ。

 2021年9月2日にジョー・バイデンが650億ドルのパンデミック対策を発表し、ここでもファウチの願いはかなった。

医療植民地主義の痛ましい遺産

「白人の責務」という表現を創出したのはラドヤード・キップリングだ。 1897年に書かれた彼の詩は、アメリカやイギリスが西洋文明やキリスト教を部族民のために強いるのは道義的に必須であると熱心に説いている。

「善意の白人がアフリカ人に災難をもたらす」というテーマは、アフリカ史を学んだ人にはおなじみである。

 反植民地主義の指導者たちは、貧困とは、社会、歴史、政治、制度、技術における悪弊が複雑に絡み合って起きるものだと考えている。ほとんどの場合、試行錯誤を重ねて地域に合った小規模な取り組みを実行することで、貧困にうまく対処できる。

 ビル・ゲイツのHIVワクチン・抗ウイルス薬開発プログラムは、アフリカ全土をカバーする規模の大きさという意味で、ほぼ間違いなく最悪のものだ。アフリカの苦しみを終わらせるのだと口をそろえる帝国主義者、強欲な冒険家、詐欺師、陰謀家、ペテン師、腹黒い悪党、善意の愚か者たちによる家父長的欧米スキームの連鎖は今も続いている。

 アフリカ大陸には周期的に「自分はアフリカ人にとって何が最善かを知っている」と自信満々の社会活動家、ペテン師、征服者たちが現れる。ゲイツとファウチ博士はせいぜい、その長い行列の最後尾に加わった輩でしかない。こうしたプロジェクトは往々にして、利己的でワンパターンな価値のないものであり、結局はアフリカの人々の苦しみや痛みを増幅させるだけである。ビル・ゲイツとゲイツ財団は「欧米企業が使うトロイの木馬であり、当然ながら、収益増加が最大の目的だ。

 財団は、南の発展途上国(グローバルサウス)を、薬の廃棄場か試験場と考えているのだろう。それらは薬とは言え、危険すぎて先進国では使えないか、安全性が不明でまだ先進国には持ち込めない化学物質なのだ」

 ビル・ゲイツにとって、貧困や飢饉、干ばつや疾病といったあらゆる苦しみを癒す夢の解決策は魔法のワクチンだ。高価なワクチンを極貧や栄養失調や飲用水不足の治療薬とするのがいかにばかげているかは、1日2ドル以下で暮らしている人が30億人もいるという事実を見れば明白だ。

WHOを乗っ取ったビル・ゲイツ

 最悪なのは、ゲイツが戦略的に金を使い、自身の利己主義で歪んだ優先事項を国際支援組織に実行させてきたことだ。

 長らくWHOの最大の直接的資金提供者であるアメリカは、2018~2019年(データが公表されている最新の年)には6億420万ドルを拠出している。同じ年、BMGFは4億3130万ドルを、GAVIは3億1650万ドルを寄付している。さらにゲイツは、予防接種に関する戦略的諮問委員会(SAGE、世界保健機関の諮問グループのひとつ)、UNICEF、そして国際ロータリークラブ経由でも資金を提供しており、彼の寄付金を合計すると100億ドルを超える。

 ゲイツはWHOの非公式の最大スポンサーであり続けている。トランプ政権が2020年にWHOへの支援を全面的に打ち切る前からそうだった。

 こうした課税控除対象の寄付金10億ドルのおかげで、ゲイツはWHOの予算56億ドルおよび国際的な保健政策に対する影響力と支配権を手にし、パートナーの製薬会社が儲かるよう舵を取った。

  製薬会社はおよそ7000万ドルをWHOに寄付し、WHOが組織的にワクチンを偏向するよう足固めをしている。「私たちの優先事項は、 あなた方の優先事項でもあります」とゲイツは2011年に述べている。

 2012年、当時のWHOのマーガレット・チャン(陳馮富珍)事務局長は、「WHOの予算の多くは使途が厳格に決まっており、寄付をした者の利益に即して動くのです」と不平を漏らした。

 マギューイによれば「多くの市民団体が危惧するのは、WHOという国連機関の予算のかなりの部分が民間慈善団体から提供され、その使途を事細かに指示されるようでは、WHOの独立性が損なわれるのではないかという点です」。さらに「WHOの事実上すべての重要決定事項が最初にゲイツ財団に精査されている」とマギューイは指摘する。

