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来年、実家が無くなる


私は来年、実家を失くす。
約10年間家庭内別居をしていた両親が、父の定年退職を機に決別するからである。


私は父を、「父親」として感謝はしているが、母の「夫」としては心底軽蔑している。父が子供達の目の前で母をけなし始めてから、ずっと嫌いだ。

夫婦とは、家庭を営む協力関係にあると思う。お互いの足りないところを、得意なところを合わせて埋めていき、問題を乗り越えていくのが理想であろう。
世の中の夫婦が全てこのようではないだろうし、もっと悲惨な家庭もあるだろうが、私は、上記のような協力は一切無く、父が好き放題やって、母がその尻拭いをするという構造が本当に嫌いだった。

父は、「父親」としては割とできている人だ。
子供達の教育に熱心で、我々が望む進路を金銭面で惜しみなく援助してくれる。父の家庭の面倒事も全て自分で片付け、父が亡くなった後に子どもたちが困るようなことがないようにしてくれた。

しかし、「父」という仮面が外れ、ただの人間としてある時、あるいは「夫」であるとき、父は非常に自分勝手で、嫉妬深くて、その上責任転嫁をしてくる。

例えば、父は長男である兄の高校受験の際、非常に肩に力が入っていた。彼を県内で有数の高校に行かせるべく、塾へ行かせたり、成績が落ちると叱ったり、たまには彼に関わることを放棄した。そのせいで繊細な兄は心を少し病んだ。それに気づいた母が兄を精神的にも学業面でもサポートし、父にその様子を伝えると、「お母さんは好かれてていいよね。じゃああなたがやれば」と言った。

例えば、姉がバスケクラブに入ったとき、父はそのクラブでの親の集いに参加することを母に丸投げした。母はバスケクラブの父兄が苦手だし、姉がバスケに入ったのは父が誘ったようなものなのに、自分も集団に交わるのが嫌だからと言って、母にその責任をなすりつけた。

これ以上にも、語りきれないこと、母が私に伝えてないことがたくさんある。
母は、父の横暴に振り回され、陰ながらサポートすると勝手に嫉妬され、有りもしない浮気を疑われ、慌ただしい日々に追われて部屋の掃除が行き渡らないと文句を言われ、母の実家の悪口を言われていた。


もうたくさんだ。本当に最低だ。


私たち兄妹は、母が大好きだ。
それは、単純に父嫌いの反動でだとか、本能的にとかではない。
同じく父に振り回される私達を、支え、守ってきてくれたからである。父には受け入れらない、もしくは言い出せない不安や不満を、全て受入れてくれたからだ。


私は実家を失くす。うちの家庭を失くす。
そして、父が本来するはずだった、母を守り、支え、共に生きていくことを担う。

私は母を裏切らないし、変な疑いもかけない。
母が今までしてきてくれたことを何百倍にもして返し、母が幸せにこれから新しい人生を送っていくことを願っている。

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