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ダサいとて

質問に答えます。

高校デビューしたい高校生です。
ウキウキで着たい服を適当に(事前に勉強も下調べもせずに)買ってきたら、親にその服はあなたに合わないねと相当時間(30分くらいかけて)言われました。
どう思う?ときいたのは私だし、実際買ってきた服は相当ダサかったし、だれもが通る道だし、親に悪気がないのもわかっていたのでその場ではそうだね、と相槌をうっていましたが、親が去った後にベシャベシャに泣きました。 そもそも自分の容姿に自信が持てなくて、常に自分がみじめに見えます。出がけに鏡を見て自己肯定感が上がったことがありません。 高いTシャツを着るのが精いっぱいのおしゃれな私が背伸びしすぎた結果失敗したという事実を、(善意なのはわかっていても)あまりいじられたくなかったんだと思います。
でも、その後いろいろあって私がショックを受けていたことが親にばれて、 「きつい言い方に思えるだろうけど、あなたのことを思って意見したつもりだったんだよ。 あなたはすぐショックを受けるからこっちは普通に意見も言えなくなってしまう、社会に出たらこれ以上の理不尽やつらいことはたくさんあるのだから、これくらいで泣かないでほしい。 もっと自分に自信をもって」 と言われて、何もわからなくなりました。
親の意見はとてもまっとうなものだと思います。 だけど、じゃあ今私が感じている悲しみやつらい気持ちは弱い心がうみだした被害妄想で、抱いてはいけないものなのでしょうか。抱いてはいけないと思ったって、変わらず悔しいしつらいし悲しいです。 親の厚意を素直にうけとることのできない私は欠陥人間なのだろうか、自分のことばかり考えてはだめで、このつらい気持ちを押し込めるのが正しいのだろうかと悩んでいます。
なんてことない言葉に過剰反応して反射で泣いてしまう性質は自分でも嫌だと思っているけど、泣かないために自信を持てと言われたってなかなかできないし、できないことしかなくてもう嫌になりました。

高校生が私のnoteを読んでいることにびっくりした。私たち20くらい年齢が離れてるよね?いつも読んでくれて本当にありがとう。

高校デビューね〜、素敵じゃないですか。あなたが買った服がどれだけダサいか分かりませんが、店で売られてる服ってどれも、誰かが”これなら気に入ってくれる人がいるはずだぞ!”と思って作ったからそこにあるんです。だから、そもそも、あなたは自分の好みをそこまで卑下する必要はないと思います。

それにね、あなたの親御さんが正しいことを言っていると私は思いません。

仮にあなたの買った服が死ぬほどダサいとして、それを外に着ていく機会を失ったことを私は残念に思います。親に”それダサいよ!”って言われてあなたは傷ついたと思うけれど、おそらく、そういうことを親から言われるのって初めてじゃないですよね?今までも似たり寄ったりの経験をして、親の言葉に何度も傷ついてきたんじゃないかな。

どうせ傷つくなら、友達とかに笑われて傷つくほうがよほど意味があったと思う。親御さんは親切心から”大事なあなたにこんなダサい服を着させるわけにはいかない!”と小言を言ったのかもしれませんが、私からすれば大きなお世話です。あなたは自分で選んだダサい服を着て友達に笑われる機会を不当に奪われたんです。

「きつい言い方に思えるだろうけど、あなたのことを思って意見したつもりだったんだよ。 あなたはすぐショックを受けるからこっちは普通に意見も言えなくなってしまう、社会に出たらこれ以上の理不尽やつらいことはたくさんあるのだから、これくらいで泣かないでほしい。 もっと自分に自信をもって」

自信を持って欲しいなら、ダサい服をダサいまま許してあなたを外に出すべきだったと私は思います。”初めて選んだ服、いい感じじゃん!”って声をかけて、自信をつけてあげるべきだったんです。

あなたの選んだ服が本当にダサいなら、周囲の態度であなたがそれに気づくのがベストです。大事なあなたが傷つかないための親御さんの態度が、あなたをどんどん臆病にしている気がします。もし仮に、親御さんが言う通り”あなたはすぐにショックを受ける”なら、それは誰かの言動に傷ついて、そこから立ち直った経験が少ないからじゃないかな。親御さんが手を差し伸べすぎているせいで、きっちり傷つく機会をあなたは不当に奪われている気がします。

それにね、親の言動に子どもが深く傷つくのは当たり前です。

あなたは高校デビューを試みるくらいまだ若くて、おそらく親の経済的な支配下にいらっしゃることと思います。誰だって、明日食うメシや着る服、住む場所を提供してくれている人間には強く出られないものです。”お前、反抗したな?今夜の夕飯は抜き”って言われたら嫌だもん。あなたの親御さんはそんなことは言わないと思いますが(私も言われたことはありませんが)、そういう根本的な恐怖みたいなものが、子どもの心には必ず隠れていると思います。

だから、親の言うことに深く傷つくことを”おかしいんじゃないか”と思う必要はないですよ。あなたが経済的に自立すれば、あるいは親が年老いていけば、親の支配からは必ずするりと抜けることができます。今のあなたが傷つくのは自然なことなんですよ。

抱いてはいけないと思ったって、変わらず悔しいしつらいし悲しいです。

その気持ち、忘れないで欲しいな〜!!

ここまで、あなたの気持ちに寄り添う形で文章を書いてきましたが、正直私はすでにあなたの親御さんサイドに足を踏み入れつつあると思います。だって、今年37歳になるし。子どもも次の4月には小学生です。
もはや私は親に何かを言われて傷つくよりは、子どもに無神経なことを言って傷つける側の人間なんだなという自覚が芽生えつつあります。遅まきながら。

でもね、私もかつて15歳ぐらいだった時が確かにあったんですよ。親に無神経なことを言われて、”私の好みを否定された、最悪だ、この人は何も分かってないんだ”と思って泣いたことが何度もありました。親を心の中で呪って、その勢いのまま実家を飛び出したんです。

すごく優しくて大好きな親だったら、私はずっと実家を出なかったかもしれない。ある程度ウザくあることが親の務めなのではないかと最近は思うようになりました。

だから、あなたの親御さんがそんな感じなのも、親としての務めを果たしていると言えなくもない。あとはあなたが”親の言っていることは正しいんだ、親の厚意を無碍に扱っている私が悪いんだ”と思うのをやめることです。悲しむのもいい、悔しがるのもいい。でも、”親は正しくて、私が間違っている”と思うのはやめたほうがいいです。

親になってわかりましたが、親もまた、一人のただのつまらない人間です。私がそうであるように、あなたの親御さんもそうだと思う。

だから、今回は着ることのなかったダサい服のことも、あなたは忘れないようにしてほしい。私は、あなたが自分で選んで買ったその服を着て、外に出て欲しかったなと思う。
散々”友達とかにきちんと笑われたほうが良かったと思うよ”と書いておいて今更なんだよ!!と思うかもしれないけれど、”その服、いいねえ!私、その服好きだな”って褒めてもらえる可能性だって十分あったんですよ。そういう可能性ごと失われたことについて、あなたが怒ったり悔しくなったりしたこと、忘れないようにして欲しいなと思います。

Big Love…