『なぜ男性は「女性にAEDを使え!」に従わないのか』2024-04-30
Xでは何度か、女性に対するAED使用率の低さが問題になっている。
何周目か数えていないが、この4月頭にも「女性にAEDを使うことの危険性」と、人名のためにそれを説得しようとする男性――といっても早々にその気高い志を装おうとする態度は雲散霧消し、冤罪を心配する人々に対してマウントを取ることに必死になっていたのだが――とのレスバが行われていた。
女性に対するAED使用率の低さは、単にX上で論争が起こっているだけではなく、実際に京都大学による調査でも確かめられている。調査によると、高校生あたりから緊急時においても顕著にAED使用率に男女差が現れる。
Xでは「白饅頭」のアカウント名で知られる文筆家の御田寺圭氏は、この現象を、「トロッコ問題」になぞらえ、1人を選ぶのでも5人を選ぶのでもなく最初からレバーを握る立場になることから逃避する戦略であると分析している。
すなわち、いたるところで倫理的に非の打ち所のない行動を求められる現代社会において、周囲の注目を集める「当事者」になることを恐れる心理であるということだ。これは的を得ていると筆者も思う。
この趨勢に対して、ネット上の女性たちからは怒りの声が、そして医療界あるいは公共機関からは、AED使用をためらわないように注意喚起が行われたり、女性への「配慮」を行うための器具などが提供されたりしている。
しかし男性たちからは「これで安心!」というような声は聞かれない。
むしろ、そのようなものが必要となるということこそ、男性が女性にAEDを使用することにはリスクがあるのだということの証拠だとみなされている。
これは無理のない心理である。
たとえば、あなたがまったく知識の無いある国(仮にA国とする)に出張に行くことを命じられたとしよう。
そこで「どんなところか分からないし心配だなあ」とふと不安を口にしたら、周囲の人が大慌てで「大丈夫大丈夫!!良いものがありますよ!!これでA国でも安心ですね。だからA国人を差別しないでくださいね!」などと言いながら、防弾チョッキや護身用の武器を手渡してくる。そしたらどうだろう。あなたは安心するだろうか。
いいや。それどころか「いったいA国とはどれほど恐ろしいところなんだ」と震え上がるに違いない。
また、男性の警戒心を「根拠のないビビリ」と笑い飛ばし、侮蔑することでAED不使用をやめさせようとする攻撃もよく観測される。
しかし、そんなことは逆効果にしかならない。
そんな侮辱をされればされるほど、自分達の尊厳や立場がいかに軽視されているかを男性たちに実感させることにしかならないからだ。
加えて、そんな対応をすれば自分達の態度を硬化させ、かえってAED使用から男性たちを遠ざけ、女性の命を危険に晒すことが分かっているのに、執拗に侮辱してくる。
これが実は、ある意味で安心感を与えるのだ。
なぜなら、X上の口論に夢中になって女性の命をかなぐり捨てている論敵を見ると、実は男性は「ああ、女性の命を見捨ててるのは俺たちだけじゃない」と安心するのである。
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