力を抜いて漂っている。
ちょっと一息ついている。
抽象的な表現をすると、波間にプカプカと体を浮かべて、手足の力を抜いてダラッとしている。次の波がザブンときて頭から海水をかぶっても息が十分持つように、今は息継ぎをしている。
ここの所、少しパタパタとしていた。大抵、何が起きても、いつものこととして受け流したり、そういうこともあると受け止めたりするのだけれど、今回は想定と全く異なるところから物事が大きく動いた。
予想をしていなかったので、まぁまぁ驚いている。
ただ、何事もなるようになるし、なるようにしかならない。なので、手の届く範囲内で現状を咀嚼しつつ、自分にできることを見つけていく。取りこぼすこともあるけれど、やることは今までとあまり変わらない。
コマンドが入力されるまでは省電力で待つ。命令が入力されればその都度、状況に応じて動く。
インターバルの間に心の呼吸を整えて、時期が来たら次の動作へ移れるように備える。
「人生は楽しまなきゃ損だよ。どっちを向いても崖っぷちなら、出来るのはもう笑うことくらいさ」
と、私の頭の中のポジティブ担当が言う。
あくまでイメージの話で、人生は万事塞翁が馬だし、別にそこまで元気いっぱいにポジティブシンキングじゃなくていいし、別に崖っぷちにも立っていない。先ほどもソファに腰掛けてポテトチップスを食べながらくつろいでいたし、足を組んで先々週号の週間少年ジャンプを読んでいた。不安で血の気が引いてドキドキもしないし、心配のあまり涙ぐんでしまうこともない。
人の姿を、鏡に写すように見てしみじみ思う。私は多分、優しくないのだろう。
配慮や思いやりが足りていないんだな、と、漠然と感じる。
そうして、そういうものがもし欲しければ、ゼロからでも育てていけばいいんだろう。
何はさておき、状況を整理して必要なものを洗い出したら、リュックの中身をなるべく軽くして、まずは目を閉じて休むことだ。眠れない日もある。そういうものだ。今日上手く寝付けなくても明日かその次の日には少し眠れる。そうやって日々を重ねてきた。
どんな風に着地するのだとしても、その道のりが長くとも、或いは短くとも、なるべく緩やかに進みたい。
いつかたどり着く場所の、まだ見ぬ景色。
私はその場所に静かに佇みたい。
だから、今は凪始めている波間で、力を抜いて漂っている。
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