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もう一つのカミングアウト

オンラインチャットの彼へのカミングアウトは少し手順を踏みました。

まずカミングアウトする前に、今までチャットをしていた女性を装ったアカウントとは別に、本名(下の名前のみ)かつ男性としてのアカウントを新たにつくり、チャットを申し込んだのです。

その頃の彼への感情は正直恋愛感情だったけど、もっと言えば、この出会いは人生一番なものという思いが強く、そのぐらい人としての魅力に虜になっていました。だから関係を失いたくなかったんです。もちろん付き合いたいなんてことはこれっぽっちも考えていなくて、ただなんとかリアルでつながって友人関係を築けないか、薄くてもいいからオンラインの関係を抜け出して、実際の知り合いになれないかと思っていました。

結局その本名のアカウントでもチャットをすることができ、彼が熱中しているある趣味の話で盛り上がることができました。
そのアカウントで何回か話すうちにゲイであることも伝えましたが、拒否反応はなく快く受け入れてくれ、しばらくは女性を装ったアカウントと、本名のアカウントの二つでチャットを続ける日々でした。

彼の中には生きていく上での信条のようなものが結構あって、自分に正直に(迷うようなことはやらない)、大事な人のことは心から大切にしたい、こうなりたいと思った姿には簡単に諦めず一度は努力してみる、など。
それらすべてに今の自分は反しているようで、それがこれ以上彼に嘘をつき続けたくないし、そのアクションが自分の人生を前に進めるためにも必要と思った理由でした。

本名のアカウントでも話すことはできていたので、女性を装ったアカウントの方はフェードアウトすることもできたのですが、あまりに仲良く話せていたのと、前述のような自分の思いもあり、女性のアカウントで話している時に、このアカウントは実は女性でなく男性であること、しかももう一つ男性で話しているアカウントと同一人物であることを告白することにしました。

そしてある日、そのことを伝えました。
相手の反応は、
・驚いたけど、嫌な気は全然しない
・フェードアウトすることもできたのに、こうやって正直に告白できることがすごい(自分ならそうできるかわからない)
・自分も本当に楽しく、勉強もさせてもらっていた
・良ければこれからも(本名のアカウントの方で)話していきましょう
でした。

その日のメモ日記にはこうあります。

正直に話してよかった。決断してよかった。偽りを続けて瞬間の楽しみを得ることを選ばなくてよかった。自分の判断を誉める。正直にシンプルにオープンに生きていくのだ。大切な人を大切にしながら。きっと道は開ける。人生の恩人に教わったのだ。

「瞬間の楽しみを選ばなくてよかった」と書いているのは、彼から女性として扱われ疑似恋愛のような体験をしていることは正直嬉しかったので、それがなくなることには葛藤もあったからです。
ただそれよりも、人生において大切な人と、できれば友人のような実際の関係性を築く一歩を踏み出したような気持ちでした。
もちろん過激なことをするつもりはなく、相手がそのつもりがなければ身を引くつもりでしたが、客観的に見ればストーカーのようには見えちゃいますよね、、書きながら実感しました(嫌な思いになる人がいたらごめんなさい)。

男性であることを告白をしたチャットの中で、勢いに任せて「もしよければ一度飲みに行きませんか?」と聞いてみました。
私と彼が住む地域は離れていたので、簡単に会うことはできないのですが、「別にいいですよ。僕は気にしないです」といった回答でした。
「別に」といった表現に、前向きではないかなと思いつつ、拒絶されなかったことで、首の皮一枚つながったような気持ちになりました。
今から考えれば、彼も嫌とは言えなかったのだと思いますが。

そんな感じで、そこからは本名のアカウントでチャットする日々がスタートします。
また書きます。

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