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カール・マルクス 著『資本論 』第一巻 第七篇 第二十三章 読書メモ

カール・マルクス 著『資本論 』読書メモ(1)~(172)をすでに投稿済ですが、第一巻 第七篇 第二十三章に目次をつけたものを再掲載します。


第一巻 資本の生産過程

第七篇 資本の蓄積過程

第二十三章 資本主義的蓄積の一般的法則

第一節 資本組成の不変なばあいにおける蓄積に伴う労働力需要の増加

資本 の 組成 は、二重の意味に解されねばならない。価値の側から見れば、それは、資本が不変資本または生産手段の価値と、可変資本または労働力の価値すなわち労働賃金の総額とに分かたれる比率によって規定される。

生産過程において機能する素材の側から見れば、各資本は、生産手段と活きた労働力とに分かたれる。

この組成は、一方における充用される生産手段の量と、他方におけるその充用のために必要な労働量との比率によって規定される。私は前者を資本の価値組成と名づけ、後者を資本の技術組成と名づける。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3180). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

資本 の 増加 は、その可変的構成部分、すなわち、労働力に転換される構成部分の増加を含む。追加資本に転化される剰余価値の一部は、つねに可変資本、すなわち追加労働原本に再転化されねばならない。その他の事情が同じであるとともに資本の組成も不変である。

すなわち、一定量の生産手段または不変資本は、それが動かされるため生計原本は、資本に比例して増加し、資本が増加すればするほど、それだけ急速に増加する。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3192). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

富者 を 貧者 から 区別 する ものは、土地や貨幣の所有ではなく、労働にたいする支配力である。・・・貧者に適合するものは、劣悪な、あるいは奴隷的な状態ではなく、安易で自由な従属関係であり、財産を有する人々にとっては、彼らのために労働する者にたいする充分な影響力と権威である。

サー・F・M・イーデン『貧民の状態、イギリスにおける労働階級の歴史』

エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3269). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

資本主義 的 生産 において は、労働力が買われるのは、その労役またはその生産物によって買い手の一身の欲望を充たすためではない。買い手の目的は、彼の資本の価値増殖であり、彼が支払うよりも多くの労働の含む商品の生産であり、したがって、彼にとっては何らの費用をも要せず、しかも、商品販売によって実現される価値部分を含む商品の生産である。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3419). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

「 自然的 人口 法則」 と 称する もの の 根底に横たわる資本主義的生産の法則は、簡単に次のことに帰着する。

資本、蓄積および賃金率の間の関係は、資本に転化された不払労働と、追加資本の運動に必要な追加労働との関係にほかならない。

したがってそれは、二つの相互に独立した大きさの、すなわち一方における資本の大きさと、他方における労働者人口の数との関係ではなく、むしろ結局は、同じ労働者人口に不払労働と支払労働との関係であるにすぎない。

労働者階級によって供給され、資本家階級によって蓄積された不払労働の量が、支払労働の異常な追加によらなければ資本に転化されえないほどに急速に増加するならば、賃金は騰貴し、そして他のすべての事情が同じであるとすれば、それに比例して不払労働は減少する。

エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3473). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

第二節 蓄積とそれに伴う集積との進行中における可変資本の相対的減少

ひとたび 資本主義 体制 の 一般的 基礎が与えられたならば、蓄積の進行中には、社会的労働の生産性の発展が蓄積のもっとも強力な槓杆となる点が、必ず現われる。

アダム・スミスは言う、「賃金を高くするのと同じ原因、すなわち資本の増加は、労働の生産的能力を増進させて、より少量の生産物を生産することを可能にする」。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3510). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

労働 の 生産性 の 増加 は、それによって動かされる生産手段の量に比した労働量の減少において、あるいは労働過程の客体的諸要因に比したその主体的要因の大きさの減少において現われる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3527). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

資本 の 技術的 組成 における この 変化、すなわち、生産手段を活かす労働力の量に比較した生産手段の量の増大は、資本の価値組成に、すなわち、資本価値の可変的組成部を犠牲にしたその不変的組成部分の増加に、反映する。エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3567). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

