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ノールックで買った米国不動産、幻の節税の仕組み

以前、このnoteを始めた頃に、友人からの紹介で米国不動産を2つ、物件を見ないで買った話を書きました。

今回は、ノールック米国不動産の第2部です。5年越しです。

2019購入した当時は、不動産投資というよりも、節税商品を購入したというイメージだったので、物件も見ずに、書類と写真だけ見て、そのときの僕の年間所得から試算した額に合わせて2軒購入しました。

当時の金額で100万USドルくらい。数百万円の手出し資金でほぼフルローンがいけるとのことで、ほぼフルローンで購入しました。

ノールックで1億円以上の買い物をできた理由

なぜ、物件もみずに購入したのか。
もちろん、米国が遠いので、わざわざ見に行く時間が取れなかったというのもありますが、大きな理由は以下です。

1)信用できる友人からの紹介であったこと
2)今回の取引が仲介でなく、不動産会社が一旦買い取った自社物件で、調査後、修繕も行った上での販売であったこと。
3)賃貸の客付けから管理までその会社がワンストップでやってくれること
4)自分が住むための物件ではなく、節税目的であること
5)米国不動産は透明性が高いこと

以上5つが理由でした。

米国と日本の中古不動産に対する考え方と制度の違い


最後の米国不動産の透明性に関しては、これは日本も見習ってほしいところですが、米国の中古不動産は、かなり仕組みがしっかりしていて、すべての売買情報が公開されていて、この不動産を、不動産会社がいくらで仕入れたのかも簡単にわかってしまいますし、それより以前のい過去の履歴も全部見れるようになっています。日本にも、レインズという不動産流通機構が運営・管理している不動産流通標準情報システムはあるにはあるんですが、中途半端にしか機能しておらず、あいかわらず、不透明感の高い市場となっています。

実際、不動産会社がいくらで購入したのか気になって調べてみましたが(すでに購入したあとでしたが)、不動産会社が仕入れた価格に15%くらいは上乗せされていましたが、修繕もしっかりしているようだし、まあ、安心料として納得しました。

日本と違い、米国は中古不動産市場が常に活況を呈しています。そして、先進国としては珍しく、人口が増え続けていますので、リーマンショックなどの金融危機は除いて、緩やかに上がり続けています。

日本では、マイホームというと一生に1度の買い物という印象があり、そのためか根強い新築信仰がありますが、米国では、ライフステージごとに買い替えるのが普通で、だいたい人生で4-5回家を買い替えると言われています。

米国では、気候のおかげもあり、木造であっても寿命が長く、数十年、下手をすると80年や100年近い中古物件でも、メンテナンスさえしていれば、需要もあるので、古い物件でも売れます。基本的に持ち家の価値は、買ったときより、高く売れるので、段々と大きな家に買い替えていき、最後、引退後は大きな家を売って、小さな家に買い替えて、差額が老後資金になるというような人生設計が可能なのです。素敵ですよね。

一方、日本では、購入する人は、一生に一度の買い物だからか、新築を好みます。そのため、中古物件は、建物の価値が経年に従って下がっていき、20-30年建てば、建物の価値はほぼゼロになり、土地代だけになります。中古で売却するにしても、買い手が少ないので、値段が下がる。結果、業者が土地値に近い価格で買って、新築を建てて、販売する。という繰り返しなので、中古で売るくらいなら、住み続けようとなります。実際、日本の家の平均寿命は、27年です。

その前提のため、税金もそういう設計になっています。事業用の木造建築物の耐用年数は、税務上は22年です。これは、日本では、古い木造家屋に価値を認めないから、経済耐用年数から、計算された耐用年数です。

もちろん、メンテナンスをしっかりしていれば、木造であっても、50年は愚か、100年、下手をすると1,000年以上持つものもあります。法隆寺は、木造ですが、1,300年以上の時を経ても今なお立派な姿を保っています。使用している部材や構造によって変わってくるものの、メンテナンスをしっかりとしている前提であれば、22年で物理的に使えなくなるような木造家屋は実際には皆無でしょう。

これを利用したのが、今回の節税スキームです。

日本の税法では、事業用の木造建築物は、22年の耐用年数です。新築で購入したときから、毎年、新築時の建物の価格の1/22ずつ減価していきます。

不動産賃貸事業では、基本、賃貸して、収入を得ます。毎年、減価償却分は、この収入から経費として差し引いて、利益を計算することができます。つまり、キャッシュアウトはないのに、利益を圧縮することができるのです。

ちなみに、中古で木造の建築物を購入した場合には、どう計算されるかというと、

耐用年数=(法定耐用年数-築年数)+築年数×0.2

例えば、築5年の物件を購入したら、
22-5+5×0.2=17+1=18年

建物価格の1/18が毎年経費として参入できるというわけです。

では、耐用年数を超えて、築25年の物件を購入した場合はどうでしょう?

