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たんぼラバー

わりと自然の多いところに住んでいる。

車で3、40分走れば海にも山にも行ける。
山まで行けば透明な水が流れるきれいな川もある。
海も山も川も好きだ。
わたしは『やまかわうみ』だし。

でも山っ子でも海っ子でもない。
わたしはきっと「田んぼっ子」だ。

物心ついた頃から田んぼはすぐそばにあった。
カエルの大合唱は聞こえて当たり前の環境。

祖母はお米を作っていたし、家から少し歩いていけば田園風景が広がっていた。

小学生の頃は、片道2キロほどあった通学路の半分は両側に田畑があった。
春はおたまじゃくしを探し、夏は小さなアマガエルを捕まえ、秋は稲刈りを終えた株にコオロギが跳ねる。
冬は生き物の気配はないけれど、朝の霜がおりた真っ白な畑は雪が積もったみたいできれいだった。
そして霜柱。
さくさくと、登校時はみんなが縦一列に並んでその感触を楽しんだ。

一度だけ田植え体験をしたこともある。
ぬるっとした泥の感触が、足裏から指の間をすり抜けて甲まで伝わる。
あの気持ち良さと気持ち悪さの間のなんともいえない感覚は今でも思い出せる。

水をはったばかりの、あるいは稲が育ち青々とした田園風景を見て、そして刈りとったあとの乾いたあの香りがすると、それぞれ季節が変わったことを感じるのだ。

田んぼのある風景の中で、友達とふざけたり、けんかしたり、石蹴りやグリコをしながら帰ったり。

季節で風のにおいも違う。
子どもの頃に覚えた感覚は今でもからだに染みついている。

ーーー

今日ひさびさに自転車に乗った。

今住んでいるところは住宅地で、少し足をのばさないと田んぼはない。
夕方、子ども達と一緒に田園風景の広がるあたりまで走っていった。

青くさいような、草のにおいがする。
湿ったぬるい風に混ざって時々涼しい風が吹く。
そのにおいと風はずっと前から知っているなじみ深いもの。
わたしはその空気をめいいっぱい吸い込んだ。

あーすきだー。

ほっとするような、懐かしいような感覚。
やっぱりわたしは「田んぼっ子」だ。
幼い頃いちばん身近にあった自然。

しみじみと田んぼのある空気っていいよなと感じたのでここに書き残しておきます。



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