消費 さ れ た 生産手段 の価値、すなわち不変資本部分のみを代表する価格要素の相対的大きさは、蓄積の進歩に正比例し、労働の代価を支払う他の価格要素、すなわち可変資本部分を代表する価格要素の相対的大きさは、一般に逆比例するであろう。

しかし、不変資本部分にたいする可変資本部分の減少、あるいは資本価値の組成の変化は、資本の素材的諸構成部分の組成上の変動を、ただ近似的に示すに止まる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3574). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

社会的 総資本 の 多数 の 個別 資本への分裂、あるいはその諸断片相互の反撥にたいしては、それらの牽引が反対に作用する。これはもはや、単なる、蓄積と同義である生産手段と労働指揮との集積ではない。

それは、すでに形成された諸資本の集積であり、それらの個別的独立の廃棄であり、資本家による資本家の収奪であり、多数の小資本の少数の大資本への転化である。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3631). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

ここ で 資本 が一つの手に大きな団塊となって膨張するのは、かしこで、多くの手から資本が失われるからである。それは、蓄積や集積とは区別された、本来の集中である。

この諸資本の集中、または資本による資本の牽引の法則は、ここでは展開されえない。簡単な事実的示唆で足りる。競争戦は、商品の低廉化によって演じられる。商品の低廉は、他の事情が不変であれば労働の生産性に依存し、また労働の生産性は、生産の規模に依存する。

したがって、より大きい資本はより小さい資本に勝つ。さらに、一事業をその標準的諸条件のことで営むために必要な個別資本の最小量は、資本主義的生産様式の発展とともに大きくなる、ということが想起される。したがって、比較的小さい資本は、大工場がまだ点在的または不完全にしか征服していない生産部門に押寄せる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3636). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

かく て、 一方 では、 蓄積 の 進行 中 に 形成される追加資本は、その大きさに比して、ますます少ない労働者を牽引する。他方では、周期的に新たな組成をもって再生産されるもとの資本は、従来使用していた労働者をますます多く反発する。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3694). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

第三節 相対的過剰人口または産業予備軍の累進的生産

元来 は 資本 の 量的拡大としてのみ現われた資本の蓄積は、われわれの見たように、資本の組成の不断の質的変化をなして、その可変的構成部分を犠牲にして不変的構成部分をたえず増加させて、行われる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3698). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

労働者 人口 は、 それ 自身 によって 生産 される資本蓄積とともに、それ自身の相対的過剰化の手段を、ますます大量に生産する。

これが資本主義的生産様式に特有な人口法則なのであるが、実際またすべての特殊な歴史的生産様式は、それぞれ特殊な歴史的に妥当する人口法則をもっているのである。

抽象的な人口法則なるものは、人間によって歴史的に干渉されないかぎりにおいて、動植物にとってのみ存在するのである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3743). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

生産 規模 の 突然の痙攣的な膨張は、その突然の収縮の前提だった。収縮は再び膨張をひき起こすが、しかし膨張は、自由に利用しうる人間材料なくしては、人口の絶対的増加には依存しない労働者の増加なくしては、不可能である。

このような増加は、労働者の一部をたえず「遊離させる」簡単な過程によって、生産の増加に比して使用労働者数を減少させるいろいろな方法によって、つくり出される。したがって、近代産業の全運動形態は、労働者人口の一部分の失業者または半就業者への不断の転化さから生ずる。

経済学の皮相浅薄さは、なかんずく、産業循環の時期転換の単なる徴候にすぎない信用の膨張と収縮を、その原因と考えることに示される。

ひとたび一定の運動に投ぜられた天体が、たえず同じ運動を繰返すのと全く同様に、社会的生産も、ひとたびかの交互的膨張と収縮の運動に投ぜられたならば、たえずこれを繰返す。

結果は、さらにまた原因となり、そして、それ自身の諸条件をたえず再生産する全過程の変転する諸時期は、周期性の形態をとる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3823). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

