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10月・ワンピース2着で過ごした秋に気づいたこと

2012年秋。
大きく前にせり出したわたしのお腹には長男がいた。

12月初旬出産予定であり、冬にはお腹は引っこんでいるだろう。
マタニティーウェアを1ヶ月と少しの為に購入するのもなんだかなあ。
そうしているうちに秋は過ぎ去り、11月下旬に長男は産声をあげた。

その年の秋、わたしは2着のワンピースを毎日交互に着て過ごした。

どちらもとても好きなワンピースだった。
たっぷりと生地を使ったシンプルなAラインは脇のあたりからきれいに広がっている。
身ごろはゆったりとしているのに肩幅や袖は細めで、このバランスが絶妙。
ゆるさがありつつ、きちんと感もある。
大人のワンピースだ。
大きなお腹もしっかり包み込んでくれる。
マタニティではなく、以前から持っていたものだった。

この2着は同じメーカー、同じ形をしたもので素材と色柄が違った。

1着は薄いのにパリっとしたコットン。
黒に近いチャコールグレー(墨黒という言い方のほうがしっくりくる)に薄いグレーの水玉模様。
水玉なのに大人っぽい。
大人っぽさの中に少女性がある。
そんな印象だった。

もう1着の素材はリネン。
やや厚手でざらっとしている。
無地で、色は深みのあるカーキ。
乾燥させた茶葉のような、山とか土とか、そんなものを連想させる色。
ザ、アースカラーといった雰囲気だった。

朝起きる。
身支度をする。
迷わず洗濯したばかりのどちらかのワンピースを着る。
冷えないように下にはレギンスを穿く。
服を選ぶのに迷いは一切ない。

秋が深まってからは赤いカーディガンを羽織ってすごした。
カーディガンもこの1着だけ。
靴はスウェード素材のサンダル型ビルケンシュトックを迷わず履く。(妊婦はさっと履ける靴が一番。)

あっという間に身支度が終わる。
そして毎日好きなものだけを身につけている。

快適すぎる!
少ない一軍の服だけを着て過ごす日々。
それまで服はたくさんあるのに着ていく服が決まらなくて、途方に暮れてしまうことも一度や二度ではなかった。
洋服はあればあるほど迷ってしまう。
数少ない好きなものだけを身につける、選択肢を減らすようにすると身支度はとんでもなくラクチンになり満足感も得られる。
この感覚を覚えておきたいと思った。

今となっては「そんなの知っているよ」という方も多いはず。
その頃のわたしはまだ知らなかった。

のちに偶然読んだ本で「ミニマリスト」という概念を知った。
長男が生まれる前の、あの秋感じたのはこれだ!と、ふわっと感じていた思いが文章を読んだことできちんと理解できたような気がした。

あれから11年。

一時期はミニマリスト思考で洋服をかなり減らしたりもした。
ところが、シンプルな服ばかりを着ることにここ2年くらいは飽きてしまい、洋服は増えつつある。
数が増えるとやはり迷うことも多い。
しかし鏡の前でとっかえひっかえすることも悪くない。
時間がない時はいつもの好きな組み合わせで、とあの経験から学んだミニマリスト思考寄りで服を決める。

数が増えたとしても、好きなものだけを手元に置いておきたいよなあ。
現在は洋服選びに対してそう思っている。

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