ホンダ

気狂わないために書きます。 朗読したりhttps://anchor.fm/hondaa

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最近の記事

ヤニ切れ

そいつは僕自身だった。僕の中のそいつ。踊ったり暴れたり悲しんだり死にたくなったりする、そいつ。幾重にも重なった殻の中のわたし。社会生活で必要な仮面は殻となってわたしを覆い隠す。仮面というと悪いもののように、何か嘘をついているような罪悪感を感じさせるが、すっぴんで過ごせるほど社会は美しいものではないから、何も悪くない仮面は必要だ。母という仮面、妻、夫、上司、なんでもいいがいくつも仮面を重ねていくうちに、そのほとんどは必要とされたり自分で選び取るのでなく周囲や慣習によって被らされ

    • 現実創造

      五時に目が覚める。上のベッドで眠る男の子は、少年のような顔と雰囲気で、五時前に起きる彼はあまり宿に泊まったことがないのかどったんばったんと朝からやるからそれでも目が覚める。天然の目覚ましだ。とすることで腹の虫を押さえる。怒りやすくなるのは年をとるからか、いや頭が硬くなるからか。ふざけたやつを笑えなくなるのは自分がふざけ足りてないからだ。いつまでもふざけ続けるのは苦労する、ふざけてやろうと態度を持ち続けなければならない。こんなことを真面目に考えてちゃダメだ。起きてすぐ歩くだとか

      • 喘息タバコカフェイン

        咳と同時に、水を撒いたように走る肺の痛みで起きた。二、三度咳き込むたびに痛みが走る。ほとんど酸素が回っていない気がして怖くて深呼吸をした。夢にらもさんが出てきたのはおそらく初めてだった。躁転したらもさんとその影響で躁に転じた僕で作ったのは、看板やゴミから拾ってきたアルファベットを並べたものでそれは英語ではなかったが意味はわかった。色褪せたピンクのアルファベットで、「明日は晴れる」だった。 今日は曇りだ、薄いミルクの空。太陽光は浴びれない。コーヒーを飲むと胸のあたりの疼きが楽

        • 何でもない

          向こうの部屋に覗いて見える姿見に空の青が映っている。水色の澄んだ光がくすんだ白い壁と汚れた手すりの中でぽつんと光っている。光が入って見えるのはその部屋一つで、他の部屋は囚人部屋のように暗い。僕は太陽に向かって座っていて、日に焼けて少し顔が赤い。とんとんと柵の向こうのヘリをスズメが跳ねている。起きてしばらくは心臓が痛く、コーヒーを一口飲むといくらか治って、なぜだか理由はわからないままで、タバコを控えようかと考えながら今日初めてのタバコを吸っていた。すぐには回らない頭を無理くり動

        ヤニ切れ

          あっちこっち

          おれはおれのままでよかったんだ。 電話の向こうで泣きながら笑う声を聞いてそう思った。その顔が見えていた。今あるものでやりくりするしかないのだ。それしか方法がないのは足りないからではなく、それで充分だからだ。泣きながら笑う顔はなんともいえなくて、なんともいえないことをおれに伝えてくる。そのままを表現している。木になったリンゴをもぎってかぶりつくようにそのままを味わいたい。知っていることではなくて、その時その瞬間の新しさを。 遠回りをしてうねうねと蛇行した道を歩いた先に元いたと

          あっちこっち

          イメージ・クラゲ論

          これは書くことの研究なのだ。であれば書くこと自体を見つめる目が生まれることになる。それは一つの現実の創造であり、僕の中に新しい空間が生まれることでもある。空間が生まれるとそこに風が吹き、時間が生まれ流れることもあるし流れなかったり逆流したり、滞留したり色々だ。余裕が生まれることにもなる。寝る前に画面を見続けたせいか目の奥が痺れるように固まっていて、目の前を見ているのかどこにつながっているのかわからないが、書いているこれとはつながっている。文字を通して繋がる空間には流れがある。

          イメージ・クラゲ論

          しっちゃかめっちゃか

          ああ億劫だ。書くことが。正確には書くための準備、準備といっても原稿用紙を机に並べて万年筆を取り出してインクを吸わせて、なんて大仰なことじゃない。そもそも原稿用紙を持っていないし、何なら見たことがないし、気に入っていた万年筆はどこかへ消えてしまった。手元に残ったのはブルーブラックのインクの瓶だけだ。書くために必要なことはパソコンを開くことだけだ。その一秒にも満たないことが億劫なのだ。便利なものだ、紙も筆もなくてもどこだって書くことができる。電気、電力は必要だが。電気がないと現代

          しっちゃかめっちゃか

          怠けアリのアメ玉

          ゴワゴワとした頭の中を洗ってしまいたい。しかし洗ったとしても絡まり合ってこんがらがったまとまりは解きほぐせないだろう。女の髪のようにサラサラとは流れない。小川の澄んだ水でも洗い流せない。長い時間でしがらんだ固まりは同じ時間で解きほぐす必要がある。そんな時間はなかった。その前に死んでしまうのがオチだ。それは幸運かもしれない。誰にも本人にさえその答えはわからない。火種を包んだ藁から白い煙が上がるようにタバコの煙が脳みそを、思考の間をただすり抜けていく。太陽は頭上高くに昇っていて時

