現在の少子化問題は75年前から始まっていた〜社会の発展および中絶合法化による出生数低下〜

少子化は20年・30年前から騒がれているが、
もっと前から今日における少子化の兆しがあったと思える。
出生数や人口の推移を調べて、少子化が問題となった背景や理由を私なりに分析してみた。

そもそも人口というのは、下記の流れで増減する。言うなれば、構造的な変化を伴って増減する。
①:多産多死→②:多産少死→③:少産少死→④:少産多死
具体的に説明すると
①:どの国も19世紀まで、医療が不十分なため多産多死である。
日本でも1910年代まで、1夫婦あたり子どもの数は4・5人で、うち2・3人は大人になれずに死んでしていた。結果、人口の増加は緩やかだった。

②:そして、医療が発展すると、子どもが4・5人生まれれば全員が大人まで生き延び、人口が急速に増えて、多産少死のフェーズに入る。日本では1920年代〜40年代がこの段階に該当する。

③:その後、経済や科学技術の発展もあり、子どもの数は1〜3人となり、少産少死へと突入して、人口は微増か横ばいとなる。日本では、1950年〜2008年がこの段階に該当する。

④:少子化がさらに進み、加えて未婚者も増えて、子どもの数は0人〜2人となる。
その状況で死亡者が増えることで、少産多死へと移っていく。

ただし、上記のトレンドは長いスパンで見れば、どの国でも早かれ遅かれ経験する。
経済や科学技術の発展は、少子化へつながるため、少子化自体は必ず起こる現象である。

日本の少子化の何が問題かというと、他の先進国と比べて急速な少子化を招いたことだ。
少子化は最近に始まった話ではなく、70年前から始まっていた。
多産少死から少産少死へと短い期間で変化したのだ。
下記は、出生率の推移を示したグラフ。
戦後直後の1949年までは4を超えていたが(38年以外)、1957年には2近くまで低下している。

出典:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/890294a24fd3c2178e051d56303885d3c88798d7

わずか8年間で出生率が低下した理由は、49年に中絶を合法化したからである。
当時は食糧不足が問題であり、人口増加を抑えることが求められた。

結果、49年の出生数は270万人であったが、57年には156万人まで抑えられた。
戦後直後のベビーブームは3年で終息して、その後は少子化の時代へと移った。

出典:一般社団法人 日本家族計画協会https://www.jfpa.or.jp/kazokutokenko/topics/001431.html

中絶件数が多かったが故に、
50年代前半〜60年代前半生まれ世代の人数は
団塊の世代と比較して少なくなった。 
この世代の子ども世代(70年代後半〜90年代前半生まれ)の人数も
団塊ジュニア世代と比較して少なくなった。

言うまでもなく、少子化が1度起こると、2度目も必然的に発生するのである。

仮に中絶が合法化されなかった場合、
世代ごとの人数の差が小さくなり、少子化の進行は緩やかになるが、人口過剰による住宅問題や
雇用問題(高度経済成長より後に若い世代が直面)を抱えていただろう。

現在の少子化は、
75年前の中絶合法化(人為的な理由)と
社会の発展による出生数の減少(構造的な理由)が掛け合わさることで発生しており、
避けられなかった問題である。


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