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小金持ちを死に追いやる日本の税制

令和2年度税制改正大綱が発表されてしばらくがたった。発表がされた直後は、ショックで眠れなかった。というのは大げさだが、今回の改正は、我々のような小金持ちには、かなり痛い。

泣いても叫んでも、たとえ眠れなくても、毎日朝は来て、その後欲が来て、その後、また朝が来て、来月には、予定通り、国会を通過するだろう。
大金持ちの多くは、非居住者という特権を得ており、世界最強のパスポートのためにこの国の国籍を維持しているので、影響は限定的だろう。

世界で貧富の差が拡大していることもあって、ポピュリズムが台頭している。大企業や富裕層を敵視し、彼らに重税を追わせ、中低所得者層のいわゆる「庶民」に富の再分配をしろというものだ。

問題は、「庶民」のいう富裕層がどのあたりを対象にしているかである。

お金持ちの定義には、2つある。
文字通り、お金を持っている人。つまり、多くの金融資産を持っている人。
金融資産は、持っているだけで金を生むので、文字通り不労所得を産み、働かなくても、生きていける。ストックを持っていて。ストックがフローを生み出す。
日本の世帯数は約5000万世帯。そのうち、1億円以上の金融資産を持っているとされるのが127万世帯(2017年野村総研調べ)なので、ざっくり2.5%くらい。そのうち、本当のお金持ちと言われる5億円以上の金融資産を持つ超富裕層は、8.4万世帯で0.14%。


もう一つは、金融資産は持っていないけど、ただ、お金を稼いでいる人。一番わかり易いのは、良い給料をもらっているサラリーマンをイメージするといい。いわゆるフローが多い人。金融資産持ってるわけじゃないから、首になったり、なんか、成績悪くなったり、定年したりするとそれなりにしんどい人たち。未来永劫、お金が入ってくる保証なんてどこにもないんだよね。

「庶民」って人たちがターゲットにしているのが、イメージは前者なんだけど、実は、実際にダメージ受けてるのが後者なんだよね。多くの金融資産が生み出すお金、要は金が金を生むみたいなのって、たいてい税制が分かれてて、例えば、株でも受けたりするとどんなに儲けても一律20%ちょっと(ちょっとってのは復興税)の税金って決まってる。みんなが想像するお金持ちは、そういう感じの税金が多い。

一方、ただ給料高い人ってのは、働いてて、働きがよくて、たまたま(たまたまではないと思うけど)いい給料もらってるだけなんだけど、所得税は累進で、年収(正確には所得なんで控除とかあるから年収ベースだと6000万円とかかな)5000万円くらい超えると、住民税と合わせて、55%取られる。来月から、給料が10万円上がります。わーい、って喜んでたら、手取りが4.5万円増えるだけ。5.5万円は、お上に上納。(合掌)

「庶民」というか、日本の国民のほとんどは、給与所得者(社長とか役員とかも含めて)なんで、「庶民」が目指してなれるのって、後者のフローが多いお金持ちなんですよね。なのに、自分たちがなれそうな唯一の(ではないけど)道を閉ざして、イエイってしてる。

国民の大半を占める給与所得者のうち、1000万円を超えている人だけでも、わずか4%(世帯年収だと共稼ぎとか入るん10%ちょっと)、最高税率の1歩手前の50%になる所得1800万円=給与だと2000万くらい超える人は、わずか0.4%なんで、まあ、少ないし、いいかーっやっちまえー、ほとんどの人はそこに到達していないから、関係ないじゃんってなってる。

ちなみに、日経新聞の記事でちょっと前にバズった「サンフランシスコで年収1000万円でも貧困層」ってやつは、「サンフランシスコでは、年収11万7000ドル(日本円で約1280万円)の世帯(4人家族)が低所得者住宅プロジェクトの対象世帯になってしまう」というものなんだけど、日本、貧乏だなって思う。別に生活に必要なお金が多いってのがいいことじゃないけど、あまりにもデフレと、不景気グセが・・・。

所得税+住民税の55%って、実際考えてみたら異常で、江戸時代は初期から享保までは、4公6民だったのが、享保の改革して、5公5民になったら、一揆が多発したという。そりゃそうでしょ、って思うけど、人数少ないから暴れられないし、ねえ。

って弱い者いじめじゃない?

自分より稼いでいる人を引きずり下ろしたからといって、自分がその席に座れるわけじゃないんですけどね。