          怠けアリのアメ玉

          巻紙給水所

          三日目にしてもう書くことはない。万策は尽きたと言いたいが、最初から書くことなどなかった。多分わたしは何も見ていないのだ。見ているようで見ていない。見えているだけ、見えてもいないかもしれない。人間は見ている、つまり目の中に入ってくる光、光景から自分の中で新しく生み出して、「見ている」とするわけだがこれはつまり創作をしている。人はそもそも創作の中を生きている。「現実」とされるまるで共有されているかのようなただ一つに思えるものも創作だったのだ。さらにそこに各々のスパイス、偏見、差別

          巻紙給水所

          砂漠の下の現実

          小説っぽいものは文字通りクソの役にも立たない。書く書くといって、書くってなんだと書きながら考えてるのだけど、もちろんわたしはプロではない、プロってなんだ書いたもので金を稼げばプロだろうか、すぐ金に結びつけるのは「現実」が金を中心に回るものとして考えられてほとんど実際そう回っててそこにわたしも生きているからしょうがない。誰だって書くことができるのに、日本はありがたいことに識字率が高いだからこうして書けている、いや読めなくても書ける人もいるか、書けないと思うのはどういうことか。こ

          砂漠の下の現実

          「書く」ばっか書いてゲシュタルト崩壊

          起きてすぐに書き出せることは夢を書き起こすぐらいで、何を書くのか、他の人は何を書けるのだろう。頭も回らないし、昼も夜もたいして回っていないが、なおさら思いつかない。そもそも書くことなど思いつくものでもない。書きながら出てくるのに任せるだけだ。流れているもの。その勢いを感じられれば見つければ話は早い。話もない。他力本願、いい言葉だ。朝早く四時前には同室だったインド人が出て行った。音や光に敏感な彼は、夜に部屋で携帯をいじったり出入りが激しいものによく注意した。そのくせ自分が出発す

          「書く」ばっか書いてゲシュタルト崩壊

          三本指の漁師

          「あいつは大量に服を持ってきて臭うから、窓開けてくれ。」目覚めの第一声がそれか。文句の目線で起きてから寝るまでを過ごすのかと笑ってしまった。嫌なやつとも思いそうだが、なぜだろうおれはインド人が好きなのだ多分。昨夜は新しく働き出すインド人の青年と酒を飲んだ。ハネムーンで日本に行く彼はいかに日本が好きでずっと行きたかったかをマシンガンのように話し出した。話しすぎて息切れするのを初めてみたかもしれない。久しぶりに飲んだビールで少し頭が痛む。小さい頃から日本について調べていた彼の知識

          三本指の漁師

          「ダイヤモンドを見つけたぞ!」

          早起きをしようと決めたのにもう朝は過ぎ去っていた。機械仕掛けのように階段を降りてコーヒーを淹れる。豆を挽いて淹れたのがやっぱりうまい。バルコニーに出てタバコを吸う。本当は先にご飯を食べたいがあいにく食材が足りない。日光を浴びて数分、しっかり晴れているのにぽつりと雨が降ってきて仕方なく休憩室に入る。みるみる曇ってきた空は青空をすっかり追い出して、濁ったミルク色になった。いきなりドアが開く。4、50代のおばちゃん、人相がとにかく悪い。こちらをさっと見る目が爛々と光っている。ガンガ

          「ダイヤモンドを見つけたぞ!」

          眠る人と頭

          枠にはめてしまう癖がある。態度を変えて世界を見ればそこに違う世界が見えてくる。しかし世界が変わったのではない。自分が変わったわけでもない。新しく浮かび上がった世界が、もともと「ある」と思っていた世界と重なるように浮かび上がって見えてきたのだ。 一度に書かなければ止まってしまうと考えるのは勢いに任せているからだ。自分だけをみて書き殴る、抉るように書いても読み苦しい。これも反省を書いているだけでつまらない。立ち止まってタバコを吸うと、違う時間が流れているのに気づく。 と休憩した

          眠る人と頭

          明日になれば今日が終わる。日はもう落ちかけてビルに反射した光が右頬を照らす。苦しいとも不安とも違うものが僕の中で膨らんで息が詰まるようなでもそれは同時に満たしてくれてもいる、震えるような痺れが全身に広がっていく。音楽が僕の中で鳴っている。止めないでくれと止めてくれが痺れを増幅させて僕は昇っていく。今なら歌が歌えそうだ。聴くものはいない。怖がっているのは誰だろう。消えていく。太陽が地球の影に隠れてしまう。まだ間に合うともうダメが、言葉と音が、くだらないと冷えた足先が、惨めと毛布

          風と雲は友達だろうか

          どうしようもない人間であることは、どうしようもない。休憩室には卓球台があってカップルが打ち合うピンポン球のコン、カンコンの音のリズムの中では書けないからバルコニーに出る。今日はまさに雲一つない青空で照りつける日差しは強烈だ。朝から2時間ほど陽の下で読書していたから顔が赤くなっている。これなら酒を飲んでもバレなくていい、言い訳が立つ。酒を飲みたいわけじゃないのに、飲みたい。昨日の深夜、今日の明け方、何と言えば正しいか知らないが、空きっ腹に飲みすぎたからか内臓が焼けて熱く重く、ま

          風と雲は友達だろうか