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『舟を編む』ドラマと小説とセンセイの言葉

遅ればせながら……
NHKBSで放送されていた『舟を編む~私、辞書つくります~』とってもいいドラマでした!
どんなところが、これほど私に響いたのか改めて考えてみると、

  • 演じている役者さんが、みなさんイメージにピッタリハマっている

  • 原作からのアレンジが素晴らしい

  • 現代風に電子辞書やコロナ禍の話題を盛り込んでいる

辞書をつくり上げるまでにかかる膨大な年月。
そして、辞書づくりにそそぐ情熱に感動しました。
それだけではなく、「言葉はだれかとつながるためにある」というこのドラマのテーマ。
時間が経つにつれ、胸にしみてきました。
それはつまり、言葉は伝えるための大切な手段ということではないかと思います。

センセイがおっしゃったこと

「言葉は伝えるための大切な手段」ということをつらつらと考えているとき、思い出した言葉があります。

私は学生時代、熱心に英語を勉強していました。
それはつまり、熱心に以下の訓練を積んでいたといえます。

  • 多くの単語を正しいスペルで暗記する

  • 正しい文法で文章を作る

  • 正しい発音で話す

  • 正しく聞き取る

    いつものように授業を受けていたある日、センセイがおっしゃいました
    「あなたたちは、英語を学ぶことを目的にしてはいけません。
    英語を使ってなにを伝えるかが大切です。」

当時の私は生意気にも、英語を習得できれば「なんでも」伝えられるようになるのでは??と、思ったように記憶しています。
もちろん、口には出しませんでした。

英語で伝えるべき「なにか」を持っていなかった私は、恥ずかしながらセンセイのおっしゃっていることがよく理解できませんでした。
「英語でなにを伝えるか」って、日本文化とか?それとも日本経済や古典文学……?

英語で伝えるべき「こと」とは、今思えばとてもシンプルです。
「この素晴らしさを知って!」「これが好き!」「私はこう思う!」など、その人のなかから出てくる「なにか」。

「英語」を「言葉」に置き換えても同じこと。
言葉を使ってなにを伝えるかが重要なんだと。
顔も名前も忘れてしまったセンセイの、おっしゃった言葉と声が記憶の底から浮かび上がってきたんです。

三浦しをん著『舟を編む』

ドラマを見たあとに、久しぶりに原作小説を読み返しました。
三浦しをん著『舟を編む』です。

小説『舟を編む』からは「言葉は記憶である」「愛も心も思考も言葉なしにはかたちづくられない」というメッセージがありました。

主人公の一人である馬締(まじめ)の妻・香具矢(かぐや)は板前です。
香具矢が馬締について以下のように語っています。

「おいしい料理を食べたとき、いかに味を言語化して記憶しておけるか、板前にとって大事な能力とはそういうことなのだなと、辞書づくりに没頭する馬締を見て気づかされました。」

引用:『舟を編む』三浦しをん著/光文社

主人公の一人である岸部みどりは、下記のように考えます。

なにかを生み出すためには、言葉がいる。岸辺はふとはるか昔に地球上を覆っていたという生命が誕生する前の海を想像した。

引用:『舟を編む』三浦しをん著/光文社

「なにかを生み出すためには、言葉がいる」まさに!
私たちは言葉で考えたり記憶したり、そして気持ちを伝えたりしているんですよね。

まとめ

ドラマ『舟を編む~私、辞書作ります~』を見て言葉についてずっと考えていました。
「言葉は伝えるための大切な手段」

小説『舟を編む』を読んで、さらに言葉の大切な役割に気づきました。
「言葉は記憶」
「心も愛も思考も言葉があってつくられる」

自分の言葉で伝えることを大切にしていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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