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本当の欲望には一生辿り着けない

試験まで2週間を切ってしまったのでいよいよ勉強しないとまずい。まずいのだが…。

世界で一番中毒性の高いゲームことスプラトゥーン3が、試験の2日前に発売されることになってしまった。あーーーー!

このゲームがどれくらい面白いかというと、前身であるスプラトゥーン2のプレイ時間はなんと900時間近い。購入したのが2017年10月なので、かれこれ5年くらいは飽きずにずっと遊んでいたことになる。

このゲームはプレイする人間の人格を変える特性があり(※諸説あります)、どんなに穏やかな人間でも自分のキャラコンの下手くそさにキレたり、マッチングの不均衡さにキレたり…とにかくキレる原因が無限に湧いてくるゲーム、それがスプラトゥーンである。こんなゲームをCERO A指定している任天堂の気が知れない。

子どもがいなかった頃はヤジを飛ばしまくりながらスプラをプレイしていたが、流石に子どもが生まれてからは親としてみっともなさすぎると思い(親じゃなくてもみっともないのだが)、プレイをやめた。
出産育児で一時的にゲームからは完全に離れたものの、ポケモン剣盾が発売されたタイミングでランクマッチ(オンライン対戦)の存在を知り、自分でパーティーを組んで対戦をしたりと子どもが2歳になったあたりから再び熱心にゲームに取り組むようになった。

ポケモンならヤジを飛ばすこともなく穏やかに楽しめる、もう2度とスプラをプレイすることもないだろう…と思っていたところに3の発売が決定した。同じくスプラが大好きな夫と顔を見合わせ、”どうする…?買うか…?”という表情にお互いなり、しかし2人ともプレイすればヤジを飛ばしまくってしまう可能性があったので、教育上の観点から”やめておくか…”という結論に至った。

しかし、先日スプラ3の前夜祭があり(無料でプレイすることができた)、スプラ2とは使える武器も舞台となる地形もかなり違う仕様になっていることを確認し、”やっぱりスプラをやめるなんてできないよ…”という気持ちで即Amazonで購入予約手続きをした。意志が弱い。

新型コロナウイルスの流行と出産育児で複数の人間と集まって遊ぶというイベントが激減したせいか、4対4のチームで他人と協力してゲームをするのがシンプルに楽しかった。これは新型コロナウイルスの流行がなかった2019年以前には全く感じなかったことだった。

スプラにはチャットシステムがないので、声を掛け合って協力することが基本的にはできない。キャラクターはイカかタコの姿をしていて、特殊な言語でウニャウニャ喋っており、プレイヤー同士で意思疎通は図れない。
それでも、味方の動きを読んでうまいプレイが飛び出したりすると、”あ!今意思が通じた!”と思うタイミングがあり、これがかなり気持ちいい。赤の他人とわざわざコミュニケーションが難しい場所で協力する面白さがスプラにはある気がする。

そんなわけで、スプラから長いこと離れていたのに、再びYoutubeでプロのプレイ動画を観たりしている。
何かにハマると、付随して様々な行為が生まれる。プレイ動画を観る、コラボ商品が色んな場所で売り出されるので探しにいく、キャラクターが可愛いのでファンアートを見る。昨日と今日で同じ世界を生きているはずなのに、何かにハマった途端にぶわっと視界が開けて目新しく楽しいものばかりが目に入る。この感覚は何度味わっても面白い。

思うに、スプラそのものが好きなのではなく、スプラに伴って手に入る熱狂が欲しいだけなのかもしれない。ラカンの対象aの話を思い出す。私たちは自分が本当に欲しいものを手に入れることはできない。だから似たもので我慢しなければならない。私が本当に欲しいのは、長い人生の時間を潰し、熱狂させ、正気を失うくらいのめり込めるものだ。私はとにかく退屈するのが嫌だ。現実では全ての熱狂は決して永続しないと分かっていても、昨日とは違う世界の一面を見せてくれるものをいつも探している。

そういう意味では、書くことも熱狂の一種なのかもしれない。書くことを始めてから、週3回の更新に備えて日常生活の中で何か書けることはないかと目を皿のようにして探すようになった。本来であれば忘れられるはずだったワンシーンや、吹けば飛ぶような感情の些細な動きを拾い上げ、自分の中で醸成させる。生の感情よりずっと大きく膨らんだ文章をちまちま書いてはインターネットに放流している。

2週間後に迫った試験の勉強をしなければならないのだが、全くやる気が出ない。試験勉強は一旦覚えたはずのことを忘却しているというイヤな事実を認め、記憶の綻びを埋める単調な作業になりがちである。そこに新しい発見はまるでない。
試験が近づけば近づくほど勉強における脱線は許されなくなる。脱線がなければ新しい知識を目にすることもなく、勉強はひたすら効率的に、忘れていることをインプットし続けるただの作業になる。こんなの面白いわけがない。あと10日だから耐えなければならないが、既に試験が終わった後何をするかばかり考えている。

Big Love…