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自分の判断が意味をもつ

筆者

裁判官(静岡家庭・地方裁判所浜松支部〔雑誌掲載時〕) 先﨑春奈(せんざき・はるな)
出身校: 東北大学法学部・同法科大学院/福島県立安積高校


裁判の種類と裁判官の仕事

編集部:裁判官の仕事について教えてください。

 裁判は,地方裁判所で取り扱う刑事事件と民事事件,家庭裁判所で取り扱う家事事件と少年事件に大きく分けられます。刑事事件は,検察官が捜査・起訴〔きそ〕してきた事件について,証拠を調べて有罪か無罪かの判断をし,有罪である場合にはどのような刑を科すかも判断します。民事事件は,主に,「貸したお金を返してほしい」「交通事故により生じた損害を賠償〔ばいしょう〕してほしい」などの私人〔しじん〕(個人や会社など)間の訴えについて判断しています。それらとは別に,国や地方公共団体などの行政庁の行為について争う行政事件もあります。家事事件は,離婚や相続などの家庭内の争いなどについて判断をしています。少年事件は,非行〔ひこう〕(犯罪)を行った少年の健全な育成を図るための保護処分について判断しています。

 私は,現在地方裁判所で刑事事件を,家庭裁判所で少年事件を担当しています。地方裁判所の刑事事件のうち,3 名の裁判官(主にベテラン・中堅・若手)で議論や相談をして進める合議〔ごうぎ〕事件について,その若手という立場で担当しています。少年事件については1 人で担当しています。

はじめは法曹志望ではなかった 

編集部:裁判官を目指して法学部に入ったのですか?

 いえ,正直にいうと,自分の学力から選んだという感じです。ニュ編集部:スで法律が変わるなどと聞いたときに,その法律って何のためにあるのだろうとか,自分の生活に関わる法律のことをよく知らないなあと,法律への素朴な興味を持っていましたが,特に法曹〔ほうそう〕を目指してはいなかったので,法学部に入るとどんな職業に就けるのだろうかという悩みはありました。そんなとき高校の先生が,「法学部の進路は法律家になるだけではないし,法学部に入ってみることで人生の選択肢が広がるんじゃないか」と後押しをしてくれて法学部へ進学しました。

 法学部に入って1 年生のときにアメリカの判決文を読む講義があったのですが,先生の熱心さもあってか判決文がとても活き活きと訴えかけてくるように感じて,非常に新鮮だったのを覚えています。裁判官個人の信条が強く表れていたり,社会問題を裁判で解決しようという熱みたいなものを感じ,裁判がこういうふうに機能することもあるのかと思いました。また,法学部内のサ編集部:クル活動のようなものとして,無料法律相談所の活動に参加しました。一般の方からの法律相談に学生が答えるというもので,もちろん弁護士や大学の先生の協力も仰ぎながらでしたが,相談者の役に立ったという経験や,弁護士の仕事を間近で見られたことが法曹志望へつながったのかもしれません。

自分の判断が人の人生に影響を与える

編集部:裁判官という仕事のやりがいを,端的に教えてください。

 裁判官の仕事は,民事事件や家事事件では,法律的な結論とは別に和解〔わかい〕や調停〔ちょうてい〕という柔軟な形でも紛争を解決できますし,刑事事件や少年事件では,自分の下す判断で関係者に人生の一つの区切りを示すことができると言えるかもしれません。楽ではないですし,人から感謝もされないかもしれません。ただ,自分の判断が誰かの人生に対して何かしらの意味をもってくれたらいいな,ということにやりがいを感じる仕事です。

高校生へ一言

 法学部での学びは社会への関心につながるので,そこから将来の目標を探すというのもよいと思います。

※ 「法学部で学ぼうプロジェクト」編集部より

本記事は『「法学部」が面白いほどよくわかる』に掲載されたものです。
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