耐用年数=法定耐用年数×0.2

なので、22×0.2=5.5年 端数は切り捨てなので、5年となります。

つまり、耐用年数を超えている物件を購入すれば、建物価格を5年で償却できるようになります。

これを米国不動産でやろうというのが、この節税スキームです。ニューヨークのような大都市を除けば、米国の土地は安く、一方中古であっても、建物の価値は残存することから、一般的にアメリカの不動産は、建物比率が高いです。そこで、土地が安い地域で、人気がある地域の、築22年以上の木造物件を狙えば、建物比率は80%を超えるので、大きな節税を狙えます。

例えば、1億円で築25年の木造建築を購入して、建物比率が80%だとしましょう。建物価格は8000万円。5年償却なので、

8000万÷5=1600万円

毎年、1600万円が減価償却できます。

例えば、家賃収入が円ベースで毎月50万円だとして、管理費、ローン金利、固定資産税などで400万円だったとします。(わかりやすく円ベースにしてます)

50万x12-400万=200万の利益ですが、減価償却が1600万あるので、
200万−1600万=-1400万円

つまり、不動産賃貸業で1400万円の赤字。

不動産業は、給与などの所得と損益通算ができるので、給与収入からの課税所得から1400万円を毎年引くことができます。

例えば、課税所得が4000万円の人だとすると課税所得が1,800万円以上4,000万円未満の場合の所得税率は40%、住民税率は10%なので、合わせて50%。

1400万x50%=700万円

毎年、確定申告時に、700万円がもらえるというわけです。

もちろん、この減価償却分は、不動産売却時に取得価格から差し引かれますが、不動産譲渡による利益に関しては、個人の場合、購入してから、5回目の1月1日を超えてから売却すると、利益に対する税率は20%(所得税15%住民税5%)になるという長期譲渡所得の特例があるので、50%と20%との差分、30%は手残りするという仕組みです。

5年間で、700万円x5=3500万円のキャッシュが還付されてきて、賃貸利益にかかるはずだった税金、100万円x5=500万で、合計4,000万円が節税できて、売却時に、長期譲渡所得の20%の1600万円が取られても、差し引き2400万円の得になるという仕組みです。

ちなみに、5回目の元旦を迎える前に売却してしまった場合には、短期譲渡所得となって、利益に対して40%の課税が取られてしまい台無しなので、5回目の元旦を迎えるまで持ち続けるのが前提でした。

国税庁の海外不動産節税封じ

さて、2019年にノールック購入して、順調に還付金をいただいていたのですが、雲行きが怪しくなってきました。もともと、この抜け道が塞がれるんじゃないかという噂は出ていたのですが、2019年の半年と2020年はフルで取れたのですが、2020年度の税制改正で2021年以降、個人に関しては、「国外不動産から生じた所得の損失のうち、減価償却費に相当する金額はなかったものとする」となってしまったわけです。

通常、税制改正が行われても、すでに減価償却が始まっている過去のものについては、遡及しないというのが通例で、なんにんかの税理士にも、改正が行われた場合のことを聞いていて、減価償却が始まっているから大丈夫でしょうと言われていたので、安心していたのですが、まさかの、すでに減価償却がはじまっていた人についても、2021年からは、減価償却がなかったものとすることになってしまいました。

これが、題名にある「幻の節税」の意味です。

会計検査院が富裕層の多い東京都麹町税務署管内で調査したところ、海外中古不動産投資で延べ337人が39億8000万円超の赤字を計上していました。また、同署管内を含む延べ2万8000人強の確定申告書を分析したところ、賃料収入を上回る減価償却費を計上し損失を出している例が多いことを把握し、2016年時点で見直しを求める検査報告を出していました。

THE GOLD ONLINE

どうもこういうことみたいです。

海外に5000万円以上の資産を持っていると、毎年、確定申告時にリストにして提出させられているので、そもそも。我々の海外資産は把握済み。2019年にこれは改正したほうがいいと、会計検査院が指摘していたので、僕も含めて駆け込んだんですが、駆け込んでもダメだったみたいですね。

とはいえ、1年半で1000万円以上は、節税できたので、無駄ではなかったわけですが、こうなってくると、結構非非効率なレバレッジ投資案件になってしまいました。当初は、節税効果も含めて、かなり効率のよい投資をローンでレバレッジを掛けてやっていたのですが、1億円以上借りて、毎年の利益は、200万円という利回りの悪い投資になってしまいました。

さて、こんな経緯だったのですが、ついに2024年の元旦を迎えて、ついに売却をできる時期を迎えました。

米国の住宅ローン金利は、8%超えという中で、一体売却はできたのか?そして、最終的な収支は?

知らなかった米国の税金も含めて、次回、ノールック米国不動産第3部をお楽しみに。(誰も楽しみじゃないか)