ひとつびき

庭を通し 風土を見つめ 人に学び 五感を研ぎ澄ませ 何でもないことに気付くため、歩き続…

ひとつびき

庭を通し 風土を見つめ 人に学び 五感を研ぎ澄ませ 何でもないことに気付くため、歩き続ける。明日は何が見えるのか・・・・・ 【植木屋50歳】

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作庭意

庭は 目で見るものではない 目をつむり 息を落ち着かせると 静かな色が見えてくる 私はそれらの 小さな声と向き合い 表しているだけである

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茅葺

ちょっとひにくな話があるようだ 庭と屋根 庭というものは建物があって初めて成り立つ。またその逆もそうであろう。 庭という景色を感じる時に建物、四阿(アズマヤ)で…

ひとつびき
1か月前
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苔庭とそうじ

とある学生に苔庭のそうじについて質問された。 職人の仕事は体で覚えていくために言葉での説明が思い浮かばない頭になっている。 しかし、何もわからない学生に「箒を使っ…

ひとつびき
8か月前
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作庭私論 「旅の中」 ⑦

すべてひっくり返された 安諸親方の下での修業が始まりました。 しかしそれは今まで習ってきたことをすべてひっくり返されたような気分でした。 とにかくとんでもない親…

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作庭私論 「旅の中」 ⑥

直感的に湧き上がってきた感情 ヘンテコおばさんから4年前、今から11年前のことです。 梅雨終いの豪雨を別府の鉄輪温泉で宿っていました。 どうにもこうにもならないと…

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作庭私論 「旅の中」 ⑤

九円の因縁 今から七年前にお世話になったときです。 金が無くなり野宿の旅となり、福山へたどり着いたとき、持金はたったの九円でした。そのときは一日三食の飯が食べら…

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作庭私論 「旅の中」 ④

情熱の塊 「おったおったあ、早よう棒もって来い。」 朝メシ前から裏の田んぼの畔で叫んでるのは、広島県福山市の清山園の親方です。 「おう、赤じゃ。」 それはマムシで…

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作庭私論 「旅の中」 ③

これは2008年・平成20年9月1日発行 庭 No.183 建築資料出版社で取り上げて頂き、作庭私論のコーナーで書き留めた、自論というよりも自身を組み上げてきた成り立ちのよう…

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作庭私論 「旅の中」 ②

ハガネのような世界 高校。ほとんどの生徒が当然のように進学を志望する何の特色もない、ごく普通の高校でした。 私はなんとなく職人がいいと思っていました。そして1年…

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作庭私論 「旅の中」 ①

屋久島でのデキゴト 屋久島尾之間。 この日はまれに良く晴れ渡り、真っ青な水平線の果てにトカラ列島が望め、後ろを振り向くとモッチョム岳が空に突き上がるようにせり立…

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旅とはなんであろうか 振り返ってみると私もいわゆる旅のようなものをしてきたようにも思う。 40リットルほどのザックに植木バサミを差し込み方々へ出かけていった。 あ…

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亀戸という所

朝っぱらコンビニだと言うのに何やらぼやいている人がいる レジでオヤジがごねているのだ (めんどくせぇジジイだな朝っぱらから) おかげで二つあるレジが一つ塞がってし…

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ある夏の日

四国 讃岐の地形はとても穏やかで眺めていて心が落ち着く、瀬戸内の島並がそのまま陸に続いているようだ。 ぽっぽっ、と柔らかな山が野に浮かんで夏空に良く映えている。 …

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春も哀れかな

今 まさに萌葱の時 武蔵野に浮かぶ森の梢は、まさに まさに、その時である 二月の始め、立春を過ぎると、森は すこーしずつ、水をあげてくる その梢は、少しずつ 少…

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庭シンポジウムに参加して

庭の多様性と拡張する庭師の仕事 先日、季刊誌NIWAが主催するシンポジウムが開催され参加してきた。 私が参加したのは第2部トークセッションで、大阪で活躍する同業者と…

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庭に手を入れる

海を見渡す、陽だまりが心地の良い庭だ。 とある物件のオーナーが代わり、より良い庭空間にすると言う新規の仕事依頼だ。 そしてそこは昭和期に、建築含め某有名建築家が…

