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#SS貯蔵庫 その51〜60

「はなせばわかる」の本アカウント[ https://twitter.com/hnsbwkrs 」 にて、#SS貯蔵庫 に掲載したショートショートのまとめ。



その51「鶴のパワハラ返し」

「私は部屋にいます。ですが、絶対に中を覗かないでください」
「分かった、約束する」

あれから一年が経った。

「鶴よ、お前が寝ている間に部屋にカメラを仕掛けておいた。これで直接的に部屋を覗いた事にはならない。さぁ、今まで通り熱心に働いてくれ…」



その52「同じ名前」

遠い天の彼方に住む神が言った。

「この世には、私と同じ名前のものがおる。これは唯一の神である私を侮辱しておるぞ、消してしまえ」

そういって神が指を鳴らすと、
世界中から本や新聞、チラシなどが消えた。
そして、世界中の人々が坊主になった。

#かみ消滅の日



その53「一人九役」

「右も左もわからなかった中三のころ、ただ一つや二つとボールを投げて捕る遊びをしていた」

…俺はこれを『一人野球』と命名した。
9ヶ所の守備を一人で担っていた当時中3のバカな俺。今思えば、この説明さえ9ヶ所の守備位置を表しているような…
#右左中三一二投捕遊


その54「改名」

島「なぁ林!」
林「島さん、どうした?」
鳥「俺、改名したんだ!」
林「改名?」
鳥「いや気付けよ」
林「何て名前にしたんだ?」
鳥「トリ」
林「分からんわ!」
烏「…おい!」
林「今度何だ?」
烏「今はカラスだよ!」
木木「分からねーよ!」
烏「いやそれは気付く」


その55「判決」

天空では、ある男が最期の審判を受けていた。
その男は真面目で優しい性格だった。
そのため、判決は明らかであると言えた。

神が裁きを言い渡す。
「お前は………地獄行きだ!」

その瞬間、男は真下に落ちていった…。

そして、別府温泉名物「地獄めぐり」を楽しんだ。


その56「もしも俳句や短歌が、麻雀の役の強さだけで評価されたら」

佳作「白い雲 暑中の夕立 直線に」
→ 3翻 (立直、白、中)

優秀賞「四季残る 街の暗がり 丑の刻」
→ 役満 (四暗刻)

最優秀賞「純情な 波は正しき 九十九里 浮かぶ水蓮 宝を燈す」
→ ダブル役満 (純正九蓮宝燈)


その57「普遍的な生活」

変わり映えのない生活を続けてきた私は、人生ゲームを買った。
現実とは違う世界で、波乱万丈な生活を送ってみたかった。
貧しい人生でも良い。
常に変化が欲しかった。

そして私は、ルーレットを回す…。

…しかし、針は止まることなく、いつまでも回り続けた。


その58「N氏」

N氏が「一番最後」という称号にこだわりだしたのは、つい最近のことだ。
Nは、アルファベットで14番目という微妙な位置。個性が何もなかった。
しかし、最後のZは角度を変えればN、平仮名の最後は「ん=N」などの発見をする。
エヌ氏は思う。
最後は必ず、Nなのだ…。

F I N



その59「逃げる女」

ある夏の午後。
住宅街を逃げ惑う一人の女がいた。

時々後ろを振り返りながら、「アイツ」の様子を確認している。
女は電柱に身を潜めるが、「アイツ」は静かにやってきた…。

女が頭上を見上げると、黒く濁った雨雲が…。

女は思う。
「これが、雨女の宿命か…」



その60「睡眠の底」

病院にて、男が言う。
「毎晩空から落ちる夢を見ます。いつも地面にぶつかった時に起きちゃって…」

男は医者から、ある薬をもらった。

その夜、男は夢を見た。
自分が風船を持っている。
これでもう、落ちることはない。
だから永遠に眠っていられた…。

永遠に…。

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