隣のインド人サイキックおじさんに痛いところを突かれ、叫びまくった夜のこと

私は今サンタモニカのアパートメントに住んでいるのですが、私の隣の部屋にはインド人のおじさんが住んでいます。

うちのアパートには共用Wi-Fiがなくて、契約めんどいので今までスマホのデザリングで使ってた。でも限界がある。やっぱりWi-Fiで思い切り映画を観たい。
これ日本でも思うんだけど、Wi-FiのないアパートでみんなそれぞれWi-Fi契約するのめちゃめちゃ効率悪くないですか?現にうちのアパートにはアホみたいな数のWi-Fiが飛んでる。あーもう見える見える。飛んでるのが見える。飛びすぎだよお前ら!隣同士の部屋とかは一緒に契約して分け合えたらいいのにと思う。だってバカにならない値段だし、1年単位での契約の規約とかいろいろあるから、永住者じゃない我々にとっては結構面倒くさい。
ちょろそうなWi-Fiのパスワードを予想して勝手に使おうとしてみたが全滅(あたりまえ)。
なので図々しく隣のインド人のおじさんに頼んでみた。
「あの、Wi-Fiってどこの会社使ってます?契約したいんだけど難しくって・・・」から始め「みんなどうしてるのかしら、一人ひとり契約してるの?」とじわじわ攻め「あの〜図々しいかもしれないけど、もしよければお宅のWi-Fiシェアしてくれないですかね・・・祖国を一人離れお金に困ってるかわいそうな学生なんですぅぅ・・・」
「あ、おっけーいいよ」
ちょろかった。ラッキー。ありがとうインド人のおじさん。

そして部屋に呼ばれると、そこにはドアを開けた瞬間からおびただしい数の本や書類。そしてそれに囲まれた立派なデスク。なんか思ってたのと違う。バリバリ仕事してる系の人だったんだ。
「なんの仕事してるの?」と聞くと
「うーんいろいろやってるよー。自己啓発系の講演して回ったり、旅行のオーガナイズしたり、コンサルもするし、あ、占いでも稼いでるよ。名前は出しちゃいけないんだけどLAの結構有名なセレブとか政治家とか、よくみてるよ」
おお、ほんとに思ってたのと違う。まさかのビジネスマンサイキックだった。そういえば喋り方とか立ち振舞がなんかそれっぽい。すべてを見透かされてる心地になるタイプの人だ。全然ちょろくない。カレーの匂いがちゃんとしたこと意外はすべて予想外だ。

話を聞くと、インドで生まれ育ち、海外に出るなんて考えられないような街からなんやかんや頑張って渡米する道を切り開き(超大変だったらしい)、カナダのクイーンズ大学をビジネスで卒業し(高円宮憲仁親王と友達だったらしい)、今はLAを拠点に15人の女性アシスタントを引き連れて仕事をしている、ということらしい。やるなぁおじさん。

占いとか大好きなのでもっと突っ込んでみた。
手相+オーラ+生年月日をみるらしい。四柱推命をアレンジしたやつっぽかったな。
いろいろ聞いてたら頼んでもないのに占ってくれた。
生年月日を教えるとなんか計算しだして「あーあなたはスピリチュアル的にはかなりレベル高いね。霊感とかもあったでしょ?いろんなものを感じる能力に長けてるし結構なんでもできるから周りからは一目置かれやすい。ただ…お金に関して弱すぎる!お金の計算ができない、お金のために我慢ができない、金銭欲は全くないくせに生活にはお金がかかるタイプの人だから困ったもんだね

ああああああああ

今の悩み全くそれです。はい、お金の計算できません。お金を計画的に貯める能力が著しく乏しい。お金のために我慢ができない。「とりあえずバイトして…」ができない。そのくせにお金のかかる物事が好き。一生まとわりついてくる問題があるとすればそれはお金のだらしなさだ、とLAに来てから余計に痛感してたところなのです。
あー書いてるだけで辛くなってきた。やっぱりこれは石油王と結婚するしかないのだろうか・・・

