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ヒトシ
2022年11月30日 14:57
一足早い大掃除。埃の積もった保存棚の隅っこに琥珀色の瓶を見つけた。親父が元気だった頃に仕込んだ梅酒。十年物か。硬くなった蓋をこじ開けグラスに注ぐと、芳醇な香りが広がる。熟成が進んでまろやかになった液体。あの日止まった親父の時間は、こんなところで動き続けていた。穏やかにゆっくりと。
2022年11月29日 14:13
強く吹いた北風の後、暖かな雨が紅葉の赤を引き立てる行きつ戻りつの季節の歩みに自分の足の加減を重ねるこの秋の里山散歩をあきらめて窓からの遠景に軽くため息を漏らす我が庭の住人は小さく地鳴きし止まり木から手のひらに飛んで来て慰めるように小首を傾げ種を一粒、器用に咥えて森へ帰る進む季節、止まる時間こんな冬の始まりもきっと、またよかろうよ新しい何かに出会う
2022年11月15日 10:55
町の小さな整形外科の瀟洒な窓から差し込む冬の始めの暖かな陽光が順番を待つ人たちを柔らかく照らす少し気の早いクリスマスソングが静かにゆっくりと時間を進めていくここにいる誰もが何処かに痛みや不自由を抱え不安や焦燥に苛まれながらそれでも静かに座っている揺蕩うような静寂の中で私は自分もその一人であることを不思議な気持ちで眺めていた