 ビル・ゲイツのワクチンへの執着によって、 貧困の救済、栄養・清潔な水の供給はWHOの活動内容から除外され、代わりにワクチン接種が公衆衛生のトップ項目に躍り出た。

 2011年、WHOで講演したゲイツは、「193の全加盟国が、ワクチンを自国の保健制度の中心に据えるように」と指示した。その翌年、WHOの最高意思決定機関である世界保健総会は、ゲイツ財団が共同起草した「グローバル・ワクチン・アクション・プラン」を採択する。現在では、WHOの全予算の半分以上がワクチンにあてられている。グローバルヘルスの専門家やアフリカ当局の見解では、予防接種のみの注力で、アフリカの健康危機はより一層悪化しているという。

 ビル・ゲイツとファウチは年間数十億ドルの予算の掌握によって、WHO以外にも有力な機関を実質的に支配している。それらは、たいていの場合ファウチの援助やサポートを受けてゲイツが設立あるいは資金援助したもので、PATH、 Global Development Programなどのゲイツ財団の機関、CEPI、GAVI、ユニットエイド、 世界エイズ・結核・マラリア対策基金、 ブライトンコラボレーションなどの準政府機関、UNICEF、SAGEなどの公的機関が該当する。 その他、WHOをはじめとするグローバルヘルスパートナーシップに大きく依存するアフリカ数十カ国の政府保健機関も牛耳っている。

 23のグローバルヘルスパートナーシップで2017年の状況を分析したところ、7つが完全にゲイツからの資金に依存しており、別の9つは筆頭援助者がゲイツ財団であった。ゲイツ財団はWHOのワクチン関連の諮問委員会 SAGEを支配している。近ごろ開催された会議では、SAGEの理事会メンバー15人のうち半数がゲイツ財団と利害関係にあった。

  これらの機関のうち最も力を持つのがGAVIだ。GAVIからWHOへの資金提供額は、非国家提供者としては第2位だ。ゲイツは、提携製薬企業から貧困国へワクチンの一括売買を推進する「官民パートナーシップ」としてGAVIを立ち上げた。

 GAVIはビル・ゲイツの恐るべき能力の見本のような存在だ。名声や信頼、富を利用して主要官僚や国家元首に催眠術をかけ、ゲイツに自国の対外援助費の支配権を与えるように仕向ける。ゲイツは1999年にGAVIを設立し、7億5000万ドルをこの機関に寄付した。

 BMGFはGAVIの永世理事である。 その他の理事はすべて、ゲイツが支配または頼みにする機関―WHO、UNICEF、世界銀行- や製薬業界で占められているため、ゲイツがGAVIの意思決定に独裁的権限を持っているのと同じだ。

 しかしゲイツは、彼にとってはわずかな寄付金と(おそらく彼個人の魅力)を利用し、アメリカ政府から毎年助成される111億6000万ドルも含め、政府と民間から160億ドル以上の寄付を集めた。これはゲイツのWHOへの寄付の16倍に相当する。

 トランプ大統領は2020年に米国がWHOから脱退すると表明した際も、GAVIへの1億6000万ドルの寄付は継続した。結果的に、米国の脱退は、WHOとグローバルヘルス政策に対するゲイツの支配力強化につながった。

 さらに、財団が莫大な資金提供をしたおかげで、ビル・ゲイツはWHOの非公式の選挙で選ばれたわけではない)リーダーとなった。

 2017年にはWHOを完全に支配していたゲイツは、自らの代理人としてテドロス・アダノム・ゲブレイェソスを新事務局長に就任させる。 医学学位を持たないWHO事務局長など前例がないという反対意見や、テドロス自身の胡散臭い経歴などお構いなしだ。

 テドロスはエチオピアで、ライバル部族の大量虐殺を画策するなど極度な人権蹂躙に関与するテロ集団を率いている。テドロスはエチオピアの外務大臣時代、言論の自由を積極的に抑圧し、彼の党の政策を批判したジャーナリストたちを逮捕、収監した。

  テドロスをWHOの職に導いた最大の資質は、ゲイツへの忠誠心だった。テドロスは事務局長就任前、ゲイツが設立、資金提供し支配する2つの団体、GAVIと世界エイズ・結核・マラリア対策基金の理事で、ゲイツからの信頼の厚い理事長を務めていた。

 ビル・ゲイツが20 年初頭にファウチと結んだパートナーシップの最も明白な成果はGAVIだ。パートナーシップ契約に基づき、ファウチがNIAID研究室で新しいワクチンを作り、ファウチの息のかかった大学研究室やゲイツの出資比率が高い多国籍製薬企業に臨床試験をさせて完成させる。するとゲイツは、これらの企業が第三世界の国々で販売できるよう、サプライチェーンを構築し、斬新な財政的仕組みを創出する。

