シャネルの服

丸の内の三菱一号館美術館で催されている
ガブリエル・シャネル展に行ってみた。
彼女がデザインした数々の洋服の素晴らしさに
圧倒され、魅了され、感服してしまった。

柔らかそうな初期のシルクジャージーは
軽くエレガントなスポーティなリゾートウェア、
シックで気品溢れるリトルブラックドレスは、
レースやビーズや織りの巧みさで目を奪われる。

15年の沈黙を経て70歳になってから
ファッション界に復帰した際に発表した、
シャネルスーツはオフィスで働く女性に
男性と対等であるいう自意識を目覚めさせた。

女性は男性のお飾りの所有物だった時代に、
体を縛り付けるコルセットを消滅させ、
華美な装飾をなくした一人で着られる服を提案、
女性たちに自由と解放と独立心を芽生えさせた。

自ら自分のデザインした服を着てモデルとなり、
写真に写って女性たちをリードしたシャネル。
私の服がファッションになっているのではなく、
私自身がファッションなのよと言い切った。

今から100年前の服が今もまったく古臭くなく、
新鮮で優雅で繊細な魅力溢れるものなのは、
まさにシャネル自身の高みを見据えた精神と、
卓越したセンスの賜であることを再認識した。

ガブリエル・シャネルの肉体は亡くなったが、
彼女の精神とその服は今も尚生き続けている。
20世紀最高のデザイナーは21世紀の今日も、
不出世の天才としていきいきと君臨している。