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現実迷路、脇道

割れそうな頭から時間が流れ出して現実が溶け出した。サマータイムもクソもなく時間など知ったことか。しかし息はしている。大丈夫だ僕はここにいる。ここ、こことは、どこだ。足元がぐらつくいや空間自体がぐらついているのだ。僕は背筋を正した。見失ってはいけない。しかし一体何を見ればいいのか。信号の青。道を行く車の黄色いランプが照らす顔はよく表情が見えない。割れるように頭が痛い。ビール缶を開けて喉に流し込む。動悸はいつから始まったのか。気づいてしまったらもう戻れない。すっかり暗くなった空と一日が役割を終えていく。今日は眠れない気がする。階下のヒンディー語が神経を逆撫でる。大丈夫何も聞こえない何も意味はない。温泉だ。今は温泉に浸かりたいしかしここにはない。止まらない機械の音、空調かそんなものはここにはないのに。現実の巡りを血液が流れるようにサラサラにしてくれる機械。アンナの顔が浮かぶどこにいるのかも知らないのに。facebookの申請が来ていた、あんなものでは何にもつながれない。嘘みたいに隅々まで張り巡らされたインターネット、sns。抜け出すための糸口は声だ。声を聴かせてくれ。そこには温度が体温がある。あいつらは一体どこに行ったんだ。きっと地元にいるままだ、帰れば会えるはずだ、でもそれが何になる。もう時間の流れが違うのだ。ここは早いのか遅いのか止まってるのか動いているのか。分からない。車でどこかへ行こうしかし車はない。体はここにあるのに僕はどこにもいけない。そんな気がしているだけだとわかっているのに。まとわりついた記憶を脱ぎ捨てて梯子に足をかけるように。あの本の中に答えがある。しかしきっとそれもまやかしだ。自我自体が幻だ。そう言った仏教の行き着く先はつまらない。液状化した人間が太母と一つになる誘惑に打ち勝てず皆が顔を失っていく。うちなる声を聞くのだ。醜くても自分の道をいく他ない。森の中に赤い屋根の小屋がポツンとあった、中には温かなご飯と暖炉の火がしかしそこには誰もいない。音もしないのだ。誰がそんなところに行きたいというのだ。明日は今日になって遠く遠く流された。言葉では追いつけない。意味なんてもってのほかだ。宇宙船は静かに音のない世界を進む。鈍く光るそれは一体何に照らされている。神よそんなものがいるのか。人が祈る時その声を聞くものは。青い光だそれが鍵だ。ここから抜け出すには。道は見えずともつながっている。

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