 このスキームで重要となるのがビル・ゲイツの力だ。WHOを通じ発展途上国に圧力をかけて該当ワクチンを迅速に購入させ、銀行の役割を果たすGAVIを通じて富裕国にその負債を連帯保証させる。

 かつての欧米諸国の対外援助費は、歴史あるNGOを通じ、食糧確保や経済発展の支援に投入されていた。ゲイツは、欧米諸国に圧力をかけ対外援助費をGAVIに支払わせることで、こうした「取引の流れ」をGAVIや提携製薬企業に集中させた。こうしてゲイツは富裕国の政府から対外援助金を奪い取り、その金を製薬会社に横流ししている。

 「西洋諸国は当初、WHOと国連を、一国一票という民主的制度によって任務を遂行する自由主義的イデオロギーの具現と捉えていました」と、インドの有力な人権活動家バンダナ・シバ博士は私に語った。「それをすべて、ゲイツがたったひとりで壊してしまったのです。彼はWHOを乗っ取り、製薬業界の利益向上という尊大な目的のために行使する個人的権力の道具に変えてしまいました。彼は世界中の公衆衛生インフラをひとりで破壊したのです。私たちの保健制度や食料システムを、自分の目的を満たすために私物化してしまったのです」

 ジェレミー・ロフレドとマイケル・グリーンスタインは、2020年7月の記事でこう嘆いた。「ゲイツ財団は、保健政策立案を担う国際機関をうまく私物化し、企業優先という目的を達成する手段に変貌させてしまった。こうして、グローバルサウスの人々へ有毒な製品を投げ売りし、世界の貧困層を薬の試験のモルモットとして利用している。」

人の命よりも大事な知的財産

 ワクチンにまつわるビル・ゲイツの罪の特筆すべき点は、製薬会社の知的財産権を固守する姿勢だ。

 2021年4月、特許権と企業利益に対するゲイツの堅い忠誠心のせいで、彼を支持していた主要メディアや公衆衛生機関の一枚岩についに亀裂を生じさせる結果となった。

 その月、『ニュー・リパブリック』誌のライターであるアレクサンダー・ザイチックは、 「Vaccine Monster (ワクチンモンスター)」と題した長文記事を掲載する。ビル・ゲイツがパートナーの製薬会社に入る特許権使用料を守る目的で、世界の最貧困層への新型コロナワクチン供給を積極的に阻止した様子が描かれている。

 2020年3月時点でインドやアフリカ諸国は、国民の予防接種用新型コロナワクチンが大幅に不足することを予測していた。自国の製薬会社が迅速に数億回分のジェネリックワクチンを貧困層にも手の届く価格で供給できるよう、特許権の放棄を強く求めていた。西洋諸国も、新型コロナワクチンの誕生を可能にしたのは、政府主導のイノベーション、公金からの多額の助成、規制免除、免責特権、強制的な委託契約、ライセンスの独占であり、製薬会社の寄与度は比較的低いことを認め、特許料の減免という大義名分を掲げてこの騒動に加わった。

 2020年8月には、新型コロナワクチンの特許権放棄を求める機運が世界的に大きく高まった。

 2021年3月初め、新型コロナウイルス感染症の治療薬やワクチンを誰でも安価で入手できるよう、WHO内にCITAP (新型コロナウイルス・テクノロジー・アクセス・プール)が発足した。

 2021年3月、バイデン大統領はこの動きを支持し、貧困国が確実に接種できるよう新型コロナワクチンの特許権保護を一時的に停止するよう求める。

 公平性を求めるバイデンの行動が、ビル・ゲイツを表舞台へと引っ張り出した。全世界が見つめる中、特許の完全性は、彼が提携する製薬企業のワクチンが生み出す利益の源であり、自分のグローバルヘルス戦略の必須条件なのだとゲイツは打ち明ける。

 公衆衛生が重要だと公言する彼だが、いざとなったら、特許権の保護のほうが大切というわけだ。ビル・ゲイツはWHOを完璧に支配していたため、ゲイツの反対がC-TAPの運命を決した。
民主主義や公平性がグローバルヘルス政策の基準となるべきだという大義も、ゲイツのすさまじい権力と影響力を前にしてはひとたまりもなかった。

 ビル・ゲイツはC-TAPを潰し、自らのWHO プログラム 「ACTアクセラレーター」に置き換えた。このプログラムは、業界の特許権を聖域化し、途上国のワクチンプログラムを追い出し、製薬企業や欧米援助国がワクチンシェアの争奪戦を繰り広げる慈善行為の場とした。

