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金木犀の香りにこじつけた恋の話

今年も金木犀の香りがどこからともなく漂うようになった。
もうこの季節がきたのか、早いなあ。

この香りで思い出される中学生の頃のエピソードは一年前のこちらのnoteに書きました。↓

https://note.com/hondaaam/n/nd19d41021c1b

わたしにはもう一つ金木犀にまつわる恋の思い出がある。
無理矢理に思い出にしたと言ってもいい。
今日はそのお話を。



彼に出会ったのは20代前半の頃。
私の先輩の知人だった。
以前写真を見せてもらったことがあり、数人写ったその中でわたしには彼が一際目立って見えた。
単純に好きなタイプだった。

その日先輩に飲みに誘われ、知人も何人か来るからと言われ、行ってみるとその彼がいたのだ。

あの写真の人だ!ホンモノだー!!

彼は口数が少なく、でもそれはつまらないというわけでもなく、楽しそうにみんなの話を聞いているような穏やかな人だった。

その日は7月7日。
これは運命じゃないかと思った。
写真を見てかっこいいと思ってた人が七夕にわたしの前に現れるなんて!

こうして片思いが始まった。

この恋は「わたし史上最高に押した恋」だった。
とにかく毎日メールか電話をした。
内容は「お疲れさま」とか今日のできごととかなんでもないものばかりだったと思う。
とにかく一日一回は連絡をしようと一ヶ月くらいはがんばったのかな。
でもやがて自分からばかりメールなり電話なりしていることに疲れてしまった。

ずっと何かしら連絡していたのをやめた日の翌日、初めて彼の方から電話がかかった。

押してダメなら引いてみろ。
これ本当なんだ!でかしたわたし!!
彼が電話でなんと言ったかは覚えていないが、その後数回デートをした。

付き合おうと彼に言われた日、外は金木犀の香りがしていた。
この香りがしたら今日のことを思い出そう、と思った。
というか思い出してやる!という表現のほうが近い。
押して押して手に入れた恋。
なかば意地になって連絡をし続けた夏。
七夕に出会い運命だと思いこんだ恋はクリスマスを迎えることもなく終わった。

別れの理由もはっきりと思い出せず、なんなら彼の顔もどんな話をしたかも曖昧。
きっと付き合うまででわたしは燃え尽きてしまったのだ。
彼も押されて引かれて恋心と勘違いしてしまったけどそこまでわたしのことを好きにはなれなかったのだろう。

最後に握手をしたことははっきりと覚えていて、それはとても彼らしくて好きだなと思った。


あれから15年ほど。

金木犀の香りに無理矢理こじつけた記憶をこうして文章にしたことで、今年はいつもより少しあの頃を思い出すことが増えそうだなと思っている。








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