資本主義 的 生産 にとって は、人口の自然的増加によって供給される利用しうるべき労働力の量だけでは、決して充分ではない。それは、その自由な活動のためには、この自然的限度から独立した産業予備軍を必要とする。

これまでは、可変資本の増加または減少には、精確に就業労働者数の増加または減少が対応するものと想定された。

しかし、個々の労働者がより多くの労働を供給し、したがって、労働価格は同じであっても彼の労働賃金は増加し、あるいは労働価格は低落してもその低落が労働量の増加よりも緩慢でさえあれば、やはり彼の労働賃金は増加するというばあいには、可変資本によって指揮される労働者の数は不変であるかあるいは減少してさえも、可変資本は増大する。

このばあいには可変資本の増大は、労働の増加の指標となるが、就業労働者の増加の指標にはならない。各資本家の絶対的利益とするところは、一定量の労働を、より少数の労働者から搾り出すことであって、同様に低廉にか、またはより以上低廉にであっても、より多数の労働者から搾り出すことではない。

後のばあいには、流動させられる労働の量に比して不変資本の支出が増加するが、前のばあいには、この増加がはるかに緩慢である。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3961). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

第四節 相対的過剰人口の種々の存在形態。資本主義的蓄積の一般的法則 

相対的過剰人口 は、あらゆる可能な濃淡をもって存在する。各労働者は、彼が半ば就業しているかあるいは全く就業していない期間には、過剰人口に属する。

過剰人口が、あるいは恐慌期において急性的に、あるいは不況期において慢性的に現われるというように、産業循環の段階転換によって、それは押印される大きな周期的に反復する諸形態を別とすれば、それは、つねに三つの形態をもつ。流動的、潜在的、および停滞的形態がこれである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.4109). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

労働者階級 の 極貧 層 と 産業予備軍とが大きくなればなるほど、公認の被救護貧民もますます増大する。これが資本主義的蓄積の絶対的一般的法則である。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.4225). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

資本主義 体制 の 内部 では、労働の社会的生産力を高めるためのすべての方法が個々の労働者の犠牲において実行されること、

生産の発展のためのすべての手段が生産者の支配搾取手段に変じ、労働者を部分人間に不具化し、彼を機械の付属物に引下げ、彼の労働の苦痛をもって労働の内容を破壊し、独立の力としての科学が労働過程に合体されるにしたがって労働過程の精神的諸力を彼から疎外すること、

これらの手段は彼がそのもとで労働する諸条件を歪め、労働過程中きわめて狭量陰険な専制に彼を服させ、彼の生活時間を蝋度時間転化し、彼の妻子を資本のジャガノート車輪の下に投げこむこと、

これらのことは、第四編において相対剰余価値に生産の分析に際して、われわれの見たところである。

しかし、剰余価値の生産のためのすべての方法は、同時に蓄積の方法であり、まあ蓄積の拡大は、すべて逆に、かの方法の発展のための手段となる。

それゆえ、資本が蓄積されるにしたがって、労働者の状態は、彼の受ける支払いがどうあるにせよ、高いにせよ低いにせよ、悪化せざるをえないということになる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.4242). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

一極 における富の蓄積は、同時に対局における、すなわちそれ自身の生産物を資本として生産する階級の側における貧困、労働苦、奴隷状態、無知、粗暴、道徳的堕落の蓄積である。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.4256). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

かくして、 日に日に ますます 明らかになるのは、ブルジョアジーが運動する生産諸関係は、統一的な単純な性格をもつものではなく、分裂的性格をもつものであること、

富が生産されるのと同じ諸関係のうちで、貧困もまた生産されること、

生産諸力が発展するのと同じ諸関係のうちに、抑圧力も発展すること、

この諸関係は、それらが同時にたえずブルジョアジー階級の成員の富を破壊し、たえず増大するプロレタリアートを生産することによってのみ、ブルジョア的富、すなわちブルジョア階級の富を生産することである。

カール・マルクス『哲学の貧困』岩波文庫版、135ー136ページ

エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.4261). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