 ゲイツの介入は予想どおりの結果をもたらした。2021年2月現在、世界190カ国のうち130カ国ほどの貧困国の25億人がワクチンを接種できていない。

 国際保健機関の職員たちの話では、どの国の政府もアフリカに対する憂慮を表明しているのに、「世界中で管理されているワクチン全体のうち、アフリカに届けられるのはわずか2%以下で、アフリカ大陸の全住民の1.5%しかワクチン接種を終えていない」と言う(逆説的ではあるが、アフリカ諸国の新型コロナウイルス感染症による死亡率は桁違いに低い)。

 ゲイツの特許権に対する肩入れは、彼自身の経験に基づく揺るぎないものだ。 マイクロソフト創業時にオープンソース(訳注・ソフトウェアを構成するソースコードを無償で一般公開し、誰でもそのソフトウェアを使用、再配布できるようにすること)のマニアたちとの争いを繰り広げて以来、ゲイツは知的財産権を情け容赦なく独占してきた。

ビル・ゲイツとビッグファーマとの絆が深まったのは、1990年代、両者がアフリカの悲惨なエイズ危機の際に手を取り合って、ネルソン・マンデラに勝利したことがきっかけだ。世界的に蔓延していたエイズの爆心地だった南アフリカでは、成人の5人に1人がHIVに感染していた。 第三世界では、世界の貧困層が高価なエイズ薬を入手できるよう、ジェネリック医薬品の製造許可を求める運動が起こり、マンデラはその英雄的存在だった。

 1997年12月、マンデラ政権は、ほとんどのアフリカ人が入手できなかったジェネリックのエイズ薬を、保健当局が輸入、製造、購入できるよう定めた法律を制定した。欧米の製薬会社はアフリカ人でエイズ薬試験を行えることに満足していたが、完成品は決してアフリカ人の手の届かない価格に設定されていた。
 例えば、グラクソ社のアジドチミジンを1年間服用すると、1万ドルかかる。ゲイツはマンデラに宣戦布告した。つまり、貧困国がジェネリックエイズ薬を入手できないように、3社の多国籍製薬企業が南アフリカを提訴した訴訟を支援し、マンデラのジェネリック医薬品政策に異を唱えた。

 結局、ゲイツと製薬会社がこの訴訟に勝利した。ゲイツはTRIPS協定を執念深く支援することにより、医薬特許を永続的に完全防備できるようにした。

 ザイチックによると、ゲイツは特許戦略や市場独占に執着するあまり、貧困国に対するパンデミックの影響や医薬品入手における構造的不平等に対し、それまで口にしていた懸念などはいとも簡単になかったことにしてしまう。

「世界規模で見たとき、新型コロナウイルス感染症によって、医薬品の流通や入手には根深い構造的な不平等が存在することが露呈した。その根本要因は、人命を犠牲にして業界の利益を維持する知的所有権だ」

黒人を先にワクチン接種させた結果

 2021年2月の記者会見でフランシス・コリンズは、NIHの新世代HIVワクチンを「富裕国の国民だけでなく、あらゆる地域のすべての人が確実に治療を受けられるよう」、アフリカ人とアフリカ系アメリカ人を対象にすると発表した。

 ゲイツ・NIH連合はこの類の同情を見せるのが好きだ。 メリンダ・ゲイツは2020年4月10日のCNNで、弱い立場に置かれたアフリカ人たちが心配で夜も眠れない」と悲嘆にくれた。彼女は2020年6月の『タイム』誌に、アメリカの新型コロナワクチン接種は黒人が最優先されるべきだと語った。黒人に一番にワクチンを投与すべきだという意見 と、多くの黒人がこの恩恵に抗うだろうという当局の不安 ―は、パンデミック期間中に主要保健機関が何度も声明に盛り込んでいたテーマである。

 新型コロナウイルス感染症に至るまでの10件以上のパンデミック発生時にはたいてい、黒人はワクチンを忌避した。パンデミックが始まると、黒人コミュニティの中でワクチンをためらう人が増えないように、HHSは黒人の牧師や歴史的な黒人大学の学部長、公民権運動の指導者、ハンク・アーロンといったスポーツ選手らを登用する。 アメリカとアフリカに在住する黒人に向けた記者会見をセッティングし、有名人のワクチン接種の模様を大々的に報じ、大金をつぎ込んで政府広報キャンペーンを展開した。

 2020年12月、ファウチは、「今は懐疑主義をひとまず置いておくべきです」と黒人コミュニティの抵抗を叱責した。そして、ワクチンの安全性を証明する研究結果を一切示すことなく、こう語った。
「我が朋友であるアフリカ人のみなさんにまずお伝えしたいのが、あなた方が受けようとしているワクチンは、アフリカ系アメリカ人の女性が開発したものです。これは事実です」

