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【サンタさんのごみ袋】

【朝8時、ごみ捨てに行くのが面倒でたまらないときにする空想☟】

サンタはクリスマスに働けばいいだけ、楽そうだな、と勘違いして私は1年前にサンタという職に就いた。

募集要項も「トナカイに乗るのがこわくない方」だけだったのだから、勘違いするのも仕方ない。

ただ、現実は楽なんてものとは正反対であった。

もっとも大きな勘違いだったのは、子どもたちへのプレゼント、これがどんな方法で調達されるのかという点だ。

私はサンタに就くまで、プレゼントは「サンタの不思議なチカラ」で調達されるもんだと思っていた。
そうでないと世界中の子どもたちのプレゼント量をまかいきれないじゃないか。

しかし、現実は違った。不思議なチカラは確かにあるのだが、そう楽なモンじゃない。

プレゼントは「サンタの収集したごみ」が変身したモノなのだ。

つまり、わたしたちサンタは毎朝世界中のごみ収集場へ行ってごみを収集する。そして、そのごみ袋を持って「サンタ袋交換所」に行く。

サンタ袋交換所にごみ袋を出すと、ごみ袋はサンタ袋に変わり、中身のごみもすっかりプレゼントに変身してしまうのである。

そういうわけで、わたしたちは毎朝必死である。
正直、クリスマス前日のプレゼントを届ける仕事なんて1番楽だ。
年がら年中、毎朝毎朝、子どもたちのためにごみ収集へ奮闘しているのだから。

それから、よく「いい子にはサンタさんが来てくれる」と語る人がいるが、あれはウソっぱちだ。
わたしたちサンタが収集したごみ袋の数だけ、子どもたちにプレゼントが届くのである。
(だから、プレゼントが届かない子どもたち、どうか内省しすぎずに。ごめんよ。)

トナカイに乗っても世界中のごみを集めるのは体力的にしんどい。しかし、子どもたちを思えばやりがいはとっても大きい。

ただ、一つ小言を言っていいだろうか。

みなさんがごみを8時までに出してくれないことには、このわたし、サンタの仕事が始まらない。

そこのところ、明日の朝8時までに、
よろしくお願いします。


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