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作庭意

作庭意

庭は
目で見るものではない
目をつむり 息を落ち着かせると
静かな色が見えてくる
私はそれらの
小さな声と向き合い
表しているだけである

茅葺

茅葺

ちょっとひにくな話があるようだ

庭と屋根

庭というものは建物があって初めて成り立つ。またその逆もそうであろう。
庭という景色を感じる時に建物、四阿(アズマヤ)であったり、塀や垣根であったりその屋根が目に入るということは大切なことなのだ。

日本の建物の特徴は屋根であると感じる。
神社であっても、お寺でああっても、民家であっても。
雨の多い日本では建物を守る大きな屋根、本来 大きいということが大

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苔庭とそうじ

苔庭とそうじ

とある学生に苔庭のそうじについて質問された。
職人の仕事は体で覚えていくために言葉での説明が思い浮かばない頭になっている。
しかし、何もわからない学生に「箒を使ってササっとやるんだ」なんて言っても乱暴になってしまう。
そこで、自分が何を学んできたのか頭の中を整えてみることにする。

苔庭とそうじ

庭の地表面を一般的な価値観で大きく簡単に分けると、土面、砂利面、石面、水面となり ます。
そして土を

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作庭私論 「旅の中」 ⑦

作庭私論 「旅の中」 ⑦

すべてひっくり返された

安諸親方の下での修業が始まりました。

しかしそれは今まで習ってきたことをすべてひっくり返されたような気分でした。

とにかくとんでもない親方で、庭のことしか頭になく、他のことはメチャクチャなのです。

でも親方には、本当にたくさんのことを学びました。

職人としてはもちろん、四ツ目垣の立子一本を山に取りに行くことから、屋根の葺き方までさまざまです。

しかし一番大事だと

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作庭私論 「旅の中」 ⑥

作庭私論 「旅の中」 ⑥

直感的に湧き上がってきた感情

ヘンテコおばさんから4年前、今から11年前のことです。

梅雨終いの豪雨を別府の鉄輪温泉で宿っていました。

どうにもこうにもならないということで、2度目の屋久島を目指すことにしました。

屋久島は梅雨が明けていました。

意外とカラッとしていて風が爽やかです。

トカラ列島も夏空の中、気持ち良さそうです。

ある沢を登っていた時です。

ヤマモモの木陰の下、大きな

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作庭私論 「旅の中」 ⑤

作庭私論 「旅の中」 ⑤

九円の因縁

今から七年前にお世話になったときです。

金が無くなり野宿の旅となり、福山へたどり着いたとき、持金はたったの九円でした。そのときは一日三食の飯が食べられ、心底ありがたい気持ちとなりました。
 
この九円には因縁のようなものを感じます。ここに着く一ヶ月半ほど前だったでしょうか。愛媛の宇和島から西海町へ向かって歩いているときです。

長い登り坂の途中、後から自転車が近づいてきて、
「お遍

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作庭私論 「旅の中」 ④

作庭私論 「旅の中」 ④

情熱の塊

「おったおったあ、早よう棒もって来い。」

朝メシ前から裏の田んぼの畔で叫んでるのは、広島県福山市の清山園の親方です。
「おう、赤じゃ。」
それはマムシです。
顔中くしゃくしゃにして笑う姿はまるでガキ大将そのものです。ゲテモノ好きの親父さん、それを焼酎に漬けて飲むのです。
作業小屋の中には、セットウやコヤスケ、コンプレッサーにフイゴなどの硬派な庭の道具に混じって並んでいるのが、マムシの

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作庭私論 「旅の中」 ③

作庭私論 「旅の中」 ③

これは2008年・平成20年9月1日発行 庭 No.183 建築資料出版社で取り上げて頂き、作庭私論のコーナーで書き留めた、自論というよりも自身を組み上げてきた成り立ちのようなものを書き綴ったものです。
それをnoteに分割して引用します。一部固有名詞など隠す場合があります。