【私見:小生は戦後1年目の1946年生まれなので、60年代まで、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などがどんどんと売れまくっていたことは実感していた。

この頃は、高度成長期であり、日本は、景気が良かった時代であった。つまり、このころまでは1億総中流化などと称して、資本主義を謳歌していた時代であった。

ところが、好景気にも影がさしてきて、80年代後半にバブルがはじけてからは、給料の上昇も止まり、低所得者層(非正規社員)が大量に増加するようになった。

それは、マルクスが指摘しているように、資本家の富を増加させるためには、貧困層を増加させなければならないという資本主義的蓄積の敵対的性格(新自由主義、グローバリズム)が、もろに露出した結果でもある。】

第五節 資本主義的蓄積の一般的法則の例

a 1846~1866年のイギリス

近代 社会 の いかなる 時期 も、最近の200年間ほど、資本主義的蓄積の研究にとって好都合ではない。この時期は、あたかもフォルトゥナトゥスの財布が見出されたかのようである。そしてすべての国のうちで、イギリスがまたもや典型的な実例を提供する。

イギリスは世界市場で第一位を維持し、資本主義的生産様式はただここでのみ充分に発展しているからであり、そして最後に、1846年以来の自由貿易の至福千年王国の実現が、俗流経済学の最後の逃げ場を遮断したからである。

最近の半世紀におけるイギリス人口の絶対的増加は、非常に大きかったにもかかわらず、相対的増加、すなわち増加率は、断続的に減少した。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.4392). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

納税 義務 ある 利潤(借地農業者およびその他の若干の項目は含まれない)の増加は、大ブリテンについて、1853年から1864年までに50.47%(すなわち年平均4.58%)だったが、同じ期間における人口の増加は約12%だった。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.4410). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

労働者階級 が 依然として「貧乏」で、有産階級のために「恍惚とさせる富と力の増加」を生産したのに比例して、「貧の度を減じた」にすぎないならば、それは相対的には相変わらず貧乏である。

貧窮の極度が緩和されなかったとすれば、それは増大したのである。富裕の極度が増大したからである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.4504). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

貧民 統計 の 分析 に際して は、二つの点が重視されるべきである。

一方では、貧民群の干満運動は、産業循環の周期的時期転換を繁栄する。

他方では、資本の蓄積とともに階級闘争と、したがって労働者の自意識とが発展するにつれて、被救護貧民の現実の範囲にかんして、政府の統計はますます欺瞞的になる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.4771). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

しかし、 最近 10 年間 の ロンドン における 餓死」の怖るべき増加は、救貧院の、この貧困刑務所の奴隷状態にたいする、労働者のますます甚だしくなる嫌悪を、無条件に証明するものである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.4778). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

b イギリス工業労働者階級の低賃金層

きわめて 勤勉 な 労働者 層 の 飢餓 苦 と、資本主義的蓄積ににもとづく富者の、あるいは粗野なあるいは洗練された奢侈的消費との内部的関連は、経済的諸法則の知識をもってのみ明らかにされる。

住宅についてはそうではない。成心のない観察者ならば、誰でも認めるように、生産手段の集中が大量であればあるほど、それに応じて同じ空間における労働者の密集も、ますます甚だしく、したがって、資本主義的蓄積が急速であればあるほど、労働者の住宅状態は、ますます悲惨になる。

富の進展にともない、不良建築地区の取払い、銀行や大商店などの巨大な建物の建築、取引上の往来や贅沢な馬車のための道路の拡張、鉄道馬車の開設等による都市の改良が行われ、そのために目に見えて、貧民はますます不良な緻密な片すみに追込まれる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.4881). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

c 移動民

次に われわれ は、 その起源を農村地方にもち大部分は工業に従事する一つの人民層に眼を転じよう。

この人民層は、資本の軽歩兵であって、資本は、これを自分の必要に応じて、あるいはこの点、あるいはかの点に投ずるのである。それは行軍しないときには、野営している。移動労働は、種々の建築工事、排水工事、煉瓦製造、石灰焼き、鉄道建設等に利用される。エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.5119). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

