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HONDA的 今日の一冊

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今日あなたにお勧めしたい一冊を記録しておきます。
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記事一覧

女優、女優、女優 「枕女優」新堂冬樹

女優、女優、女優 「枕女優」新堂冬樹

性の平等が叫ばれるようになってから、職業も呼び名が変わっている。看護師、保育士、客室乗務員…。今考えると「OL」という言葉があった。そう思い出すだけでもぞっとする。やはり、こうした呼称は、職業に対しての敬意ではなく、「女性」であることを上から下に指し示す言葉だったように思えるからだ。こうした動きは、加速するべきだと思っている。でも、どうしても私にはなくなって欲しくない、男女が交わらない言葉がある。

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聖子は松田聖子のまま世界へ飛んだ 「松田聖子と中森明菜」中川右介

聖子は松田聖子のまま世界へ飛んだ 「松田聖子と中森明菜」中川右介

松田聖子に関する本は、過去に何冊か出版されている。ひと昔前は、元マネージャーや付き人、自称恋人という人々による暴露本的なものが多かったのではないか。松田聖子自身がそういった暴露本に対して、いちいち弁明もしないし、批判もしない。どこか余裕さえ感じるので、結局それらの全ては、やっぱ松田聖子ってすげーな、という聖子の偉大さの前では、小粒な状況であったと思う。それと当時に、社会学的見地での本も何冊か出てい

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文字で読む芝居 「チョコレートコスモス」

文字で読む芝居 「チョコレートコスモス」

今まで色々な本を読んできた中で、1ページ当たり、もっとも最速で読み終えた本だと思います。そのくらい夢中になりました。

恩田陸「チョコレートコスモス」

角川に書いてあるシノプシス、そのまま。それ以外、何の情報もいりません。むしろ何の前情報もなく、読んだ方が良い作品ともいえる。

無名劇団に現れた一人の少女。天性の勘で役を演じる飛鳥の才能は周囲を圧倒する。いっぽう若き女優響子は、とある舞台への出演

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一冊に殴られる 「ぼくの命は言葉とともにある」福島智

一冊に殴られる 「ぼくの命は言葉とともにある」福島智

人の急激な成長が、何かに気付くことで促されるというのなら、私はある本に殴られたような経験を持った事があります。友人に怒鳴られる、恩師に叱られる、先輩に注意される、人生の節々で気付きを頂く事は、もちろんありました。ただ、この一冊は、それまでとは痛みが違いました。自分の自惚れや無知を、この一冊がその存在だけで、私を殴り、そして去って行きました。

非常に恥ずかしい経験でありますが、懺悔のようにここに記

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最高級の前向き妄想をくれる一冊 「もしも宮中晩餐会に招かれたら」

最高級の前向き妄想をくれる一冊 「もしも宮中晩餐会に招かれたら」

飛行機での旅が好きです。着陸態勢に入る前、しばし時間がありますよね。外の景色を見る事はあまりしません。あ、ヘルシンキから飛んだとき、夜の雲海に月が浮いているような景色に出逢った事がありました。さすがにあの時は、遠くまで続く景色に数分心が飛びましたね。さて、その着陸までの30分、ほぼ毎回この本を読んでおります。「もしも宮中晩餐会に招かれたら-至高のマナー学-」

読みたくなるのです。言うならば、着陸

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Tomorrow Never Comes 亡き人へ捧げた詩

Tomorrow Never Comes 亡き人へ捧げた詩

2001年、同時多発テロの後、ある詩が世界中に拡散されました。

「Tomorrow Never Comes」

大きな反響の中でこの詩が伝わると、「9.11の救助活動で亡くなった消防士が書き残した詩だ」と当時紹介されていたのを目にしました。しかし、詩を書いたのは、ノーマ・コーネット・マレック。彼女が亡き息子への悲しみを綴った詩です。

この一遍に出逢ってから、自分は「今日」という一日を意識するよ

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るつぼとサラダボール、そしてモザイク文化の世界から 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

るつぼとサラダボール、そしてモザイク文化の世界から 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

少し前に同僚と、「どの世代にも刺さるエンターテイメント」について話していた時、この作品について教えて頂きました。新潮社の「一生モノの課題図書」というタグラインが、自分の心を持っていったのも事実です。課題図書…なんだか懐かしい響きであり、すぐに読み始めました。

作品はイギリスで暮らす作者、ブレイディみかこさんとその息子さんとのお話。息子さんの中学最初の1年半を書き綴っており、その多くは友人関係、保

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