 シシリー・タイソン、マービン・ハグラー、ラッパーのアール・シモンズ(芸名はDMX)が新型コロナワクチン接種直後に亡くなると、医学界とCDCは大慌てで、ワクチン関連死ではないとアフリカ系アメリカ人コミュニティに断言する。ソーシャルメディアや主要地方放送局は、ワクチンの関与を示唆する内容を検閲し、削除した。ゲイツ出資の「事実調査(ファクトチェック)機関が、あらゆる因果関係を「虚偽だと暴いた」。 

 私の知人であるホームラン王のハンク・アーロンが、アトランタのモアハウス大学(訳注・歴史的な黒人大学のひとつ)で記者たちを招いて行われたワクチン接種の17日後に亡くなったとき、私は、彼の死は接種後に多発している高齢者死亡事例のひとつだと書いた (ワクチンがアーロンの死因だとは一言も言っていない)。

『ニューヨーク・タイムズ』紙、CNN、ABC、NBC、『インサイド・エディション』(訳注・ニュース番組)、その他多くの報道関係者が世界中から詰めかけ、私の記事は「ワクチンに関する誤情報」だと私を激しく非難し、フルトン郡検死官がアーロンの死は「ワクチンとは無関係」と断定したと報じた。私がフルトン郡検死官に電話したところ、彼はハンク・アーロンの遺体は見ておらず、家族は検死解剖をせずに埋葬したと教えてくれた。私がこの恥ずべき事実を公表しても、訂正報道を行った機関は皆無だった。

 連邦法では、臨床試験中に――拡大解釈をすると、緊急使用中の製品において――ワクチン接種後に起こった傷病や死亡はすべて、反証のない限り、ワクチンを原因とみなすと定められている。にもかかわらず、CDCは極めて楽観的な公式見解を出した。2021年8月現在、2021年8月20日までにVAERSに報告されたワクチン接種後の死亡事例1万3000件あまりのうち、ワクチン関連死はゼロ、 1件たりともないという。

 アメリカで尋常ではない数の黒人有名人たちがワクチン接種後に亡くなっているのと同じころ、アフリカでもびっくりするような数の反ワクチン派の政治指導者たちが息を引き取ろうとしていた。アフリカの著名な黒人首脳や大臣、ビル・ゲイツやCOVAX(訳注・新型コロナワクチンへの公平なアクセスを目的としたグローバルな取り組みで、GAVI、WHO、CEPIなどが主導する)のやり方に反対していた医師たちの早すぎる突然死が急増し、彼らは口封じのために殺されたのではないかという陰謀論が巻き起こった。

 インターネットではハイチの大統領ジョブネル・モイーズの暗殺に絡んで様々な憶測が最高潮に達した。アメリカの情報機関と関係を持つコロンビアの精鋭の傭兵団にハイチ大統領が殺害されたというのだ。 モイーズはWHOのワクチンプログラムに声高に反対していた。

 WHOのワクチン政策を批判して突然亡くなったアフリカ人指導者も多い。 タンザニアの大統領だったジョン・マグフリ (2021年3月17日)、コートジボワールの首相だったハメド・バカヨコ(2021年3月10日)、ブルンジの大統領だったピエール・ンクルンジザ (2020年1月8日)、人望と影響力のあった反ワクチン派の前マダガスカル大統領ディディエ・ラツィラカ(2021年3月28日)。

 ケニアで愛されたケニアカトリック医師協会 (Kenya Catholic Doctors Association) 会長だったスティーブン・カラニヤ医師は、2014年にWHOの不妊化プログラムを暴露し、2020年にはWHOの新型コロナワクチン接種を批判した人物だが、その彼も死亡した(2021年4月20日) 死因は新型コロナウイルス感染症と報じられている。

 また、選挙で選ばれたアフリカ人指導者の新型コロナウイルスによる死亡率(1.33%)は、同世代・同性の一般の人々の死亡率の実に7倍だという。
 私は、こうした人たちが殺されたという説を支持するつもりも、そのような憶測をあっさりと退けるつもりもない。ただ、欧米の軍部や情報機関と結託した1兆ドル産業を脅かす影響力を持つ人物には、リスクはつきものと考えるのが筋だろう。

 1961年1月17日にコンゴの民族解放運動家パトリス・ルムンバが暗殺された。

 後に、CIAとベルギーの情報機関が結託してルムンバを殺害していたことが判明する (2002年、ベルギーは暗殺への関与を公式に謝罪した)。毒入り歯磨き粉を使ってルムンバ殺害を企てたCIAのアレン・ウェルシュ・ダレス長官は、私の伯父がルムンバを敬愛していることを知っていた。ダレスは、このカリスマ的指導者を消すCIAの計画をジョン・F・ケネディに邪魔されるのを恐れていた。CIAにはこの他にも、1966年にガーナ政府を、1982年にチャド政府をそれぞれ転覆させる悪事を働いた。