「 世論」 や あるいは 衛生警察 と 衝突 し ても、資本は、なんの遠慮もなしに、労働者の機能と家庭生活を拘束する一面では危険で一面では侮辱的な諸条件を、労働者のより有利な搾取のために必要だということで弁護する。

資本が工場における危険な機械装置にたいする保護設備や鉱山における換気と安全装置を節欲するばあいなどは、それである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.5212). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

d 恐慌が労働者階級の最高給部分に及ぼす影響 

本来 の 農業 労働者 に 移る 前 に、 なお 一例を挙げて、恐慌が労働者階級の最高給部分にたいしてさえ、労働者階級中に貴族にたいしてさえ、いかに影響するかを示さねばならない。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.5239). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

労働者 の 状態 の 特徴を示すために、1867年の初めに苦難の中心地を訪問した『モーニング・スター』に一通信員の詳細な報告より

ロンドンの東部のポプラー、ミルウォール、グリニッジ、デットフォード、ライムハウス、キャニング・タウンの諸地区では、少なくとも1万5000の労働者が、その家族とともに極度の窮乏状態にあり、そのうちには、3000人以上の熟練機械工がある。彼らの予備金は、6ヶ月から8ヶ月の失業のために使い果たされている。

エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.5249). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

e イギリス農業プロレタリアート

資本主義 的 生産 および蓄積の敵対的性格が、イギリス農業(牧畜を含む)の進歩とイギリス農業労働者の退歩とにおけるより、その野蛮さを実証している所はない。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.5385). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

農業 革命 の 第 一幕 は、作業農地にあった小屋を、最大の規模で、また上から与えられた合言葉にしたがってのように、一掃することだった。

かくして、多くの労働者が、村落と都市に避難所を求めることを余儀なくされた。そこでは、彼らは屋根裏やぼ家や地下室に、最悪地区の片隅に、屑のように投げこまれた。

民族的偏見に囚われたイングランド人の証言によってさえも、稀に見る家庭への愛着や屈託のない快活さや家庭生活の清潔を特色としていた幾千のアイルランド人の家族が、かくして、にわかに悪徳の温室に移植された。

男たちは、いまでは付近の借地農業者のもとに仕事を求めて、ようやく日ぎめで、したがって、もっとも不安な賃金形態で、雇われねばならない。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.6372). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

アイルランド は 三五 〇 万 の 人口 でも まだ 貧乏 で あり、そしてその貧乏は人口過剰のためであるから、イングランドの牧羊場であり放牧場であるというアイルランドの真の使命を果たすためには、その人口減少は、まだまだ進行せねばならないということを。(188b)

【(188b)農業革命を強行してアイルランドの人口を大地主たちの気に入る程度に稀薄にするために、飢饉およびそれに誘致された諸事情が、個々の土地所有者によっても、イギリスの立法によっても、いかに計画的に利用されたか、私は、これを本書三巻中の土地所有にかんする篇で、詳細に証明するであろう。】
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.6486). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

救貧法 監督官の報告中には、就業の不安と不規則、労働中絶の頽廃と長期継続、すべてこれらの相対的過剰人口に徴候が、それぞれ、アイルランドの農業プロレタリアートの苦痛として現われている。われわれはイングランドのもとでも、類似の現象に遭遇したことが想起されるであろう。

しかし、工業 国 で ある イングランド では、 産業予備軍 が 農村補充されるが、農業国であるアイルランドでは、農業予備軍が、駆逐された農村労働者の避難所である都市で、補充されるということである。

かしこでは農業に過剰人口が、工場労働者に転化される。ここでは都市に放逐された者は、同時に都市の賃金を圧迫しながらも、依然として農業労働者であって、労働需要に応じて、たえず農村に送り返される。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.6408). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

【私見:アイルランドはイングランドに、これほどまでに、痛めつけられていたとは、想像すらしなかった。農業国であったインドを植民地化して、インドを疲弊させたように、農業国のアイルランドをイングランドの地主どもが利用しつくしたということか】

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