インド人サイキックおじさんはさらに続ける。
「うーんあとね、あなたのエネルギーはめちゃめちゃ流動性が高い。他のエネルギーに呼応しやすいからポジティブなところにいればいいけど、ネガティブなエネルギーももろに受けるし、場合によっては自分のエネルギーも持っていかれちゃう。あと流動的すぎて絶望的に熱しやすく冷めやすい。ほんっっとうに好きなこと意外はまじで継続できない。好奇心旺盛だとも言えるけど、浮気性だね、すぐいろんなことに手を出すでしょ。んで規則正しい生活は無理、ルーティーンワークは全くできない

わかりきってる弱点をほぼ初対面のおじさんに突きつけられた。
私はただWi-Fiのパスワードを聞きに来ただけなんだ!!ただそれだけだったんだ!!
「22年自分と一緒に生きてればそれくらい言われなくても気づくわ!まじで継続できないとか言うな、少しは努力してるわ!!」という気持ちを抑え、「あーたしかに、そういうとこあるかも〜」などとヘラヘラ笑い、全力で「さて、Wi-Fi!」という顔をした。はやくWi-Fiくれ〜。

するとインド人おじさんは言う。
「ちょっとモチベーション上げてみる?」

(・・・??ちょっとモチベーション上げてみる?とは?)

そしておじさん、おもむろに白い紙とペンを取り出し、私に差し出す。
「そこにさ、自分のゴールとそのためにやらなきゃいけないことを書き出してごらん?」

くぅ〜なんかよくわかんないけど何かが始まってしまった〜
モチベーション上げたいなんて言ってないし、なんならWi-Fiへのモチベーションが高まりすぎて困っている〜
でももう逃れられない〜モチベーションでもなんでも上げてくれ〜


さてこのあと、

私は自分の目標やらそのための行動やらを紙に書き、それを暗唱。いや、ガチの暗唱。立ち上がり、体幹に力を入れて、拳を握り、お腹からでかい声を出す。ちょっと手を抜くと「もっと大地の力を感じて!!」「もっと感情込めて!伝わらないよ!」などど何度もやり直しをさせられる。

ここは木造アパートの1階。なんでも筒抜けのこの建物には私の声が響き渡っていただろう。
あぁい!うぉおおおんと!とぅぅうう!びぃぃいいい!」
「あぁい!うぃぃぃる!」「あぁぁい!まぁぁすと!」
ごめん他の住人、わけのわからない叫び声をあげて。こんな必死に叫んでるけど言ってること「お金の計算をできるようにしたい」とか「朝に寝るのをやめます」とかそんなんだから。もう勝手にやれよって感じだよね。私もそう思う。

そして、そろそろ頭の中では
「あぁい!うぉおおんと!ゆぅあ!わぁぁいふぁぁぁぁぁい!!」
と叫んでいた頃、どうやら感情がよくあらわれたのだろう、インド人おじさんは満足げな顔で「よし、これであんたも成功するよ」と言ってこの地獄のようなレッスンを切り上げてくれた。
時計を見ると23時。おいばか、3時間も拘束されてたのか。
こんなにWi-Fiを遠くに感じたことはない。もう私にはWi-Fiが見えない。あんなにたくさん飛んでたのに・・・

そしてやっとWi-Fiのパスワードを教えてもらい、(さすがアメリカ、ちゃんと「あなたのWi-Fiを使います」とサインさせられる、抜け目ないおじさんだ)自分の部屋に戻ってWi-Fiが通じた瞬間には、涙が出そうになった。長い道のりであった。全然ちょろくなかった。

ちなみに、その書いた紙は毎朝暗唱しなきゃダメだよ!と言われているので、礼儀正しい私は未だに「あぁい!うぉおおんと!」と叫ぶ朝があるのです。(朝に目覚める日があればということですが)

どうか、どうか、おじさんに聞こえてくれていたらいいと思う。

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