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夏の自由研究。”美味しい”キュウリのポタージュ5番勝負


「あなたの体からはキュウリの匂いがする。さてはこの夏キュウリを100本以上食べましたね?もう血が半分緑色ですよ。おめでとうございます、河童村に移住できる条件を満たしています。つきましてはこちらのリーフレットを・・・」と、河童(身長150㎝・ふくよか)から、何やら象形文字の書かれたハスの葉を手渡される夢を見てしまった。目が覚めて思わず頭が濡れてないか手を当てた。ああ。

それくらい、毎日キュウリを食べ過ぎているような。漬物、サラダ、パリパリ漬け…毎食必ずキュウリが食卓にのぼる夏。

残暑厳しい折、皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。






【1】事の発端

夏の朝はキュウリの1本漬け作りからスタートする。キュウリを白だしに漬けて冷蔵庫へしまう。食欲がなくても、これだけは1本2本とついつい手が伸びる。

ふとひらめく。

この味で、ポタージュ作れないかな?

前にどこかで食べた、和風だしのミルクスープが美味しかった。豆乳鍋みたいな感じ。イメージがふくふくと膨らむ。

これもきっと神・・・いや河童のお告げかもしれない。
夢の中の河童に呼ばれ、設計図が頭にヒラリ。

実は以前もキュウリのポタージュを作ったことがあるが、

青臭さ
・ざらつき(繊維が残る)

が気になり、それきりになっていた。
今回はこの2点もクリアするべく、頑張ってみたい。



【2】なかなかうまくいかない

最初の大まかな設計図としては、
キュウリと玉ねぎを炒める
出汁を加えて煮る
ミキサーにかける
濾す
→調味 
という流れ。

なるべく最小限の材料でキュウリの味を生かして作りたいが、とろみを何で付けるか、それが問題だ。


何はともあれ迷いながら作りはじめます




▶1回目・・・まずまずの仕上がり。とろみに米粉。

・玉ねぎとキュウリを一緒に炒め、出汁を入れてミキサーにかけて濾す
・そこに水溶き米粉を加える
サラサラすぎる仕上がり。

《考察》
1回目にしてはまずまずの仕上がりだが、比較対象が欲しい。ほかのやり方も試したい。保留。


2回目・・・小麦粉ならどうだ。あかんドロドロ
1回目と手順は同じ。
水溶き小麦粉を加える。
・ドロドロすぎて収拾がつかなくなる。

《考察》
・米粉と小麦粉は性質が違う。グルテンのせい?
・小麦粉はダマになりやすく扱いにくい。米粉のほうがいいかも



3回目・・・痛恨のミス!米粉を測り間違え、またドロドロ
・キュウリが大量にあり、普段の1.5倍量で作る
・水溶き米粉を入れるべき分量の2倍入れてしまう
・お察しください

《反省》
よく寝る。ご飯を食べる。今年暑すぎる
※あまりにドロドロだったので、冷凍しグラタンソースとして美味しくいただきました↓豆腐グラタン

顔色の悪いホワイトソース(キュウリポタージュ)


4回目・・・米粉を入れるタイミングを考え直す

・「デンプン質はよく加熱することで粘りを抑えられる」という情報を得る
・水溶き米粉を加えてからの煮込み時間を増やせば、ドロドロを防げるのではと仮説を立て、今まで5分程だったのを15分煮ることにする。
・しかし、キュウリを入れてから長く煮込むと緑色がくすみそう
・というわけで、最後に出汁でのばしたキュウリを入れる。これでどうだ

《考察》
・悪くはない。1回目と似た感じ。
・作ってすぐはサラサラだが、翌日は水分を足さないとドロドロ。煮込み時間が不十分だと思われる。
・そもそも、米粉じゃなくて普通の米でよくないか。お米のほうが手軽だし。


5回目・・・勝負あり。ひとまず完成レシピ(↓)



【3】材料

出来高:約600cc・4,5人分
きゅうり・・・・400g
たまねぎ・・・・4分の1個
サラダ油・・・・大さじ2分の1
バター・・・・・5g
出汁・・・・・・500㏄ 
炊いたごはん・・大さじ4
白だし・・・・大さじ1と2分の1
生クリーム・・・大さじ1
塩・・・・・・・少々


【4】作り方

1.キュウリの皮を剥き、縦半分にして中の種を取る。

キュウリの青臭さは皮と種の部分にあるといわれています。青臭さを取り除くのには湯通しする方法もありますが、今回は、キュウリの緑色※ をきれいに保ちたいので、必要以上に加熱しないようにします。

緑色の野菜に含まれる色素「クロロフィル」はに弱く、長時間の加熱で色がくすむ



2.小口に切って塩(分量外)で揉み、しばらくしたら水気を絞る。



3.鍋に分量外:小さじ1)を引き、キュウリをさっと炒める。全体に油が回ったぐらいですぐにバットに取り、冷やす。

すぐ冷やし、緑色が退色するのを防ぎます

下に保冷剤を置きました



4.鍋にバターをひき、玉ねぎの薄切りを炒める。玉ねぎに油が回ったら、蓋をして、弱火で5分蒸し炒めにする。


5. の鍋に、出汁450㏄炊いたご飯を加え、蓋をして25~30分コトコト煮込む。粗熱が取れたら、ミキサーによくかける。

デンプンは水とともに加熱するとふやけて粘り気やとろみが出るが、これをさらに過熱すると、今度は粘り気が失われていくデンプンのとろみは冷えると固くもったりとしてくるので、温かいポタージュにはちょうどよいとろみも、冷製になるとどろりとなる。(中略)飲みやすい冷製にするには、よく煮てデンプンの粘りを抑えるとよい。

日本経済新聞 平松サリー「料理を科学する」2023.7.15より抜粋(※太字は筆者)



6. キュウリ出汁50㏄をミキサーにかけたら、目の細かいザル等で濾し、5に加える。

濾すことで、キュウリのざらつき感が無くなります



7.を弱火にかけ、薄口醤油、生クリームを加え、塩で味を調える。冷やしていただく。

5の工程で30分ほど煮込んだことで、ご飯のでんぷん質が変化したと考えられる。たしかに翌日飲んでもサラサラのまま!



【5】まとめ 

思いもかけず勉強になったキュウリのポタージュづくり。まだ改良の余地がありそうですが、今回はここらへんで。

よくよく考えると、ご飯いれるレシピあるよなあと今になって思います。なんで粉を溶くのにこだわってたのだろう・・・。河童のいたずらか?

工程の裏にはきちんと科学があり、理由がある。
調理科学を知ると、フィーリングだったものが言語化·数値化されてクリアになります。おもしろかった。


夢枕にまた河童が立つことがあったら、リーフレットの続きを読ませてもらいたいものです。


(了)

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