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ヒトシ
2022年12月28日 17:20
冬晴れの庭に立ち、欅の老木越しに青空を見上げる。降り注ぐ悠久の太陽と、地球を巡る季節風の冷たさ。小鳥が落葉の中に餌を探す音が緩やかな調べを奏でる。残り葉は優雅に舞い、音もなく着地して眠りに就く。それぞれの生命がそれぞれの時間の中で、この小さな空間に集い、わたしの人生になっていく。
2022年12月27日 14:17
気がつけば冬至も過ぎてもう年の瀬聖夜の鐘の名残を足早に消し去って世の中は一気に忙しなくなるまだ少し煩わしさの残る膝を庇いつつ厄除け招福の正月飾りを自作する収穫した唐辛子の赤い実を麻紐で束ねて流木の横木にひとつふたつと連ねてゆけばつらつらと頭をよぎる春夏秋冬できなかったこと、不本意なこともそりゃ、なくはないが、それにも増して新しく出来たこと、嬉しかったことは
2022年12月15日 12:08
この冬一番の寒さに肩を窄めながら庭に降りて朝の日課の小鳥の餌出ししばし常連たちと手渡しで戯れたあとブリキの水遣りに見つけた今年初めての薄氷ウキウキと幼子のように棒切れを拾いガシガシと一点をつついて穴を開けグイグイと指をこじいれ引っ張り出すひっくり返した塊りは朝の陽を乱反射してプリズムのように小さな影絵を揺らす閉じ込められた落ち葉を象って
2022年12月12日 13:48
柔らかな冬の陽が差し込む雑木林その足元に降り積もったとりどりの枯れ葉たちは森がくれる冬の贈り物大きな袋にたんと詰め込んで我が畑の隅の置き場に持ち帰り米糠を混ぜ込みながらぎゅうぎゅうに踏み締めればやがて小さな働き者がせっせせっせと葉っぱを食べて肥沃な土へと分解し自家製腐葉土に仕上げてくれる四季折々の山河の恵みを余すところなく生かしきる見事なまで
2022年12月8日 12:51
冬晴れの日が続き、そろそろ霜が降りる畑で冬の野菜たちが身体いっぱいに甘みを蓄えてそれぞれの出番を待っている今日の収穫は大根、人参、春菊、小松菜、葱、水菜、白菜、レタス、キャベツ里芋、菊芋、生姜も土の中でスタンバイ中いただきものの霜降り肉もあるし、今宵はすき焼きにでも致しましょうか主役はもちろん、うちの畑の野菜たち天気にも虫にも負けずにちゃんと育ってくれたこと
2022年11月30日 14:57
一足早い大掃除。埃の積もった保存棚の隅っこに琥珀色の瓶を見つけた。親父が元気だった頃に仕込んだ梅酒。十年物か。硬くなった蓋をこじ開けグラスに注ぐと、芳醇な香りが広がる。熟成が進んでまろやかになった液体。あの日止まった親父の時間は、こんなところで動き続けていた。穏やかにゆっくりと。
2022年11月29日 14:13
強く吹いた北風の後、暖かな雨が紅葉の赤を引き立てる行きつ戻りつの季節の歩みに自分の足の加減を重ねるこの秋の里山散歩をあきらめて窓からの遠景に軽くため息を漏らす我が庭の住人は小さく地鳴きし止まり木から手のひらに飛んで来て慰めるように小首を傾げ種を一粒、器用に咥えて森へ帰る進む季節、止まる時間こんな冬の始まりもきっと、またよかろうよ新しい何かに出会う
2022年11月15日 10:55
町の小さな整形外科の瀟洒な窓から差し込む冬の始めの暖かな陽光が順番を待つ人たちを柔らかく照らす少し気の早いクリスマスソングが静かにゆっくりと時間を進めていくここにいる誰もが何処かに痛みや不自由を抱え不安や焦燥に苛まれながらそれでも静かに座っている揺蕩うような静寂の中で私は自分もその一人であることを不思議な気持ちで眺めていた
2022年10月31日 21:02
丘の上から見える大きな川の向こう岸、名前も知らない里山の頂にいく筋もの雲が吸い込まれていく。最も強そうな雲の筋に太陽が絡めとられる。燦然と輝く無敵の星が、ゆるゆると軌道を外れ山頂に不時着し、瞬時に暗闇が世界を覆う。翌朝、全く違う太陽が東の空に現れた。世界はもう一度そこから始まる。
2022年10月31日 20:23
高度を下げた朝の太陽が窓から差し込み、ファンヒーターがタイマーで動き出す。日増しの寒さにフリースを重ね着する。明日から霜月。「畑の一年は仕舞仕事に始まる」と古書店で手に入れた歳時記の余白に記された先人の知恵。四季折々の恵みに感謝しながら御礼肥えを撒く。三度目の冬を迎える畑にて。
2022年10月27日 12:04
梅雨明けが早すぎたり 戻り梅雨が長かったり酷い暑さと強い雨が変わりばんこに続いたり気分屋できかんぼだった今年の天気それでも秋は急に深まり霜降る寒さは暦どおりに訪れてそろそろ生姜の掘り出しのころ適期を逃さぬようにと痛めた膝を庇いつつそろりそろりと試し掘り植え付け直後の雨続きもあって無事育ったのは半分くらいそれも育ちはいまいちで反省しきりの今年の出来栄え
2022年10月24日 15:06
どんな理由でそうなるのかどんな意味があるのかそんなことは全然わからないけれどこころが揺さぶられるほど美しいと感じる夕景がそこにあってその瞬間に巡り会えた偶然はきっとわたしたちの道を明るく照らしてくれる祝福なんだとそう素直に思えたある日の夕暮れ
2022年10月6日 11:24
今日は朝から冷たい雨。畑仕事を諦めて、のんびり過ごす午前10時。ゆっくりと珈琲を淹れて、雨宿りカフェを開店。香りを楽しみながらnote街を散策していると、間もなく常連さんがお目見しました。ありがたくも、お仲間にお声がけいただいたようで、ここ数日は団体さんでご来店いただいております。いつもお皿からのセルフサービスでは味気ないので、今朝は手渡しひまわりをお楽しみいただき
2022年10月5日 13:52
ひんやりとした風が渡る寒露の手前あちらこちらの野の草むらが実りの重さに首を垂れて啄む雀が喧しく踊る夏の光を集め続けた緑の葉秋虫たちに齧られて草臥れ萎れ穴だらけ賑やかだった草花の舞台は終演間近残り少ない蜜床を探してミツバチたちが飛び巡るやがて来る眠りの季節のその前に今しばし続く小さな小さないのちの躍動