土佐のイゴッソウその数年後、私は大阪の造園会社に勤めていましたが、会社の方向性が変わったので旅に出ることにしました。九月

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作庭私論 「旅の中」 ②

作庭私論 「旅の中」 ②

ハガネのような世界

高校。ほとんどの生徒が当然のように進学を志望する何の特色もない、ごく普通の高校でした。
私はなんとなく職人がいいと思っていました。そして1年のとき先生に大工になるにはどうしたらいいかたずねました。
先生は、大工になるにも大学に行ったほうがいいと言われました。
大学と聞いてすぐ考え直し、
「それじゃあ植木屋だ、なんだか独特で、ようすがいい」と決めました。
そして2年の時の修学

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作庭私論 「旅の中」 ①

作庭私論 「旅の中」 ①

屋久島でのデキゴト

屋久島尾之間。
この日はまれに良く晴れ渡り、真っ青な水平線の果てにトカラ列島が望め、後ろを振り向くとモッチョム岳が空に突き上がるようにせり立っています。
濃い緑の間に民家がポツリポツリと建ち、坂道はゆるやかに曲がりくねっていて気持ちがいいです。
その坂道をヤマモモの実を食べながら登って行くと、突き当たりが尾之間温泉、地域の住民が入る風呂です。
その脇に蛇ノ口の滝に行ける登山口

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旅

旅とはなんであろうか

振り返ってみると私もいわゆる旅のようなものをしてきたようにも思う。
40リットルほどのザックに植木バサミを差し込み方々へ出かけていった。
あの時のその瞬間、旅だと感じていたかは定かでないが、
満ち溢れた好奇心と時には空腹と疲労で精神が混乱していたことは覚えている。

広辞苑で:旅:と調べてみると
:住む土地を離れ、一時他の土地に行くこと:
となっている。
となると、私は旅を

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亀戸という所

亀戸という所

朝っぱらコンビニだと言うのに何やらぼやいている人がいる

レジでオヤジがごねているのだ
(めんどくせぇジジイだな朝っぱらから)
おかげで二つあるレジが一つ塞がってしまっている

しかし、どう言うわけかこの街ではさほど不思議な光景に感じない

去り際オヤジは私に向かい
「お、どっかで祭りがあるのか。」
「無いだろ 仕事だっ!」
私は鯉口シャツに腹掛けをしているのでそう言ったのであろう

亀戸
東京都

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ある夏の日

ある夏の日

四国

讃岐の地形はとても穏やかで眺めていて心が落ち着く、瀬戸内の島並がそのまま陸に続いているようだ。
ぽっぽっ、と柔らかな山が野に浮かんで夏空に良く映えている。
しかしそれ以外の場所は険しい山が多い。
急な斜面によくもまあという段々畑が夏の日差しにじりじりと照らされていた。

縁があって立ち寄った町ですごい段々があるという話を聞いて行ってみることにした。
町からは鉄道が通って無いので歩きだ。

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春も哀れかな

春も哀れかな

今 まさに萌葱の時

武蔵野に浮かぶ森の梢は、まさに まさに、その時である

二月の始め、立春を過ぎると、森は すこーしずつ、水をあげてくる

その梢は、少しずつ 少しずつ、日に日に、赤みをおびて太くなって行く

そして 今 全力で若葉を吹き始める

どんなに寒が戻ろうが、誰もこれを止めることは出来ない

喜ぼうが 惜しもうが 春を止めることは出来ない

これはこれで、なんと せつなく 哀れなこと

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庭シンポジウムに参加して

庭シンポジウムに参加して

庭の多様性と拡張する庭師の仕事

先日、季刊誌NIWAが主催するシンポジウムが開催され参加してきた。

私が参加したのは第2部トークセッションで、大阪で活躍する同業者と、この春この道2年目をむかえる見習いの若い子たち数名で庭の仕事の魅力と後継者問題について話し合って来た。

このシンポジウムにはあるきっかけがある。

NIWA the rookies meeting と言うキャッチコピーを元に私達

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庭に手を入れる

庭に手を入れる

海を見渡す、陽だまりが心地の良い庭だ。

とある物件のオーナーが代わり、より良い庭空間にすると言う新規の仕事依頼だ。
そしてそこは昭和期に、建築含め某有名建築家が設計していると言うことで、オーナー関係者は著しい変化を求めてはいない。

それでは『より良い』とは何をすれば良いかということになる。

一言で表せば、『その場に合わせる』と言う事になる。

今まで、この庭は一般的な維持管理をされて来たと感

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