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ヒトシ
2022年6月7日 14:02
ページをめくると、たくさんの書き込みに目を奪われる。几帳面な小さな文字で、余白を埋め尽くさんばかり。活字の本文が薄れてしまうほどの情報量だ。かつてこの本を手に歳時を過ごした人の経験と知恵が詰まっている。唐突に、この続きを僕が始めようと思った。新しい季節が今、動き出そうとしている。この作品は、小説家ほしおさなえさんの門下生を中心にした140文字小説サークル‘lotto140‘
何十年も薄暗い古書店の端っこにいた。年代物同士、老店主と余生を送るはずだった。ところがある日、一人の若者がわたしを取り上げると熱心に頁をめくり、町外れの古家へ連れて帰った。昔ながらのやり方で畑仕事を始めるんだそうだ。窓から森の薫風。止まっていた歳時が今、再び動き出そうとしている。この作品は、小説家ほしおさなえさんの門下生を中心にした140文字小説サークル‘lotto
2022年6月7日 14:00
ふと、早春の森に来た。小鳥たちが奏でる求愛の歌が響いている。人の気配はなく、木々や野花が支配する世界。朽木のベンチに寝転んで五感の全てで地球を感じると、精霊の守り人になった気分。全身に気が満ちてくる。僕は今、あの主人公のように、明日を切り開く強さとしなやかさを手に入れた気がする。この作品は、小説家ほしおさなえさんの門下生を中心にした140文字小説サークル‘lotto14
2022年6月7日 13:59
山の奥の古い社のそのまた奥に聳える大樹。その脇腹には大きなウロが空いていて、中に入ると螺旋の階段。壁の全てが本棚。森で生まれた鳥や虫は皆、年頃になると、このウロに来て、自分達に代々伝わる恋の作法書を読んでから外の世界へと飛び立ってゆく。口々に覚えたての求愛の歌をくちずさみながら。この作品は、小説家ほしおさなえさんの門下生を中心にした140文字小説サークル‘lotto