 1970年代の議会調査によってCIAが何年もかけて行っていた実験が白日の下にさらされた。足のつかない毒物やひそかに殺害のできる道具を開発していたのだ。NIHの脳外科医メイトランド・ボールドウィンらCIAの科学者たちは、MKウルトラ計画(訳注・CIAの科学技術本部がタビストック人間関係研究所と極秘裏に実施していた洗脳実験のコードネーム)の責任者シドニー・ゴットリーブのもと、フォート・デトリックで開発に従事し、 高周波光線、病原微生物、消散化学物質など、自然死に似た症状を呈するように設計された魔の暗殺兵器の数々を作り上げた。

食糧や衛生よりもワクチンを優先する

 製薬会社の広告費やゲイツ財団の金が懐に入るメディアは、ビル・ゲイツを「公衆衛生のエキスパート」と見なす。

 だが、ゲイツがファウチをシアトルの邸宅に呼び出した6年後、『ロサンゼルス・タイムズ』紙の調査報道記者であるチャールズ・ピラーとダグ・スミスの2人は、アフリカでのゲイツによる医療干渉の壊滅的影響を「白人の責務」という語句を用いて描写した。このタイトルは、黒人を疾病や飢饉から救済するというゲイツの取り組みが、植民地支配というおなじみの欲求をうまくベールに包んでいることを示唆する。

 ピラーとスミスは、ゲイツの所業を詳述する。世界からアフリカに送られる医療費を、試験されていない高価な最先端ワクチンへと組織的に転用するせいで、アフリカ中の乳児が命を落としているのだ。

 ビル・ゲイツがワクチン至上主義をとったことで、多くの命を救える安価で実用的な医療機器の調達や基本となる栄養の供給に向けられていた海外からの援助の流れが止まってしまった。

 ビル・ゲイツの治療計画では、ジェネリックのマラリア治療薬や蚊帳は重要視されていない。 抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンは投与1回につき1セントでマラリアに関連した死亡の半数を予防できる。 1枚4ドルの蚊帳は子どものマラリアを予防できる。同紙は、出産後の母親に3ドルの食べ物と従来の薬を提供すれば、年間500万人の子どもの死を防げると試算する。

 世界エイズ・結核・マラリア対策基金やGAVIを含めたゲイツのプログラムは、公衆衛生にとっで結果的にマイナスになっている。実際、『ロサンゼルス・タイムズ』紙は、ゲイツの慈善行為に投入された金額と子どもの健康状態は逆相関関係にあることを見出しており、彼の支援金を多く受け取った国ほど、保健分野での成果が悪くなっているという。

 『ロサンゼルス・タイムズ』紙は、サハラ以南のアフリカ6カ国の指導者たちの声を引用する。同地では、医療従事者が危機的に不足している。医師や看護師が実入りのいい仕事を追い求めるからだ。HIV感染者やエイズ患者に抗レトロウイルス薬による治療を行えば、多額の給与が得られる。その給与は、ビル・ゲイツのエイズ・結核・マラリア対策基金から支払われる。
「結果的に医療従事者が不足し、エイズを生き延びた子どもの多くが、新生児敗血症、下痢、窒息などのありふれた病気で死亡しています」

 同紙によると、ルワンダでは、ゲイツの支援を受けた看護師は月に175~200ドルを稼ぐが、現地診療所の看護師の月給は50~100ドルほどだ。

「ロサンゼルス・タイムズ』紙は、病気をワクチンで予防することにゲイツが執着しているため、栄養、輸送、衛生、経済の発展への援助の流れが相対的に縮小し、公衆衛生全体にマイナスの影響を及ぼしていると結論づけた。

 このような広範囲にわたる深刻な健康被害にゲイツ財団がどう対処するかと言えば、ワクチンが解決策とならない恐れのある問題について語ることをアフリカ人たちに禁じているのだ。記事によれば、「ゲイツが支援するワクチン接種プログラムでは、ワクチンで予防できない病気は無視し、患者がその話題に触れようとしたときでも応じないよう、医療提供者に指導している。 」

