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阿部加奈子指揮、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の「音楽堂シリーズ第29回」_2024年5月18日

※サムネイルの写真は、神奈川フィルハーモニー管弦楽団さんの公式ウェブサイトよりお借りしました。

あまりの感動で、手のひらが腫れあがっても拍手を止められなかった、先週のカーチュン・ウォン×日本フィルの「マーラー:交響曲第9番 ニ長調」。その翌日の東京チェロアンサンブルに続き、
昨日は神奈川県立音楽堂で、阿部加奈子指揮、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の「音楽堂シリーズ第29回」を聴いてきました。

演目は、
武満徹:弦楽のためのレクイエム
ラッヘンマン:管弦楽のための塵(ちり)
ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄」
コンマスは、ゲストの東亮汰さん

プログラムによると、ベートーヴェンの「《第九》を分子レベル、塵にまで分解し、再構築した作品」である「ラッヘンマン:管弦楽のための塵(ちり)」。
「第九」に異形化を伴うことから、ヨーロッパのオーケストラに演奏拒否された作品とのこと。
日本でも演奏回数が少ないようで、もちろん私は初めて聴きました。

「第九」云々は一旦置いて、私は楽しい体験をさせていただきました。

金管奏者たちが音色を奏でず、楽器に息を吹き込む音だけで聞かせる箇所は、
ステージ上を右から左へと吹き抜けていく一陣の風のよう。曲を視覚的な立体としてとらえることができました。

私にとっては、まるで夜半に城の周辺を、暗躍者が息をひそめながら近づいてくるようで、何かが起こる直前の緊張感をドラマティックに体験しました。
いわば後半の「英雄」に続く、戦の前夜のような感覚です。

金管奏者はさることながら、個人的にはコントラバスが印象に残る演奏会でした。
「塵」の後半で、コントラバス奏者が駒の下辺りを弾いたように見えた箇所があり、倒れ込んだように見えてドキリとしたのです。

休憩を挟んで続く「英雄」第2楽章の冒頭。悲しい行進曲を支えるようなコントラバスは、まるで「塵」の伏線を回収したようで、ナポレオンの日常の根底に流れるものが生々しく伝わったようでした。
時おり、小鳥のさえずりとともに目覚めた朝のような、安堵の煌きらきもあれど、一瞬で過ぎ去っていく--。

作曲家でもある阿部さんの解釈ゆえ、演奏会全体を通してドラマを味わえたように感じます。
(来年の神フィルの特別演奏会で、阿部さんは委嘱作品を振るそうです)

【ききみみ日記】
★今回で投稿152回目になりました★
オペラ・クラシック演奏会の感想をUPしています。是非お越しいただけますとうれしいです。
現在未UPの、2023年分もこつこつ追加してまいります。
(2022年10月10日~2023年1月15日まで101回分を毎日投稿していました)




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