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月々の星々 -Season2-

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2021年11月に再スタートした140文字小説コンテスト「月々の星々」への応募作品たちです。
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#百姓

深まる秋 -10月の星々-

深まる秋 -10月の星々-

高度を下げた朝の太陽が窓から差し込み、

ファンヒーターがタイマーで動き出す。

日増しの寒さにフリースを重ね着する。

明日から霜月。

「畑の一年は仕舞仕事に始まる」と

古書店で手に入れた歳時記の余白に記された先人の知恵。

四季折々の恵みに感謝しながら御礼肥えを撒く。

三度目の冬を迎える畑にて。

水引の花  -9月の星々-

水引の花  -9月の星々-

夏の終わりの田舎道は、高く青くなる空と軽やかになる風。

あちこちの道端でチラチラと水引が咲く。

まっすぐ伸びた細い茎に赤い小花を順々に並べて。

里の田畑は、それぞれに春に芽吹いて夏に育った黄金の実り。

その喜びの季節の訪れをみんなと分かち合うように。

控えめに、でも艶やかに水引の花は咲く。

月々の星々、9月のお題は「実」でした。

止まる。少し。 -5月の星々-

止まる。少し。 -5月の星々-

畦の草刈りをしていたら、

蓬の葉を渉るカタツムリに声をかけられた。

そんなにしゃかりきになるなよ。

息が切れちまうぞ。

先は長いんだ。

慌てず急がず、一歩ずつ前に進めばいいさ。

それでも疲れてしまったら。

止まればいいさ、

少しだけ。

そこで上を見てごらんなさい。

大空に君の歩く道が見えてくるから。