 WHO、GAVI、世界エイズ・結核・マラリア対策基金は、ゲイツの虚栄に満ちた優先事項を強要する実行部隊として効果的に機能している。

 自分のワクチンが「数百万人の命を救った」とするゲイツの主張は、何の証拠も検証も説明責任も伴わない、ただの言葉遊びにすぎない。ゲイツの組織で重要な意思決定や助言を行うのは、当然ながら、彼の医薬品至上主義を共有する製薬業界のかつての大御所や調整役といった面々だ。

 ファウチ博士と同様にゲイツも、期待させるだけさせておいて責任は取らず、自分の構想が患者数や公衆衛生、生活の質に有益な効果をもたらしたという説得力のある証拠も示さない。

 それどころか、ビル・ゲイツの医療介入の効果を多面的に評価すると、介入そのものが受益者にとっては災難であることが露呈している。2017年、デンマーク政府は、WHOの旗艦事業であるDTPワクチン接種(世界で最も普及している予防接種)を受けたアフリカ人児童に健康面の転帰調査を実施した。すると、ワクチンを接種した女児たちの死亡率は、非接種の女児たちの10倍だったのだ。

 2000年、ゲイツ財団はメルク社と提携し、1億ドルの試験的プロジェクトをボツワナで立ち上げた。ワクチン、特許つきの抗ウイルス薬、予防措置といった集団治療がアフリカのエイズ撲滅にどのような効果を発揮するかを見るためだ。

 ビル・ゲイツの思惑に反し悲惨な失敗に終わったこのプロジェクトは、高価な薬への彼の固執がアフリカ人の命を奪っていることを示す語り草となった。HIV感染率を少しも低減できなかったばかりか、2005年にはHIVが成人の全人口の4分の1にまで広がってしまったのだ。

 トニー・ファウチの恐怖の店で売られている命取りの抗ウイルス薬やワクチンは、ボツワナの母子に恐ろしい犠牲を強いた。 妊婦の死亡件数は4倍近くになり、子どもの死亡率も劇的に増加した。

 医療経済学者ディーン・ジェームソンは、ゲイツ財団のエイズ薬に対する偏狭な執着がボツワナ最高峰の医療専門家をプライマリ・ケアや小児保健から遠ざけてしまったことで、この国の死亡や病気が増加した可能性は否めないとしている。「エイズに携わることで、給料が2倍から3倍になるのです」とジェームソンは言う。

 ゲイツ財団は世界エイズ・結核・マラリア対策基金を通じてサハラ以南のアフリカ諸国に数十億ドルを投入し、390万人のエイズ及び結核患者の治療のためのワクチンと抗ウイルス薬を援助した。しかし、モレコという名のエイズ患者は、「ロサンゼルス・タイムズ』紙に「私たちが必要としているもの、つまり食糧は、診療所にはありません」と語った。

 クィーン・エリザベスⅡ病院の看護師でモレコに薬を投与したマジュビレ・マチベリは、同紙の取材に対し、患者の5人に4人が、1日3食にありつけないと失望に涙しながら、「その人たちのほとんどが、飢えで亡くなります」と語った。

現地主導の医療制度への嫌悪感

 デイビッド・レッグ博士がニュースサイト『グレイゾーン』で説明しているように、ゲイツは「銀の弾丸(訳注・原文 silver bullet 吸血鬼をも倒せるという西洋信仰に由来し、特効薬、確実な問題解決方法の意味で用いる)を探し求めているという意味で、グローバルヘルス問題を機械論的観点から見ています。彼が支援するのは、特効薬に大別されるものばかりです。(中略)つまり、健康状態を左右する社会的因子への対応や医療制度の構築といった、世界保健総会が割り出した主要課題には取り組んでいないのです」。

 トロント大学の公衆衛生学教授、アン・エマニュエル・ビルンは2005年の著作で、ゲイツ財団は「健康というものを、経済や社会、政治の状況とは無縁の、技術的介入の産物であると狭義に「解釈している」と述べている。

 ビル・ゲイツは、現地の指導者や制度、才能の育成の重要性に鈍感なようだ。ゲイツの支援パターンは、権力者がアフリカの外から「采配を振るう」 植民地支配的構造をより強固にしている。

 2009年のゲイツ財団のグローバルヘルスに関する支出を調査したイギリスの公衆衛生政策専門家デイビッド・マッコイによると、BMGFが非政府組織や営利目的型組織に助成した659件のうち、560件の助成先はアメリカを中心とした富裕国の組織であった。

「入手可能な最新のデータである2006年の数値は、アフリカにおけるGAVIの資金援助と小児死亡率との逆説的関係を示している。全体的に、1人あたりのGAVI援助額が平均値より低い国では、小児死亡率は改善傾向だ。平均よりも援助額の多かった7カ国では、 小児死亡率は悪化していた」

