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7月・海とTシャツと恋のようなもの

夏の海の思い出がある。

20代前半の頃。
2歳年上、女性の先輩と10歳近く年上の男性2人と4人で出かけることになった。

先輩に誘われ行った先は県内でも有名なビーチ。
明日行こうよーと急に誘われたことを覚えている。

わたしは水着なんて持っていなくて、でも海に遊びに行くのは子どもの頃のようで魅力的だったのでお誘いに乗ることにした。

当日。
わたしは当時お気に入りだった古着のTシャツに膝上丈のショートパンツをはいて出かけることにした。
肩くらいまであった髪はてっぺんでお団子に。
片手に日傘を持って。

片方の男性の車に乗せてもらい向かう。
BGMはサザン、そしてケツメイシ「夏のおもいで」。
ああ、今思い出しても絵に描いたような、2000年代前半の夏。
これだけで懐かしさにきゅんとする。

ビーチに到着すると、先輩はビキニ姿になった。
ま、まぶしい!
しかし、わたしはと言うと先にも言ったように水着は持ってなくて、しかもお気に入りの古着Tシャツは謎の空手柄だった。

海に合わなさすぎる!!

くたっと洗いをかけた青色に、白いロゴと空手をしているのであろう2人が向かいあっているという超シュールなプリント。
これ、めっちゃ好きだったのだ。
まさにこの夏の一張羅だった。

先輩や男性陣にもからかわれた。
自分では「おいしい」とさえ思っていた。

ただ、自分がビーチという場所からあまりにもかけ離れた存在のような気がしてしまう。(実際そうだった。)
そして先輩をはじめ水着姿の、ビーチでキラキラしている人々に羨望のまなざしを向けた。

夏が似合う人々よ、まぶしすぎるぜ。

夕方。
車へ向かう土手を歩いていると男性の1人がわたしに向かって言った。

そういうの、好きやで。

そういうの、とはどういうのか。
ビキニを着ない感じ、へんなTシャツ着てる感じ、総括すると色気がない感じ。

わたしは彼が少しだけ好きだった。
少しだ。
結婚してた人だったから。

その言葉、今思い出してもなんかずるいなあと思う。
うれしくなってしまうじゃないか。

それだけだったのだけれど。

7月、梅雨の明けた真っ青な空と海と、逃げ場のないような暑さ、夏が似合う人々。
そこにヘンな、しかし自分では超お気に入りのTシャツを着て日傘をさしながら歩く、ちょっと拗ねた顔をしたわたしがたしかにそこにいたのだと思うとたまらなく愛おしい。
数少ない海にまつわる思い出。

わたしにとって季節とファッションと記憶は深く結びついている。

また愛嬌のあるヘンなTシャツ、探してみようかな。

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このお話は以前、まだnote初心者だったころにも書きました。
しかし、あまりにも甘くキラキラした雰囲気で気恥ずかしくなってしまいすぐ非公開にしてしまいました。笑
今回は同じエピソードを今の気分で書き直したものです。



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夏の思い出

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