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村上春樹 著 『風の歌を聴け』

ポイント

1.戦いの後
 熱い風に吹かれていた時代は終わってしまって、風の吹かない時代になってしまった。その戦場跡をナナメから眺めている。

2.多くのフォロワーを生んだ
 デタッチメント、巻き込まれ系は未来に対する希望の無さ。心の底では吹かない風を待ち続けながら、諦めたと言う。必死にならないことで未来への絶望を避ける世代。


マノ  これは、さがにわからなかったです。

副部長 わたしもそう思う。なんか、ここがこうとか、これは何かを表しているとか、そういった専門的なところは、きっとたくさんの研究者たちがいると思うので、ちょっと置いておこう。

マノ  ですね。まあ、他にもいくつか読んで思いましたけど、ちゃんと話すのは難しいんじゃないかなと。

副部長 なので、読んで考えたことなど話していきましょう。

マノ  温度で言えば低めですね。それこそよく言われるデタッチメント。

副部長 僕は僕、君は君。という感じ。ちなみに面白かった?

マノ  そこなんですよ。なんというか、よくわからないんです。男子は結構好きですよね。こういうの。

副部長 世の中の小説家希望の人の9割は、村上春樹みたいな文章書いてるという説もあるくらい。めちゃくちゃ影響力があるよね。あるいは、やれやれ、みたいな。

マノ  サラッと酷いこと言いますね。ちなみにどこに魅力があると思いますか。

副部長 ううん、何なんだろう。ナナメのカッコよさ、かな。

マノ  ナナメ。

副部長 物事に真っ直ぐぶつかるのが熱血だとしたら、外してナナメから見るのがクールみたいな。おそらく、村上春樹に限らずなんだけど、この時代の作家さんって、時代も含めないとわからない魅力があるんだとは思う。初版が1979年で、舞台は1960年代、なので60年代の雰囲気とか空気感を知らないと、おそらくは理解はできないんだとは思うんだけど、という前置きはしておいて、いわゆるインテリな文学というか、時代で言ったら「コクリコ坂から」の時代だと思うんだけど、こう熱い時代なんだと思う。ジブリの熱風もそうだし、熱い風というか、風、か。

マノ  風ですか。

副部長 風が吹いてるんじゃないかな。時代の風とか、風に吹かれてとか、なんかそういう表現とかいろいろあるでしょ。「紅の豚」の主題歌も、熱い風に吹かれて、とか。その風に吹かれながら、立ち向かったり、立ちすくんだり、そういうのが宮崎駿とか、こう熱い側の作家さんで、風に吹かれている、というのが村上春樹みたいな感じかも。

マノ  なるほど。じゃあ、そこに感じるカッコよさってのは、風は吹いているけどそこに立ち向かわないカッコよさですかね。

副部長 そうかも。ポルコもちょっとシニカルで、立ち位置としては風に向かわないんだよね。でも、フィオの存在が、再び熱い風に立ち向かわせるっていう感じ。そうか、ポルコは一度風に立ち向かって、その結果、仲間はみんな死んでしまって、生き残ってしまった結果、風に吹かれる自分を選んだみたいなところはあるのかも。

マノ  じゃあ、村上春樹もそんな感じですかね。いや、ちがう。村上春樹は、時代が熱い風に立ち向かっていたけど、その結果、そうじゃなくなってしまったという感じかも。

副部長 学生運動とか、安保闘争とか、そこが風だったのかもね。

マノ  もう、風が吹いていなかった時代、という感じですか。

副部長 ああ、それいいね!確かに、風は吹いていないのか。もう風が吹いていない時代の中で、もうすべて終わってしまった、と遠くから眺めている感じかな。

マノ  男子は全員、風に立ち向かいたいんですかね。本能的には。バトルものとか、不良ものとか、少年漫画って基本戦ってますよね。

副部長 そうかも。戦いたいけど、もう戦う時代じゃないから、みんな吹かない風に思いを馳せてナナメから見てるのかもね。でも風が吹いてくれたらその風に乗る準備はできてる、というのが、巻き込まれ系になるのかもしれない。世の文学青年たちが、村上春樹風の文章を書くのもちょっとわかる。みんなデタッチメントな生き方を望んでいるというか、諦め半分なのかも。ずっと未来に希望を持てない世代なんだよね。でも、本心では乗りたいみたいな。

マノ  確かに。未来に希望があると、熱血みたいなのが流行るんですかね。最近は熱血だとカッコ悪いみたいな風潮ありますね。そんなに頑張っても仕方ないでしょみたいな。むしろ、サラッとできる俺カッコイイみたいな。

副部長 知的な雰囲気も出てるしね。やっぱり本が好きな人って、知的なことへの憧れはあるよね。子どもの頃から運動できる人がもてはやされるので、どうやって他との差別化を図るか、みたいなのは。

マノ  その結果、オタクが出来上がるんですね。より知っていることをアイデンティティにするという。副部長みたいな感じですね。

副部長 あながち間違ってない。

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