マスコミの牙を抜く

新型コロナウイルス時代のあからさまな検閲以前にも、アメリカのメディアはゲイツの慈善事業に関し、卑屈な追従と誇大な称賛との狭間で報道を行っていた。

 これは決して偶発的なものではない。2006年にはすでに、製薬企業からの広告収入(年間約4億ドル)が津波のように押し寄せ、ワクチン反対論の大半を主要メディアから押し流してしまっていた。広告費は、2020年には9億3000万ドルに膨れ上がった。

 ゲイツは『ロサンゼルス・タイムズ』紙の酷評を受け、独立系を標榜するメディアを精力的に弾圧した。経営難の報道機関には抗えない助成金を使って懐柔したのだ。コロンビア・ジャーナリズム・レビューのティム・シュワブによる2020年8月の暴露記事には、ゲイツが少なくとも2億5000万ドルの助成金をメディアにばら撒いた様子が記されている。

 さらに、ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、ガーディアン・メディア・グループの「グローバル開発」部門全体を金銭的に支援している。おそらくこの抜かりない投資のおかげで、ゲイツ夫妻は、2017年2月14日の同紙トップ記事「1万2000人の命を救ったビルとメリンダのゲイツ夫妻ー2人が次に解決を目指す課題とは」をもぎ取ったのだろう。

 ゲイツ財団は、ゲイツの世界的野望をサポートすべく、数百万ドルを費やし、ジャーナリズム論の研修や効果的なメディア記事の作成法の研究を行っている。一例を挙げると、ゲイツは2015年から2019年までに合計150万ドル近くを調査報道センターに助成しているが、おそらくその目的は「調査報道」をさせないことである。

「 シアトル・タイムズ』紙に言わせれば、「ゲイツが資金援助したプログラムで指導を受けた専門家によるコラムが『ニューヨーク・タイムズ』紙から『ハフポスト』に至るまであらゆるメディアに登場し、 ポータルサイトはジャーナリズムと情報操作の境界を曖昧にしている」という。

 ゲイツ財団はシアトルの本部で頻繁に「戦略的メディアパートナー」会議を開催している。2013年の会議には、ニューヨーク・タイムズ・カンパニー、ガーディアン・メディア・グループ、NBC、NPR、シアトル・タイムズ・カンパニーの代表者が一堂に会した。 シアトルを拠点とする記者、トム・ポールソンの記事によると、この会合の目的は、世界規模の援助や開発に関し、浪費や腐敗の話ではなく、良いニュースを強調することでマスコミ報道の「語り口を改善」することだった。

 その後『ネイション』誌に掲載された記事では、ビル・ゲイツが新型コロナウイルス危機で棚ぼた式に儲かる複数の企業に投資しており、篤志家グループや有力慈善団体の幹部らも、自らの私腹を肥やせる仕組みには批判しなかったことが報じられている。ゲイツの手腕や復讐の噂を恐れる有力慈善団体は、利他的行為を徐々に不当利益行為へと変化させていくゲイツのやり方に口を閉ざしている。彼らはこの「沈黙の掟」 を 「Bill Chill (ビルの恐怖)」と呼ぶ。

 ビル・ゲイツは、ポインター学院と国際ファクトチェックネットワーク (IFCN、各国のファタトチェック団体の連合組織)にも多額の戦略的投資を行ってきた。これらの機関は律儀にも、ゲイツに批判的と思われる公式声明を真偽にかかわらず、片っ端から「誤りを暴いて」いる。

 ジェフ・ベゾスの「ワシントン・ポスト』紙は、ゲイツを「科学に裏付けられた解決策の推進者」と呼ぶ。

 ビル・ゲイツが大学を、ましてや医学部を卒業していない事実を無視し、主要メディアはそろいもそろって「公衆衛生のエキスパート」というBBCのゲイツ評をオウムのように繰り返す。 そして主要メディアは、ロックダウンやマスクやワクチンといったゲイツの利己的助言になぜ世界中が従わなければならないのかと疑問を投げかける人たちをあざ笑う。

 新型コロナウイルスとロックダウンがアメリカに深刻な影響を与えていた2020年4月だけで、ゲイツとファウチはタッグを組んでCNN、CNBC、FOX、PBS、BBC、CBS、MSNBCのニュース番組の他、『ザ・デイリー・ショー』、『エレンの部屋』に登場し、ロックダウンやワクチンに関する我田引水のメッセージを盤石なものにした。報道サイドは誰ひとりとして、自分たちのテレビネットワークを通じてゲイツが旗振りをするロックダウンによって彼の富が12カ月間で220億ドル増えた事実を伝えはしなかった。

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